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映画『ピース オブ ケイク』 ……多部未華子の魅力、そして秀逸なエンディング……

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見る映画は、出演している女優で決めることが多い。
本作『ピース オブ ケイク』でいえば、
多部未華子と木村文乃。
大好きな女優二人が出ている作品なので、
以前より見ることは決めていた。

監督は、個性派俳優として活躍する田口トモロヲ。
綾野剛、松坂桃李、菅田将暉、柄本佑など、
魅力ある男優たちも出演しているし、
期待満載で映画館へ出掛けたのだった。

仕事も恋愛も、やや“流され体質”の女性・梅宮志乃(多部未華子)。
高圧的でDV体質の恋人・正樹(柄本佑)とは、
性格の不一致などの問題を抱えながらも、流されるまま交際を続けていた。


だが、アルバイト仲間・ミツ(小澤亮太)との浮気がバレたことにより、


正樹からフラれてしまう。
バイトを辞め、引っ越しを決意した志乃は、
木造のオンボロアパートで新しい生活をはじめることにする。


引っ越しの手伝いにやってきた親友のナナコ(木村文乃)と、
オカマの天ちゃん(松坂桃李)は、
志乃を励ましてくれるが、


夜、ひとりきりになった志乃の前には正樹の幻影が浮かび上がる。
「男なら誰でもいいじゃん。君、そういう女じゃん」
と志乃を責めるのだった。


志乃が縁側で物思いにふけっていると、
突然、隣室の縁側から男が顔をのぞかせ笑った。
……その時、志乃の頬をゆらす、さわやかな風が吹いた。
志乃は、自分の中で何かが大きく動きだすのを感じていた。


天ちゃんが働いているレンタルビデオ店でバイトをするため、
面接に訪れた志乃は驚く。
なんと店長は、昨日出会った男・菅原京志郎(綾野剛)だったのだ。


気安く接してくる京志郎に対し、
慎重に、簡単に好きにならないよう予防線を張る志乃だったが、
次第に惹かれていくようになる。


だが、京志郎には、一緒に暮らす女・あかり(光宗薫)がいたのだった……


いや~、面白かったです。
監督の田口トモロヲは、
大学在学中よりアングラ演劇や自主映画などに関わってきた人だし、
ナレーター、ミュージシャン、元エロ劇画家など、
様々な肩書を持っており、
俳優としても、カルト映画に出演するなど、
一筋縄ではいかぬ感じの個性あふれる演技で知られているが、
その田口トモロヲが、映画監督として、
普通の恋愛映画を自然に撮っているのが実に面白く、
興味深く見ることができた。
序盤は、
〈普通すぎる恋愛映画じゃん。こんな感じで最後までいっちゃうの?〉
と心配するくらいであったのだが、
志乃が、天ちゃんが所属する「劇団めばち娘」で、衣裳の仕事を手伝うようになる頃から、
田口トモロヲらしさが随所に見られるようになり、
エンディングに至ってそれが爆発する。
登場人物たちは、志乃にしろ、京志郎しろ、
それほど颯爽と生きている人物ではないのだが、
ラストシーンを見終えた後は、
なんだか爽やかささえ感じるほどの爽快感を覚えた。
秀逸なエンディングだったと言えるだろう。


原作は、
リアルな恋愛マンガの名手として幅広い層から絶大な支持を得るジョージ朝倉。
『ピース オブ ケイク』(全5巻)は、
2003~2008年にかけて『フィール・ヤング』(祥伝社)で連載された、
ジョージ朝倉の代表作のひとつ。
この原作を、
『リンダリンダリンダ』(2005年)などで評価の高い脚本家の向井康介が、
実に上手く脚色している。
あの秀逸なエンディングは、
田口トモロヲ監督の演出力もさることながら、
向井康介の手腕に由るところが大きい。


梅宮志乃を演じた多部未華子。
彼女のこれまでの出演作では、
『夜のピクニック』(2006年)
『君に届け』(2010年)
『深夜食堂』(2015年)
などが好きだが、
その好きな作品群に、
新たに『ピース オブ ケイク』が加わった。
本作は、多部未華子の魅力満載の映画であった。
〈えっ、そんなことまでやっちゃうの?〉
と、こちらが心配するくらいやる気満々の演技で、
随所に多部未華子の女優魂を感じさせられた。
多部未華子ファンは必見の映画と言えるだろう。


菅原京志郎を演じた綾野剛。
綾野剛の出演作は、ここ数年だけでも、
『ヘルタースケルター』(2012)
『るろうに剣心』(2012年)
『横道世之介』(2013年)
『夏の終り』(2013年)
『白ゆき姫殺人事件』(2014年)
『そこのみにて光輝く』(2014年)
『新宿スワン』(2015年)
などをこのブログで紹介しており(タイトルをクリックするとレビューが読めます)、
「一日の王」映画賞において、
最優秀主演男優賞(『そこのみにて光輝く』)に選出していることもあって、
私としても、今もっとも注目している男優の一人である。
本作『ピース オブ ケイク』においても、実に好い演技をしていて、
さすが綾野剛と思ったことであった。


ナナコを演じた木村文乃。
多部未華子と共に、私の大好きな女優なので、
彼女の出演シーンを楽しみにしていた。
出演シーンはそれほど多くはなかったが、
魅力あふれる演技で、作品に華を添えていた。
ここ数年だけでも、
『すべては君に逢えたから』(2013年)
『小さいおうち』(2014年)
『ニシノユキヒコの恋と冒険』(2014年)
『くちびるに歌を』(2015年)
『イニシエーション・ラブ』(2015年)
などの話題作に出演しており(タイトルをクリックするとレビューが読めます)、
彼女のファンとしては、楽しい時間を過ごさせてもらっている。
今後、
『十字架』(2016年2月公開予定)、
『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』(2016年GW公開予定)
などの出演作も控えているようなので、
期待して待ちたいと思う。


オカマの天ちゃんを演じた松坂桃李。
それほど器用な男優だと思っていなかったが、
意外や意外、
不思議なくらいにオカマ役がハマっていてビックリ。
志乃(多部未華子)やナナコ(木村文乃)とのからみも自然で、
楽しく見ることができた。
〈これから、この手の役柄が増えてくるかも?〉
と思わせる(心配させる?)素晴らしい演技であった。


「劇団めばち娘」の座長・千葉を演じた峯田和伸。
田口組には欠かせない峯田和伸だが、
本作でも重要な役で出ていて、
独特の存在感を魅せていた。
日常の彼と、舞台の彼のギャップが大きく、
それも見所のひとつ。
志乃(多部未華子)とのからみも面白かった。
本作では、
劇中歌「たやすいことよね」「風よ吹け」で、その熱い歌声も披露する。
エンドロールのときに流れる主題歌「ピース オブ ケイク ー愛を叫ぼうー」では、
圧倒的な歌唱力で若い女性から人気のある加藤ミリヤと共に、
女性、男性、それぞれの視点から相手への想いを熱唱し、
映画のラストに心地よい余韻を与える。


この他、
光宗薫、菅田将暉、柄本佑などの個性的な若手俳優も出演しているので、
見所満載。


宮藤官九郎、廣木隆一らのゲスト出演者もいるので、
どこに出ているかを見つけるのも楽しい。


人を好きになったら、
大抵の人はバカになる。(オイオイ)
理性的な人も、知性的な人も、厳格な人も、アホになる。(コラコラ)
きれいごとばかりじゃないし、
カッコ悪いことも多い。
だが、それを恐れていたら、恋愛なんかできないのだ。
「恋愛でカッコつけてどうすんのよ」
と言うオカマの天ちゃんの言葉が耳に残る。
本作を見れば、
そのカッコ悪い恋愛を、
またやってみようかという気になる……かも。(笑)


映画好きだけでなく、演劇好きな人にも、
ぜひ見てもらいたい恋愛映画の秀作。
映画館でぜひぜひ。


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