卓球の男女混合(ミックス)ダブルスを通じて、
小さな“奇跡”を起こす、恋と人生の再生物語『ミックス。』

この手の映画は、ほとんどが漫画を原作としているので、
〈今度は誰の漫画を映画化したのだろう……〉
と思っていたら、
なんと、古沢良太によるオリジナル脚本なのであった。
古沢良太といえば、
映画『キサラギ』(2007年)
映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ(2005年、2007年、2012年)、
映画『探偵はBARにいる』シリーズ(2011年、2013年、2017年)
TVドラマ『リーガルハイ』(2012年、2013年)
などで知られる人気脚本家で、私の好きな脚本家でもある。
〈古沢良太によるオリジナル脚本の映画なら見たい〉
と思った。
それに、新垣結衣の他、
広末涼子、蒼井優、真木よう子なども出演しているという。
日頃から「映画は女優で選ぶ」ことを標榜している私としては、(笑)
そういう意味でも見たい作品であった。
ワクワクしながら映画館へ駆けつけたのだった。

富田多満子(新垣結衣)は、
幼い頃、母・華子(真木よう子)のスパルタ教育により、
“天才卓球少女”として将来を期待された少女であった。

母の死後、これ幸いと、
普通に青春を過ごし、
普通に就職する平凡な日々を送っていたが、

会社の卓球部のイケメンエース・江島晃彦(瀬戸康史)に告白され付き合うことに。

「ついにバラ色の人生が!」
と思った矢先、
新入社員の美人卓球選手・小笠原愛莉(永野芽郁)に江島を寝取られてしまう。

人生のどん底に落ち、逃げるように田舎に戻る多満子。
その逃げ帰る電車の中で、二日酔いだった多満子は、
萩原久(瑛太)の服に嘔吐する。

タクシー運転手をしている父・達郎(小日向文世)のいる実家に帰った多満子は、
その父から、亡き母が経営していた卓球クラブは赤字に陥っていることを知らされる。

自分の青春を捧げた活気のある練習風景はそこにはなく、
さらにクラブのメンバーも、
多満子と一緒に子供の頃から練習していた吉岡弥生(広末涼子)、
不登校の高校生・佐々木優馬(佐野勇斗)、
トマト農家の落合元信(遠藤憲一)・美佳(田中美佐子)夫妻、
妻と娘に見捨てられた元プロボクサーで、多満子が電車で遭遇した萩原久(瑛太)など、
さえない部員ばかりだった。

しかし、TV中継で、江島と愛莉の幸せそうな姿を見た多満子は、

クラブ再建と、江島・愛莉ペア打倒を目標に、
全日本卓球選手権の男女混合(ミックス)ダブルス部門への出場を決意する。

部員たちは戸惑いながらも、大会へ向け猛練習を開始する。
多満子は萩原とミックスを組むものの、全く反りが合わずケンカばかり。
初出場した神奈川県大会では初戦敗退。

それから一年間、
行きつけの四川料理店の中国人・張(森崎博之)、楊(蒼井優)の猛特訓を受け、

確実に実力をつけていく。
そして、そんな二人の関係にも、やがて変化が訪れる。
果たして、フラワー卓球クラブは、
奇跡の全日本選手権出場を叶えることができるのか……

男女混合(ミックス)ダブルスとは、
男性一人と女性一人のペア同士が戦う、卓球の種目のひとつ。
今年の5月~6月に行われた「2017世界卓球選手権ドイツ大会」で、
石川佳純・吉村真晴ペアが48年ぶりに金メダルを獲得したが、

その優勝が決定した瞬間、

ハグした際に、吉村選手が石川選手の頭をポンポンしたことが話題になり、
一気に男女混合(ミックス)ダブルスが有名になった。

まずは、
この男女混合(ミックス)ダブルスという種目に男女の恋愛模様を織り込み、
ロマンチックコメディーとして物語を構築した脚本家・古沢良太の手腕を褒めたい。
普通に面白かったし、
119分間、まったく飽きずに楽しむことができた。

冒頭、新垣結衣の顔のアップで始まり、
ガッキ―の魅力満載の映画となっており、
ガッキ―ファンには必見の映画となっている。

母の死によって卓球から解放されたことにより、
普通の制服姿の他、

ガングロ姿も披露し、大いに笑わせてくれる。
(写真の向かって右端が新垣結衣)

就職してからのチアガール姿、

田舎に逃げ帰ってから勤めた缶詰工場での作業員姿、

オードリー・ヘプバーン風ネッカチーフ姿など、

七変化とも言える衣装替えも楽しかった。

多満子と敵対する小笠原愛莉役の永野芽郁も憎々し気で良かったし、

元ヤンキーで、今はエリートサラリーマンの妻に納まっている吉岡弥生役の広末涼子も魅力的だった。

驚くべきは、四川料理店の中国人店員・楊を演じた蒼井優。

主役でも素晴らしい演技をするが、
脇役でもその存在感は抜群で、
片言の日本語、ちょっとした仕草など、
細かすぎる芸で楽しませるし、

元・中国卓球強化選手になりそこねた(笑)経歴を持ち、
多満子に対するスパルタぶりが凄く、
そのオーバーアクションでも楽しませてくれる。

中でも、彼女が発する(中国人選手の凄さを表現した)一言、
「休むときは、死ぬときよ!」
のセリフが忘れられない。(爆)

蒼井優のファンとしては、
短くとも蒼井優の演技を見ることができただけも嬉しかったし、
そのことだけででも、私にとっては、本作は「見る価値あり」なのである。

昨日(10月28日)から公開されている主演映画『彼女がその名を知らない鳥たち』も楽しみだし、すぐにレビューを書くつもりなので、乞うご期待。

強敵卓球選手役として、
後藤田タケル(鈴木福)・日高菜々美(谷花音)、

山下誠一郎(吉田鋼太郎)・佐藤風香(中村アン)も出演しているし、

山口紗弥加、真木よう子、田中美佐子などの女優、



瑛太、瀬戸康史、斎藤 司(トレンディエンジェル)、生瀬勝久、遠藤憲一、小日向文世などの男優も出演していて、超豪華キャスト。



加えて、
2016年のリオデジャネイロオリンピックで、
男子シングルス銅メダルを獲得した水谷隼をはじめ、
石川佳純、伊藤美誠ら本物の卓球選手も登場する。


笑わされ、泣かされ、感動もさせられる、
魅力満載の映画であった。
映画館で、ぜひぜひ。