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映画『トワイライト ささらさや』 ……富司純子と寺田心のなりきりぶりに拍手……

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今から24年前の1990年、
『ゴースト/ニューヨークの幻』という映画が大ヒットした。
若い女性がたくさん映画館につめかけ、とても話題になったので、
憶えておられる方も多いと思う。
当時、この映画を見た、同じ会社の若い女子社員が、
「とても感動し、もう何度も映画館で見ました。ビデオが出たら必ず買います」
と、わざわざ私に報告しにきたことがあった。
(この頃はまだDVDはなく、セル用の新作ビデオはとても高価だった)
数か月後、発売されたビデオを購入した彼女が、
会社に持ってきて見せてくれたのを思い出す。
それほどまでに『ゴースト/ニューヨークの幻』は若い女性の心を魅了したのだが、
この「愛する人が幽霊となって目の前に現れる」というアイデアは、
その後、多くの亜流映画・小説を生むこととなった。
日本でも、
『黄泉がえり』(2003年)、『天国の本屋〜恋火』(2004年)、『いま、会いにゆきます』(2004年)、『この胸いっぱいの愛を』(2005年)、『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』(2006年)、『椿山課長の七日間』(2006年)、『ツナグ』(2012年)など、
亜流映画&原作本が生まれているが、
今回紹介する映画『トワイライト ささらさや』も、
その流れをくむ一作といえるだろう。

サヤ(新垣結衣)は、
夫のユウタロウ(大泉洋)を突然の事故で亡くしてしまう。


サヤは息子を守り抜こうと一人決心するものの、
身寄りもなく苦労を重ねていた。


二人が心配でたまらないユウタロウは、
成仏できずにさまよい、
やがて町の人々の身体に乗り移って彼女を支えるようになる。
落語家の師匠(小松政夫)、


旅館の女将(富司純子)、


言葉を失った少年(寺田心)、


ささら駅の駅員(中村蒼)……、


のどかで、どこか不思議な町“ささら”の人々に助けられながら、
サヤは少しずつ母親として成長していく。


だが、絶縁していたユウタロウの父が現れたことから、
サヤに思わぬ危機が降りかかる……


11月9日(土)に公開された作品であるが、
私は公開日の10日ほど前に試写会で見た。
試写会にはよく応募するのだが、
めったに当選することはなく、(笑)
本作『トワイライト ささらさや』の試写会の招待状が届いたときには、
正直、驚いた。
TV大好き人間の配偶者は、
映画に誘っても、なかなか誘いに乗ってこないのだが、
この『トワイライト ささらさや』の試写会のときは、
珍しく「行きたい」と言った。(試写会はペアでの招待)
TVで映画の宣伝をしていたらしく、
その予告映像を見て、「行きたい」と思ったらしい。

で、映画を見た配偶者の感想はというと……
「よかったよ~」
とのこと。
パンフレットに、
「世にも切ない夫婦の愛に涙が止まらない、この秋一番の感動をあなたに――」
と謳ってあったので、
「涙は出た?」
と訊くと、
「うん、たくさん出たよ~」
との返事。
大いに泣かされ、感動したそうだ。

私はというと……
涙は出てこなかった。
涙もろい方なのだが、
この映画に関しては、涙は流れなかった。
この手の映画をたくさん見ている“すれっからし”なので、
感動が薄かったのかもしれない。
『ゴースト/ニューヨークの幻』と同様に、
普段、あまり映画を見ない、
純粋な心を持った(男性よりも)女性の方が、
より感動できる作品のように感じた。

まあ、そんな干からびた心を持った“すれっからし”の私であるが、(笑)
この映画で感心したこともあったので、少し語ってみたい。

この映画の最大の見所は、
ユウタロウ(大泉洋)が人に乗り移るシーン。
乗り移られた方の、
落語家の師匠(小松政夫)、
旅館の女将(富司純子)、
言葉を失った少年(寺田心)、
ささら駅の駅員(中村蒼)
の演技がとても面白く、秀逸だったこと。
とくに、富司純子の演技は素晴らしく、
お茶漬けをかきこんで、顎にご飯粒をつけたり、
寝転がって足をパタパタさせたり、
普段、見ることのできない富司純子を見ることができて、
なんだか得をした気分だった。
あの美しい女優さんが、
普通のおばあさんに見えたときは、
さすがに、ちょっとショックだったけれど……(笑)


もっとも笑わせてくれたのは、
言葉を失った少年・ダイヤを演じた寺田心くん。
4歳(という設定)の子供が、
いきなり江戸っ子口調で話し始めたときは、大爆笑であった。


その他、
落語家の師匠(小松政夫)も、
ささら駅の駅員(中村蒼)も、
ユウタロウに乗り移られたときの演技がとても良かったのだが、
これらのシーンは、
あらかじめ大泉洋に乗り移られたときのシーンをすべて演じてもらって、
それをDVDに録画して、
その映像を見ながら、それぞれが大泉洋を真似て演技をしたのだとか。
大泉洋の口調を真似た、乗り移られた人物の登場シーンが多く、
当然のことながら、大泉洋そのものの出演は少なかったので、
彼の演技を見たい者には、それがやや残念であった。


大泉洋の出番は少なかったが、
新垣結衣の出演シーンは多かったので、
彼女のファンには嬉しい、特別の作品になったと思う。
それにしても、新垣結衣は、
年々美しくなっていくような気がする。
1988年6月11日生まれなので、現在26歳。(2014年11月12日現在)
今作で初めて母親役を演じたのであるが、
10代の頃の彼女を知っているだけに、感慨深いものがあった。


この映画では、
度々ミニチュアみたいな町の風景が出てくるのだが、
映画の帰り、車の中で、配偶者が、
「なぜ風景に模型を使ってたの?」
と訊いてきたので、
「あれは模型ではなくて、たぶん、実際の風景を模型のように見える撮影方法で撮っているからだと思う」
と答えた。
これまで、雑誌などで、実写なのにミニチュアのように見える写真を何度も見ていたからだ。
調べてみると、やはり、
『トワイライト ささらさや』の風景撮影にはシフトレンズが使われていて、
このシフトレンズを使うと、
画面の手前と奥がぼかされて人や建物が小さく見え、
俯瞰で撮影すると、ミニチュアのように見えるのだ。
(シフトレンズについての詳細はコチラから)
イタリアの著名な写真家オリボ・バルビエリで知られる手法で、
最近は、山の雑誌でもよく見かけるほど多くなっている。
深川栄洋監督は、最初のロケハンの時から、
“ささら”を不思議な町として表現するために、この撮影方法を決めていたそうで、
ロケ地の秩父の実景は、主に空撮用のマルチコプターで撮影したとか。
(空撮用のマルチコプターは、リモコンヘリにカメラが搭載されていて目視できるところならどこでも飛ばすことができる)
不思議な町“ささら”の象徴として監督がこだわったのが、
(パワースポットである)稲荷大明神の幟だったらしく、
ユウタロウが人に乗り移ったり、
何か不思議なことが起きると、
幟がパタパタとはためくシーンが幾度となく挿入されていた。

映画『トワイライト ささらさや』に、
なんだかメルヘンチックなおとぎ話のような雰囲気があったのは、
このシフトレンズを使って風景を撮影したから……と言えるだろう。


エンドロールのときに流れる主題歌を歌うのは、コブクロ。
その名もズバリ「Twilight」というタイトルのバラード。
この主題歌が流れているときにもドラマがあるし、
エンドロールが終わってからも、ワンシーンある。
(どの映画のときもそうだけれど……)
場内が明るくなるまで、席を立たないようにね。


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