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映画『恋は雨上がりのように』  ……疾走する小松菜奈に魅了される……

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何度も鑑賞した映画『坂道のアポロン』の上映が終わってしまい、
すっかり迎律子ロス(つまり小松菜奈ロス)に陥ってしまった哀れな私。(笑)
寝ても覚めても小松菜奈の幻影がちらつき、(爆)
小松菜奈の次作を(首を長くして)待っていた。
その小松菜奈が主演する『恋は雨上がりのように』(大泉洋とのW主演)は、
冴えないファミレス店長に片思いをした女子高生の“恋の行方”を描いたもので、
45歳のバツイチ子持ちの店長を、大泉洋が、
17歳の女子高生を、小松菜奈が演ずるという。
美男美女の高校生同士のキラキラした恋愛もの(学園もの)に飽き飽きしていた私は、
中年男に女子高生が恋をするという、
ちょっとありえない設定にワクワクした。(コラコラ)
大泉洋には好感を抱いているし、
清野菜名、磯村勇斗、葉山奨之、松本穂香、山本舞香、濱田マリ、戸次重幸、吉田羊など、
共演陣にも好きな俳優が多い。
監督は、『世界から猫が消えたなら』や『帝一の國』の永井聡。
もう“期待”しかない……と思った。
そして公開初日の6月25日(金)の夕刻、
早めに仕事を切り上げ、映画館へ駆けつけたのだった。



高校2年生の橘あきら(小松菜奈)は、
アキレス腱のケガで陸上の夢を絶たれてしまう。


偶然入ったファミレスで放心しているところに、優しく声をかけてくれたのは、
店長の近藤正己(大泉洋)だった。


それをきっかけにあきらは、ファミレスでのバイトを始める。


バツイチ子持ちで45歳の近藤に密かな恋心を抱いて……


あきらの一見クールな佇まいと17歳という若さに、
好意を持たれているとは思いもしない近藤。
しかし近藤への想いを抑えきれなくなったあきらは、ついに近藤に告白する。


近藤は、そんな真っ直ぐな想いを、そのまま受け止めることもできず……


ケガで陸上の夢を断たれた、真っ直ぐすぎる17歳と、


夢を追い過ぎて離婚されてしまった、冴えない45歳。


人生の“どしゃ降り”のときに出逢った二人が、
諦めていたそれぞれの夢に再び向き合うまでの、
人生の“雨宿り”とも言うべき珠玉のひととき。
やがて、雨が上がり、陽が差してきたとき、
二人はどんな結論を出すのか……



原作は、眉月じゅんの同名コミック。


原作は漫画であるが、
ストーリーは漫画チックではなく、
繊細な片想いの心情を描いたピュアな物語であった。


私は、小松菜奈を見に行ったので、
まずは小松菜奈のことから書き始めたいと思う。
『坂道のアポロン』の迎律子が“静”だとすれば、
『恋は雨上がりのように』の橘あきらは“動”であった。
『恋は雨上がりのように』は、アキレス腱のケガで陸上の夢を絶たれた橘あきらを描いているので、“静”と思われがちだが、
映画を見終わった印象は、“動”であった。
本作は、疾走する小松菜奈の映像で始まり、
途中にも走る小松菜奈の映像が度々挿入される。


その疾走する小松菜奈の姿が、とにかく美しくカッコイイのだ。


たとえば、この動画。(『恋は雨上がりのように』主題歌「フロントメモリー」のMV)必見です。↓


長い脚、躍動する肉体、
若さではちきれんばかりの小松菜奈の魅力がぎっしり詰まっている。




三木孝浩監督は、
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』や『坂道のアポロン』で、
小松菜奈を誰よりも“美しく”撮ったが、
永井聡監督は、
本作『恋は雨上がりのように』で、
小松菜奈を誰よりも“格好良く”撮っている。
その小松菜奈の姿に「惚れ惚れ」する。
何度でも見たくなる。




ちょっとネタバレになるが、
ラストに小松菜奈の顔が大写しになる。
ラストにヒロインの“笑顔”をアップするのはアイドル映画の王道であるが、
本作では、“笑顔”ではなく、小松菜奈の“泣き顔”であった。
このときの小松菜奈の目をよく見てもらいたい。
目が真っ赤なのだ。泣きはらしているのだ。

私がいつも大事にしているのはそのときの感情で、それは小松菜奈としてじゃなく、役の感情です。実はもともと泣くお芝居は苦手で、気持ちを作るのに時間がかかってしまったりするんですが、絶対に妥協したくないなって思っていて。極端に言えばお客さんが見たとき、例え目薬でも分らないかもしれないけど、その後自分はずっと(泣けなかったことを)引きずっていっちゃうと思うし、自分に負けた気がすると思ったんです。(『坂道のアポロン』のパンフレットより)

だから本物の涙しか流さないと、小松菜奈は語っていた。
本作『恋は雨上がりのように』では、
ラストに限らず、泣くシーンが案外多いのだが、
たぶん、ずべてが、本物の涙であろうと思われる。


本作では、小松菜奈のいろいろな表情も楽しむことができる。
前半は、相手を射るような真剣な眼差し、


そして、後半には、やわらかな笑顔も見ることができる。


高校の制服姿、


ファミレスの制服姿、


浴衣姿、


デートでの勝負服姿など、


ファッション面でも楽しませてくれし、
小松菜奈の魅力がぎっしり詰まった作品になっている。



小松菜奈とW主演の大泉洋も、
中年の悲哀を上手く表現していて素晴らしかった。


もともと好きな俳優なので、
『アフタースクール』(2008年5月24日公開)
『探偵はBARにいる』(2011年9月10日公開)
『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』(2013年5月11日公開)
『探偵はBARにいる3』(2017年12月1日公開)
『青天の霹靂』(2014年5月24日公開)
『駆込み女と駆出し男』(2015年5月16日公開)
など、このブログでレビューを書いている作品も多い。
本作『恋は雨上がりのように』では、
女子高生に恋される冴えない中年男の役ということで、
中年の悲哀を感じさせながらも、
クスッと笑わされるような“おかしみ”を持つキャラクターで、
大泉洋以外は考えられないほどハマっていた。


女子高生と中年男という組み合わせなのに、
いやらしさや、ドロドロしたものが感じられず、
むしろ爽やかな印象が残るのは、
ひとえに大泉洋の演技と人柄に因るところ大である。



橘あきらの親友・喜屋武はるかを演じた清野菜名。


映画では、
『金メダル男』(2016年10月22日公開)
『パーフェクト・レボリューション』(2017年9月29日公開)
などが印象に残っているが、
『パーフェクト・レボリューション』は、
リリー・フランキー、清野菜名、小池栄子、余貴美子など、
私の好きな俳優が出演していたので、
期待して(わざわざ)福岡まで見に行ったのだが、
脚本、演出があまりにも酷く、(コラコラ)
このブログにはレビューを書いていない。
清野菜名はむしろTVドラマでの活躍が目立っており、
主演作『トットちゃん!』(2017年11月1日~12月22日)で黒柳徹子を演じ、
倉本聰脚本の『やすらぎの刻〜道』(2019年4月~2020年3月放送予定)では、
八千草薫とW主演することになっている。
現在放送中のNHKの朝ドラ『半分、青い。』でも
ヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)と同じ、
秋風羽織(豊川悦司)のアシスタント小宮裕子役を演じており、


毎回楽しみに観ている。
『半分、青い。』では永野芽郁と仲良くなった清野菜名であるが、
『恋は雨上がりのように』でも小松菜奈と幼なじみの役で、
橘あきら(小松菜奈)を心配し、思いやる同級生・喜屋武はるかを巧く演じていた。



橘あきらのアルバイト仲間・西田ユイを演じた松本穂香。


初めて会った吉澤(葉山奨之)に好印象を抱いたり、
近藤(大泉洋)のようなオジサンは”臭い”と思っている、
女子高生として普通の女子高生的感覚を持っている女の子を、
ちょっととぼけたような感じで演じていて素晴らしかった。
auのCM「意識高すぎ!高杉くん」でご存じの方も多いと思うが、


今年(2018年)7月から放送予定のTVドラマ『この世界の片隅に』(TBS系)で、
ヒロイン・北條(浦野)すず役に抜擢されたことで、
今年の後半は、これまでにも増して脚光を浴びることだろう。


演技のセンスが良く、将来が本当に楽しみな女優だ。



橘あきらの母・橘ともよを演じた吉田羊。


13社のCMに起用され、
2016年の「タレントCM起用社数ランキング」で女性部門の首位となって、
初のCM女王に輝き、
男女合わせても単独トップの座に輝いた、
現在、最も脚光を浴びている女優。
ロッテの乳酸菌ショコラのCMでは、
小松菜奈と共演もしているので、仲良しコンビ。


吉田羊自身が小松菜奈のことを「大好き」と公言していたので、
母と娘の役も実によく馴染んでいた。


吉田羊は、現在、
主演映画『ラブ×ドック』(2018年5月11日公開)が公開中だし、
『コーヒーが冷めないうちに』(2018年9月21日公開予定)
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(2018年秋公開予定)
などが控えており、
2作目の主演作『ハナレイ・ベイ』も2018年10月19日に公開予定だ。
これは、村上春樹の小説が原作の映画で、期待できそうな感じ。
今年の秋が楽しみ。


その他、
久保を演じた濱田マリ、


九条ちひろを演じた戸次重幸が、
さすがの演技で、好い味を出していた。


本作の小松菜奈にすっかり魅了されてしまったので、
『坂道のアポロン』同様、
『恋は雨上がりのように』も、何度か見に行くと思う。
一度では書ききれないので、映画を見る度に、
またレビューも書きたいと思っている。
乞うご期待。


天山・樫原湿原 ……ミヤマキリシマを楽しんだ後にトキソウに逢いに行ったよ……

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最近は、映画レビューや、ブックレビューが多く、
〈山の記事が少ないのではないか……〉
〈タクさんは山に登っているのか……〉
と、思われている方もおられるのではないかと思うが、
今年は例年にも増して山へ行っている。
では、なぜブログにレポがないかと言えば、
「調査登山が多いから……」
と答えるしかない。
極秘に調査しているので、
ブログに書けることがないのだ。
近くの山ばかりなのだが、
マイナールートだったり、ヤブ漕ぎだったり、(笑)
まともな道をあまり歩いていない。
「その山には咲いていない」(とは言っても希少種とは限らない)
と言われている花を探したりしているが、
見つからないことの方が多く、
すると、ブログに書く材料もない。
発見できたとしても、
ブログに書くと、珍花ハンターがやってきて、
すぐに知れ渡り、盗掘されたりしてすぐに消滅してしまう。
だから見つけたとしても、ブログには書けない。
書いていない花々が年々増えていく。
そうすると、ブログをやっている意味がないので、
そろそろブログをやめようかとも考えている。
ブログのやめ時を模索している。
そして、
誰にも知られていない“秘密の花園”で遊ぶ老後を夢想している。(爆)

とは言っても、
映画レビューや、ブックレビューは書き残したいので、
〈山抜きのブログにしようか……〉
〈山のレポは書いても、花抜きにしようか……〉
などと考えている。
今後どうなるかは、まだ分らない。

ということで、今日は「天山」。
調査登山ではないので、
いつもの風景、いつもの花しか出てこないので、あしからず。
珍花ハンターの方は、お引き取りを……(笑)

今日は、久しぶりに、上宮登山口から。


緑が濃くなってきている。


ゆっくり登って行く。


いつもの場所でパチリ。


あめ山分岐を通過。


しばらく登ったら、
ミヤマキリシマが咲いていたので、
あめ山と一緒にパチリ。


多良山系の山々をパチリ。


天山山頂に到着。


雲仙が見えるので、まあまあの展望(遠望)。


麦秋の佐賀平野。


さあ、稜線散歩。


ミヤマキリシマ越しに見る雲仙。


ミヤマキリシマ越しに見る多良山系。


ミヤマキリシマ越しに見る背振山地。


天山のミヤマキリシマは、まばらに咲いているが、
色とりどり。


いろんな色のミヤマキリシマが楽しめる。


くじゅうや雲仙に行かなくても、
すぐ近くの山でミヤマキリシマを見ることができる幸せ。


これ以上の贅沢はない。(もう何回も言ってるね)


天山のミヤマキリシマは、今日がピークだったような気がする。


今年も咲いてくれて、ありがとう!


松の枯れ木と、多良山系と、ミヤマキリシマが、絶妙の配置。


いつものように、彦岳が見える場所まで行って、引き返す。


戻り道は、足もとに咲いていたバイカイカリソウを愛でる。
でも、ピークを過ぎて、花は少なくなっている。


ツインのホソバノヤマハハコも順調に育っている。


モウセンゴケも随分と数が増えた。


いつもの場所でランチ。


今日は、ミヤマキリシマを眺めながら……


本日の「天山北壁」。


この後、散歩道へ。


カノコソウは今がピーク。
普通は、こんな形だけど、


三方に開いたカノコソウを見つけた。


フタリシズカも数箇所で見ることができた。


タツナミソウは、浮世絵に描かれた波の様。


キンランは終わりかけ。


また来年も咲いてね。


第一群生地のサバノオ。


まだ花が残っていた。


ありがとう。


サイハイランも見ることができた。


天山ではあまり見ないので嬉しい。


来年もまたここに来よう。


ミズタビラコも群生している。


本当に可愛い花だ。


セイヨウノコギリソウも咲いていた。


そして、こんな面白い形の花も……


帰路、樫原湿原に寄った。


九州の尾瀬。


トキソウは、もうたくさん咲いていた。


いいね~


横顔と、


正面の顔。


美しい~


ヒツジグサも咲いていた。


ヒツジグサの語源は、
開花時間が「羊の刻」(午後2時頃)であることに由来する。
スイレン科スイレン属の水生多年草で、
この属で日本在来種はこのヒツジグサだけ。


今日も「一日の王」になれました~

八幡岳 ……イチヤクソウ、サイハイラン、モミジウリノキなどが咲いていたよ……

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今日は、午前中は映画に行って、
午後から晴れたので、八幡岳に登ってきた。
イチヤクソウやモミジウリノキなどがそろそろ咲き出す頃だと思い、
ワクワクしながら出掛けたのだった。

いつもの場所でパチリ。


もうヤマボウシが咲いていた。


いいね~


ヤマツツジは今日がピークのようだった。


私の大好きなモミジウリノキの花は、もう咲いて待っていてくれた。


蕾も多いが、開花したものも多い。


たくさん咲いている中から、いちばん美しい花を探す。
これもイイけど、


こっちもイイ。


今日のいちばんの美人さんは、この花。


ハナイカダは、もう実になっていた。
ほとんどは実はひとつだけど、


二つのもあり、


三つのもある。


面白いね~


ナルコユリはたくさん見かけたし、


ユキノシタは群生していた。


すごい数だ。


キイチゴもたくさん。


八幡岳のキイチゴは粒が大きい。


ウツボグサがもう咲き始めていた。


ナワシロイチゴもよく見ると美しい。


イチヤクソウを探しに行くが、


まだ、ほとんどが蕾だった。




でも、根気強く探すと、
「あった~」。


カワイイ~


いいね~


こっちにも……


いつまでも見ていたい感じ。


逢えて良かった。


サイハイランや、


天山で見かけたこの花も咲いていた。


帰路、“蕨野の棚田”に寄ってみる。
棚田が水田になっていて、美しい。


タテの構図でもパチリ。


今日も「一日の王」になれました~

映画『友罪』 ……瑛太、夏帆、蒔田彩珠などの演技は素晴らしいのだが……

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昨年(2017年)上映された邦画を対象にした、
第4回「一日の王」映画賞・日本映画(2017年公開作品)ベストテンで、
私は、
作品賞の第1位に、瀬々敬久監督作品『最低。』を選出した。
主演女優賞にも『最低。』に主演した森口彩乃、佐々木心音、山田愛奈を選んだ。
タイトルは『最低。』でも、瀬々敬久監督の“最高”傑作であった。
その瀬々敬久監督の新作が5月25日(金)に公開された。
『友罪』である。
原作は、薬丸岳のミステリー小説。
凶悪事件を起こした元少年犯と思われる男と、
その過去に疑念を抱く同僚の男。
二人の友情と葛藤を、
生田斗真と、瑛太が演ずるという。
共演は、佐藤浩市、夏帆、山本美月、富田靖子、光石研など、魅力あるキャストが並ぶ。


「魂を揺さぶる、慟哭の真実」
というキャッチコピーがあったので、
〈原作を読まずに映画を見た方が楽しめるかな?〉
と思い、
原作未読のまま映画館へ向かったのだった。



ジャーナリストの夢が破れた益田(生田斗真)は、
部屋を借りる金も使い果たし、寮のある町工場で見習いとして働き始める。
益田と同じ日に入った鈴木(瑛太)は、
自分のことを一切語らず、他人との交流を拒んでいた。
そんな鈴木のことを不審に思った寮の先輩・清水(奥野瑛太)と内海(飯田芳)は、
益田を強制的に連れ、鈴木の部屋をガサ入れする。
そこで益田は女性の裸婦像が書かれたスケッチブックを見つける。


ある夜、酔っぱらって寮の玄関で倒れていた清水を一緒に介抱する益田と鈴木。
益田は、鈴木が自殺した中学時代の同級生に似ていると話しかける。
それを聞いた鈴木から、
「自分が自殺したら悲しいと思える?」
と唐突に尋ねられた益田は、戸惑いながらも、
「悲しいに決まってるだろ」
と答えるのが精一杯だった。


工場からの帰り道、鈴木は、
男に追いかけられている女・美代子(夏帆)を庇う形になり、男から一方的に殴られる。
彼女は元恋人の達也(忍成修吾)に唆されAVに出演した過去を持ち、
達也と別れてからも執拗につきまとわれていた。
鈴木は美代子のマンションで、けがの手当てを受ける。


数日後、慣れない肉体労働に疲れ果てた益田は、めまいを起こして機械で指を切断。
だが、鈴木の冷静な対処と、
病院まで運んでくれたタクシードライバー・山内(佐藤浩市)のアドバイスのおかげで、
何とか益田の指は繋がるのだった。


夜勤明け、義父が亡くなり、妻の智子(西田尚美)の実家へ駆けつける山内だったが、
妻と会うのは10年ぶりだった。
息子・正人(石田法嗣)が交通事故を起こして人の命を奪った罪を償うために、
家族を“解散”したのだ。
しかし、正人が結婚しようとしていると聞いた山内は、怒りと当惑で言葉を失う。


入院中の益田のもとに、元恋人で雑誌記者の清美(山本美月)が見舞いに訪れる。
清美は埼玉で起きた児童殺人事件の記事で行き詰っていると打ち明け、
17年前の連続殺傷事件の犯人・青柳健太郎の再犯だという噂について意見を求める。
だが、益田は、ジャーナリスト時代に自身の記事に因って招いた暗い過去を思い起こし拒絶する。


数週間後、カラオケパブで清水や内海、鈴木が益田の退院祝いをしてくれる。
鈴木の傍らには、美代子もいた。
皆の勧めから鈴木もマイクを取り、ぎこちなくアニメソングを歌う。
その楽しげな表情が嬉しく、益田はスマホのカメラを鈴木に向けるのだった。


帰り道、益田があらためて鈴木に指の件でお礼を言うと、
「友達だから」
と嬉しそうに答えるのだった。


寮に戻った益田がスマホを見ると、清美から再度、
「17年前の事件について意見を聞かせて」
というラインが届いていた。
ため息をつきながらもパソコンを開き、事件について検索した益田は、
当時14歳だった犯人・青柳健太郎の顔写真を見て、息をのむ。


そこには鈴木によく似た少年の姿が写っていた。
まさかと更に検索し、医療少年院で青柳の担当だった白石(富田靖子)の写真を見て固まる益田。
それは、鈴木のスケッチブックに描かれていたあの女性であった。




時を同じくして、それぞれが抱える問題が露わになる。
山内は、恋人が妊娠したという息子を訪ね、
「お前のために家族を解散したのに、お前が家族をつくってどうずるんだ」
と怒りをぶつける。


白石は、鈴木の再犯の噂に心を痛めていたが、
鈴木にばかり心を砕いてきた代償で疎遠になっていた高校生の娘が妊娠したという知らせを聞き、戸惑う。


美代子は、かつて出演していたAVを達也によって寮のポストにDVDを投函されてしまい、
寮の皆がそれを知ってしまう。
スマホの動画を再生し、カラオケで歌う鈴木の無邪気な笑顔を見つめる益田。
翌日、益田は、17年前の青柳健太郎の犯行現場へと旅立つ。


本当に鈴木が青柳健太郎なのか?
なぜ殺したのか?
そんな益田を待ち受けていたのは、
17年前に犯した自分の罪だった……



映画を見る前は、なんとなく次のようなことを考えていた。

町工場で働くことになった益田(生田斗真)と鈴木(瑛太)。
同い年の二人は次第に打ち解け友情を育む。
しかしあるきっかけから、益田が、
〈鈴木は17年前に世間を騒然とさせた連続児童殺傷事件の犯人ではないか……〉
と、考えたことにより、慟哭の結末へなだれ込んでいく。

生田斗真と瑛太がW主演と書いてあったので、
単純にこのようなストーリーを思い描いていたのだが、
映画を見たらまったく違っていた。
先程書いたストーリーを読んでもらえば判るように、
なんと、群像劇だったのだ。
結論から言うと、これがあまり成功していない。
原作は読んでいないので何とも言えないが、
原作に手を入れ過ぎて、複雑になり過ぎている。
瀬々敬久監督が脚本も担当しているが、
『64 ロクヨン』のときと同じ過ちを犯しているような気がした。
『64 ロクヨン』の前篇は傑作であったが、
後篇は原作にないストーリーを付け加えて、前篇とは比べものにならない出来だったのだ。
あのときの悪い癖がまた出たのかもしれない。
『64 ロクヨン』のレビューを一部引用してみる。

この『64‐ロクヨン』という作品は、ミステリーであるが、
県警広報 対 新聞記者、
刑事部 対 警務部、
地方記者 対 中央記者、
父 対 娘などの、
対立や確執を描いた人間ドラマでもある。
むしろ、人間ドラマが主で、
ミステリー要素の少ない作品と言ってもいいのではなかと思う。
そういう意味で、前編の方は、対立の構図を描き、成功していると言える。
だが、後編になると、ミステリーの要素が強くなり、
前編と雰囲気がガラリと変わる。
そして、ラストに、原作にはないストーリーを創作し、
ビックリ仰天の展開となる。
ちょっとネタバレになるが、
主人公の佐藤浩市が、広報室広報官として、あるまじき行動をするのだ。
TVドラマへの対抗心からそうしたのか、
2部作にはしたものの時間が余ってしまったのか、
主役が佐藤浩市だったのでもっと活躍させたかったのか、
原作における「犯人を突き止める方法(手段)」が弱いと感じたためにそうしたのか、
理由はいろいろあるだろうが、
まったく理解不能のラストに唖然としてしまった。
原作者の横山秀夫は、こんな脚本で、よくOKを出したなと思う。
あんなラストをくっつけるくらいなら、やはり後編など作らない方がよかった。
前編をもっとコンパクトにし、
後編の冒頭の「前編の紹介」と、ラストの「原作にないオチ」を除外して、
2時間半くらいのひとつの作品として完成させていれば、
傑作になりえていたかもしれないのだ。
前編が健闘していただけに、
後編の「ありえない展開」が本当に惜しまれる。

このときも佐藤浩市であったが、
この『友罪』でも佐藤浩市のパートが不自然だった。
佐藤浩市の顔が立派すぎてタクシードライバーには見えなし、
『64 ロクヨン』のときと同じように、
佐藤浩市をもっと活躍させ、目立つようにしたかったからなのか、
佐藤浩市の登場シーンを増やしているために、
内容そのものが薄っぺらいものになっており、
他のパートとのバランスもとれなくなっている。
こう考えた時点で、
「批判ばかりになりそうな映画のレビューは書かない」ことを信条とする私は、
〈映画『友罪』のレビューは書かないでおこうか……〉
と思った。
だが、出演者個々の演技は素晴らしいのだ。
特に、瑛太、夏帆、蒔田彩珠の演技は、強く印象に残った。
レビューを書かずにスルーするには惜しいほどの演技だったので、
少しだけ(にはなっていないが)感想を書いておこうかという気になった。


特筆すべきは、鈴木を演じた瑛太。


生田斗真も下手な俳優ではないのだが、
生田斗真の演技がかすんでしまうほどの瑛太の熱演だった。






益田(生田斗真)と鈴木(瑛太)は一緒のシーンが多く、
その段階であきらかに演技に差があったが、
決定的だったのは、ラスト近くの慟哭のシーン。
それぞれ違う場所で演技なのだが、
最初に、益田(生田斗真)が、
その後に、鈴木(瑛太)のシーンがあり、
生田斗真の演技がステレオタイプで単調なのに対し、




瑛太の演技は複雑な感情を繊細に表現しており、
瑛太の顔が、笑っているようにも泣いているようにも見え、
ワンシーンの中に、怒り、悲しみ、喜び、絶望など、
様々な感情を表現していて秀逸であった。



AVに出演した過去を持ち、
元カレからも執拗につきまとわれている女・美代子を夏帆も素晴らしかった。


原作では益田や鈴木と同じ職場の女性という設定だったらしいが、
別な職場の女性に変更し、
瀬々敬久監督が得意とするAVのシーンも付け加えられて、
美代子についても“やりすぎ”感満載だったのだが、
そんな不利な条件の中、
夏帆の演技は、それら悪条件を補って余りあるものであった。
〈夏帆になにやらせるんだ!〉
というシーンもあったが、
「体当たりの演技」という言葉が陳腐に思えるほどの熱演で、見るものをうならせる。



その他、富田靖子、光石研、西田尚美、坂井真紀などの演技も良かったが、
このブログに書いておきたいと思ったのは、
白石(富田靖子)の娘・唯を演じた蒔田彩珠。


蒔田彩珠の名は、『友罪』のHPにもないし、
「Yahoo!映画」などの映画紹介サイトのキャスト欄にもなかった。
だから誰も彼女のことは誰も書かないのではないかと心配し、
せめて私だけでも書いておこうかと思った次第。
出演シーンは多くないし、それゆえにHPのキャスト欄にも名がないのだと思うが、
短い出演時間にかかわらず、見る者に鮮烈な印象を残す。
〈この女優見たことあるけど、誰だったっけ?〉
と誰もが思う筈である。
私も、過去に、そう思った経験をしており、
『三度目の殺人』(2017年9月9日公開)のレビューを書いたときに、

〈どこかで見たことのある女優だな~〉
と思いながら見ていたのだが、
黒木華主演のNHK土曜時代ドラマ『みをつくし料理帖』(2017年5月13日~7月8日)に出演していたことを思い出した。


と書いているが、
何度か同じような経験をすることによって、
蒔田彩珠という女優の名が、私の心にしっかりと刻まれた。
目と唇に特徴があり、
(女優にこう言っては何だか)面構えがイイ。
是枝裕和監督作品の常連になりつつあり、
『海よりもまだ深く』(2016年5月21日公開)や、
『三度目の殺人』に続いて、
第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した『万引き家族』(2018年6月8日公開予定)にも出演しているようなので、こちらも楽しみ。



映画『友罪』が特徴的なのは、
共感が得やすい犯罪の“被害者”を描いているのではなく、
《殺人を犯した人間》
《交通事故で3人の子供の命を奪った人間》
《クラスメイトを自殺に追いやった人間》
など、
“加害者”側の人間を描いていること。
「罪を犯した人間には幸せになる権利はないのか……」
という大胆な問い掛けもしている。
共感は得にくいだろうが、
そのチャレンジ精神と、
瑛太、夏帆などの熱演が、
この映画を見る価値のあるものにしている。
ぜひぜひ。

映画『万引き家族』 ……時代が“安藤サクラ”にようやく追いついてきた……

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是枝裕和監督は、


1962年6月6日東京都練馬区生まれの55歳(2018年6月3日現在)。
1987年に番組制作会社テレビマンユニオンに入社し、
テレビ番組のADをしながらドキュメンタリー番組の演出家をつとめ、
1995年に『幻の光』で映画監督デビューした。

これまでの監督作は以下の通り。

『幻の光』(1995年)
『ワンダフルライフ』(1999年)
『DISTANCE』(2001年)
『誰も知らない』(2004年)
『花よりもなほ』(2006年)
『歩いても 歩いても』(2008年)
『大丈夫であるように -Cocco 終らない旅-』(2008年)(2015年に再上映)
『空気人形』(2009年)
『奇跡』(2011年)
『そして父になる』(2013年)
『海街diary』(2015年)
『海よりもまだ深く』(2016年)
『三度目の殺人』(2017年)

22年ほどで、13作。
他にも、TVドラマやTVドキュメンタリーなども撮っているので、
多作ではないが、寡作でもない……といったところか。
好きな監督なので、
ほとんどの作品は見ているし、
楽しませてもらってきた。
その是枝裕和監督の新作が、6月8日(金)から公開される。
第71回カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドールを受賞した『万引き家族』である。


受賞を記念して、6月2日(土)と3日(日)に先行上映されることが決まり、
早く見たかった私は、
6月2日(土)の夜、仕事を終えて、映画館へ駆けつけたのだった。



東京の下町。
高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、
家主である初枝(樹木希林)の年金を目当てに、
治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、
息子の祥太(城桧吏)、
信代の妹の亜紀(松岡茉優)が暮らしていた。
彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという、


社会の底辺にいるような一家だったが、
いつも笑いが絶えない日々を送っている。


そんなある冬の日、
近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子(佐々木みゆ)を見かねた治が家に連れ帰り、


信代が娘として育てることに。


そして、ある事件をきっかけに、
仲の良かった家族はバラバラになっていき、
それぞれが抱える秘密や願いが明らかになっていく……



感想を一言で言うと、
「安藤サクラの演技が素晴らしい傑作!」
であった。
他の出演者の演技も素晴らしいのだが、
彼女の演技が抜きん出ていた。


松岡茉優は、

安藤さんは絶望的な存在だった。うそでしょっていうぐらい、安藤さんはこの映画で絶望的な演技をされている。

と、その演技力を“絶望的”という面白い言葉で絶賛していたが、
そんな言葉を使わないと表現できないほどの演技だったのだ。

特に、安藤サクラが髪をかき上げながら泣くシーンがあり、
この演技が、『万引き家族』での安藤サクラを象徴するかのような演技で、
どんな褒め言葉も追いつかないほどの名演なのだ。


第71回カンヌ国際映画祭の審査員長で女優のケイト・ブランシェットも、

彼女のお芝居、特に泣くシーンの芝居がとにかく凄くて、もし今回の審査員の私たちがこれから撮る映画の中で、あの泣き方をしたら、安藤サクラの真似をしたと思ってください。

と、手放しの褒めよう。

是枝裕和監督も、

みんな素晴らしいんですけど、サクラさんの泣くシーンは、現場でカメラの脇で立ち会っていても「特別な瞬間だ」と思った。

お芝居でここまでたどり着けるのかと正直思わされた。何かを超えていた。

審査員たちが、何かとんでもないものを見たという顔をしながら、安藤サクラがすごいと言っていた。

と語っている。

映画『万引き家族』がパルムドールを受賞し、
ケイト・ブランシェットの言葉や是枝裕和監督のコメントなどが紹介され、
安藤サクラの演技の評価が高まるにつれ、
私のブログの“ある記事”へのアクセスが急増した。
それは、4年前に書いた『百円の恋』のレビューだ。
このレビューを、私は、

……安藤サクラの時代がやってきたことを実感させる傑作……

とのタイトルで掲載した。(タイトルをクリックするとレビューが読めます)
2014年に安藤サクラ主演の『0.5ミリ』と『百円の恋』が公開され、
そのどちらもが素晴らしい作品であったし、
安藤サクラの演技が秀逸であったので、

……安藤サクラの時代がやってきたことを実感させる傑作……

と書かせてもらったのだが、
2018年10月開始予定のNHK連続テレビ小説『まんぷく』のヒロインに決まり、
『万引き家族』の演技の高評価で、世間の目が一気に彼女に集まり、
今になってようやく、
安藤サクラの時代がやってきたこと、
時代が“安藤サクラ”にようやく追いついてきたことが、
一般の人たちにも実感として感じられるようになってきたのだ。
4年前にすでに安藤サクラの時代になっていたと私は書いたが、
その彼女をいち早くキャスティングし、
『万引き家族』の主役に据え、映画を完成させた是枝裕和監督の手腕は称賛に値する。



安藤サクラの演技を見るだけでもこの映画を鑑賞する価値はあるのだが、
安藤サクラ以外の女優たちの演技も素晴らしい。


一家が暮らす家の持ち主で、唯一の定収入である年金受給者・初枝を演じた樹木希林。


〈この方が不気味〉
と考え、
髪を伸ばし、入れ歯をはずして役作りしたそうで、
スクリーンで見る限り、“樹木希林”その人とは思えず、別人のように見える。
入れ歯をはずしているので、
食事のシーンでも、食べ物を噛まずにチュウチュウしゃぶるような感じで、
「いや、もう、さすがです!」
と言わざるを得ない。



JK見学店でバイトをしている亜紀を演じた松岡茉優。


まったく予備知識なしで見たので、
彼女があれほど大胆な演技をしているとは正直思わなかった。
胸もあれほど大きいとは正直思わなかった。(コラコラ)
顔が整い過ぎているので、この家族の中では、少々違和感があったが、
この役にかける彼女の思いがそれを上回り、
私の違和感などねじ伏せるような演技であったと思う。
是枝裕和監督は、

希林さんと安藤さんの2人に太刀打ちできる女優は松岡さんだと思った。

と、キャスティング理由を明かしているが、
女優としてのまっすぐな思いが、そのことを可能にしたのだと思われる。
安藤サクラ、樹木希林との共演は、
これからの松岡茉優の女優人生においてとてつもない財産となったことであろう。



リリー・フランキーが、
安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優のことを、「化け物だ」と言っていたそうだが、(笑)
それほど凄い演技をしていたという意味で、これ以上の褒め言葉はないと思われる。


安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優ときて、
もうひとり、忘れてはならない女優がいる。
近所の団地に住んでいたが、児童虐待を受けていたところを治に拾われ、
家族の一員となるゆりを演じた佐々木みゆだ。


オーディションによって選ばれたそうだが、
小さいながらに、その存在感が抜群であった。
子どもたちには台本を渡さず、
口立てで演出するという手法(是枝裕和監督の演出方法)が今作でもとられたそうだが、
その演技にもうならされた。



ここまで、
安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優、佐々木みゆの4人の女優を紹介したが、
ふと思うに、『万引き家族』という映画は、
この年齢の違う、4世代と言ってもいいような4人の女性を描いた「女性映画」ではないか……
ということだ。
監督はそんなつもりで撮ったのではないかもしれないが、
見終わってみると、見事な「女性映画」であったと思えるのだ。



そんな女性(女優)たちの中にあって、
男性たちも頑張っていた。
父親・治を演じたリリー・フランキー。


『そして父になる』(2013年)
『海街diary』(2015年)
『海よりもまだ深く』(2016年)

に続く是枝裕和監督作品への出演で、
もう常連と呼んでもイイほどに是枝裕和監督作品に馴染んでいる。
教養はないが情の深い優しい父の役で、
工事現場で働いてはいるが、
足りない生活用品は万引きによってまかなっているという中年男。
ちょっといい加減で、適当で、助平で、
リリー・フランキー以外には出せない味があり、
演技の巧い4人の女優を相手にできるのは、
これくらいの軽みのある俳優でなければ……と思われた。


中年の男優では、
若い頃は二枚目俳優として売り、
年を取ってからはシブい中年男を演じているような元二枚目俳優が多いのだが、
そんな男優には、リリー・フランキーのような味は出せない。
これからも彼は有名監督たちから引っ張りだこ状態が続くことだろう。



小学校に通わず、治から教えられたテクニックを駆使し、
万引きを繰り返す少年、祥太を演じた城桧吏。


彼もまた佐々木みゆと同じくオーディションによって選ばれたそうだが、
その演技の巧さ、存在感は、『誰も知らない』(2004年)の柳楽優弥を髣髴とさせ、
すでに完成された男優の雰囲気さえ漂わせていた。


是枝裕和監督は、元々、子役を演出するのが巧い監督だが、
本作における城桧吏と佐々木みゆは、
これまでの是枝裕和監督作品の中でも飛び抜けた存在と言えた。



この他、出演シーンが少ない脇役にも、豪華なキャストが揃っている。
祥太が度々万引きに訪れる駄菓子屋の店主を演じた柄本明や、
亜紀の働くJK見学店の常連客・4番さんを演じた池松壮亮。


家族が起こしたある事件の捜査をする男性刑事・前園を演じた高良健吾と、
前園と共に事件の捜査に当たる女性刑事・宮部を演じた池脇千鶴。


初枝の別れた夫の再婚相手の息子・柴田を演じた緒形直人と、
柴田の妻・葉子を演じた森口瑤子など、


他の映画だったら、主役級の俳優ばかりである。
こういった俳優たちをキャスティングできるのも、
〈是枝作品に出たい!〉
と思わせる是枝裕和監督の力と言えるだろう。


俳優たちの優れた点を語ってきたが、
本作の映像の美しさにも触れておきたい。
撮影を担当したのは、近藤龍人。


このブログにも度々登場しているので、
ご存じの方も多いと思うが、
私が、今、最も優れていると思っている映画カメラマンである。
それは何故かと言うと、
私が「傑作」と思う作品の多くが、近藤龍人によって撮られているからである。

『天然コケッコー』(山下敦弘監督)
『パーマネント野ばら』(吉田大八監督)
『海炭市叙景』(熊切和嘉監督)
『マイ・バック・ページ』(山下敦弘監督)
『桐島、部活やめるってよ』(吉田大八監督)
『横道世之介』(沖田修一監督)
『四十九日のレシピ』(タナダユキ監督)
『そこのみにて光輝く』(呉美保監督)
『私の男』(熊切和嘉監督)
『バンクーバーの朝日』(石井裕也監督)
『ストレイヤーズ・クロニクル』(瀬々敬久監督)
『オーバー・フェンス』(山下敦弘監督)

などなど、多くの優れた監督から声がかかり、
素晴らしい映像を残している。
本作『万引き家族』でも、近藤龍人にしか撮れないと思われる、
忘れられない映像が数多くあり、
近藤龍人が撮影を担当したからこそのパルムドール受賞であったかもしれない。


語りたいことは多いが、
この作品にばかり関わっている訳にはいかない。
なぜなら、
レビューを書きたいと思っている作品がたくさん控えているから……
ということで、
是枝裕和監督作品の好き嫌いは別にして、
今年(2018年)を代表する映画であるし、
この映画を見ていなければ、今年の映画界は語れないほど重要な作品である。
ぜひぜひ。

映画『恋は雨上がりのように』(2回目の鑑賞) ……1回目の鑑賞よりも深い感動……

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私の大好きな小松菜奈の主演作『恋は雨上がりのように』。
公開初日の5月25日に1回目の鑑賞をした。
そして、先日、2回目の鑑賞をした。

2回目の鑑賞になると、
普通は、1回目よりも感動が薄れるような気がするが、
「あら不思議」
1回目よりも深く感動できたのだ。
物語の展開は分っているし、
感動ポイントも分っている筈なのだが、
分っているが故に……とも言うべきか、
感動する準備ができているからか、
1回目にも増して感動してしまったのだ。
(1回目のレビュー及びストーリー紹介はコチラから)

2回目のレビューなので、
前回のレビューでは書いていないことを中心にまとめたいと思う。

その前に、(最初から脱線してしまうが……)
『恋は雨上がりのように』は小松菜奈の主演作ということもあって、
公開日前後には、
映画の宣伝のために多くのバラエティ番組に小松菜奈が出演していたのだが、
(TVでも小松菜奈を多く観ることができて私も嬉しかった)
2018年5月26日(土)に放送された『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)でのこと。


「天才芸術家の孫が明かす! ピカソの知られざるプライベート」
と題して、
画家パブロ・ピカソの孫にあたり、
現代絵画専門の美術歴史家であるダイアナ・ウィドマイヤー・ピカソさんが授業を行ったときのエピソード。


パブロ・ピカソが
ダイアナ・ウィドマイヤー・ピカソさんの祖母であるマリー・テレーズ(ピカソ作品のモデルで最も有名な愛人)に一目惚れをして、
街で声をかけて交際が始まるのだが、
このときの二人の年齢が、
パブロ・ピカソ45歳、マリー・テレーズ17歳だったのだ。
この年齢、
『恋は雨上がりのように』の主人公である、
近藤正己(大泉洋)と橘あきら(小松菜奈)の設定年齢と同じだったので、
〈ああそうか、この45歳と17歳という年齢が同じだったので大泉洋と小松菜奈が呼ばれたのだな〉
と勝手に解釈して観ていたのだが、
番組ではそのことに関してまったく触れず、
大泉洋や小松菜奈が「私たちが出演した映画と二人の年齢が同じですね」と言うこともなく、
番組は終了してしまった。
45歳と17歳という年齢は単なる偶然だったようで、
(ダイアナ・ウィドマイヤー・ピカソさんの授業に、たまたま大泉洋や小松菜奈が呼ばれただけのようで……)
番組スタッフや出演者が気づいていれば、もっと内容を広げられたのに……と、
残念に思ったことであった。


『恋は雨上がりのように』で、
女子高生の橘あきらが、中年男の店長・近藤正己を好きになることを、
「17歳の女子高生が45歳のおじさんを好きになるなんてありえない」
などと批判する人もいるが、
実際にあった例として、
パブロ・ピカソとマリー・テレーズのことをもっと深く掘り下げたなら、
より面白い番組になったのに……と思った。


では、ここからは、あらためて、
1回目鑑賞のときは気づかなかったことや、
1回目のレビューでは書いていなかったなどを箇条書きで記していきたい。


①橘あきら(小松菜奈)から近藤正己(大泉洋)への「好きです」という告白は5回。
数えてみたら、そう、5回もあったんですね。
その5回の告白が、すべてトーンが違っていて、
それでいて、わざとらしさがなく、自然で、とても感じが良かった。



②映画のタイトルに“雨”が入っているので、当然のことながら“雨”のシーンが多い。
“雨”で思い出すのは、サマセット・モームの短編小説『雨』。


狂信的な布教への情熱に燃える宣教師が、
任地へ向う途中、検疫のために南洋の小島に上陸する。
彼はここで同じ船の船客であるいかがわしい女の教化に乗りだすが、
重く間断なく降り続く雨が彼の理性をかき乱してしまう……

というストーリー。
衝撃的な結末が待っているが、
かように“雨”は理性を狂わせる。
この映画でも、雨の中で告白するシーンがある。

「……あたし、やっぱり店長のこと、好きです」

「橘さんは、いつも雨の日に突然現れるね」

“雨”は果たして近藤正己(大泉洋)の理性をも狂わせるのか……



③小松菜奈が疾走するシーンで涙が出てきた。
1回目の鑑賞では泣かなかったのに、
2回目の鑑賞では涙が出てきた。
なぜだか、小松菜奈が走っている姿を見て、いたく感動してしまったのだ。
躍動する肉体への憧憬なのか?
過ぎ去ってしまった己の若き頃を思い出してしまったのか?
単に年を取って涙もろくなっただけなのか?



④近藤正己(大泉洋)が発する言葉が素晴らしい。
病気の近藤を訪ねてきたあきらに、近藤が発した言葉。

「俺は橘さんといると、忘れていた、かけがえのない財産ってヤツを思い出すことができるよ……」

イイ言葉だ。
素敵な人というのは、その人を見ているだけで、
心に仕舞っておいた大切なものを思い出させる。
小松菜奈がそうであるように……



⑤ガチャガチャを何度も回すあきらが、いじらしくて可愛い。
好きな人と仲良くなれる力のあるキーホルダーが欲しくて、
何度もガチャガチャを回すあきら。


はたして目的のキーホルダーは手に入れることができるのか?



⑥小松菜奈と大泉洋が、この映画で一番印象に残っているシーンは……
ラストシーン(土手での再会のシーン)とのこと。




このシーンのことを、私は、
1回目のレビューのときに、次のように記している。

ちょっとネタバレになるが、
ラストに小松菜奈の顔が大写しになる。
ラストにヒロインの“笑顔”をアップするのはアイドル映画の王道であるが、
本作では、“笑顔”ではなく、小松菜奈の“泣き顔”であった。
このときの小松菜奈の目をよく見てもらいたい。
目が真っ赤なのだ。泣きはらしているのだ。

私がいつも大事にしているのはそのときの感情で、それは小松菜奈としてじゃなく、役の感情です。実はもともと泣くお芝居は苦手で、気持ちを作るのに時間がかかってしまったりするんですが、絶対に妥協したくないなって思っていて。極端に言えばお客さんが見たとき、例え目薬でも分らないかもしれないけど、その後自分はずっと(泣けなかったことを)引きずっていっちゃうと思うし、自分に負けた気がすると思ったんです。(『坂道のアポロン』のパンフレットより)

だから本物の涙しか流さないと、小松菜奈は語っていた。
本作『恋は雨上がりのように』では、
ラストに限らず、泣くシーンが案外多いのだが、
たぶん、すべてが、本物の涙であろうと思われる。

「たぶん、すべてが、本物の涙であろうと思われる」
と書いたのだが、
これは本当であった。

2回目の鑑賞のときにパンフレット(720円)を買ったのだが、
この中に「この映画で一番印象に残っているシーンは?」との問いがあり、
小松菜奈と大泉洋、両人ともに、
あのラストシーン(土手での再会のシーン)を挙げているのだ。

小松菜奈は語る。

土手での再会シーンでは、まさにラストシーン!って感じでとってもお天気が良かったので印象に残っています。監督と大泉さんと3人で話している時に、「これはいつぶりの再会なんですか?」って話になって、監督が「大体半年ぶりくらいですね」ってお答えになったんです。その時大泉さんが「ちょっと泣きそうになった」とおっしゃったんですが、私も全く同じ気持ちで、大泉さんとは毎日撮影でお会いしていたのに、すごく久しぶり感があってリハーサルから涙が止まりませんでした。あのシーンを演じて、店長のことを好きになってよかったなって思えたし、あきらのことも愛せた気がしましたね。

大泉洋も、

(あきらとのシーンで特に印象に残っているシーンは)たくさんありますが、やっぱり土手でのラストシーンかな。約半年後に再会した2人が、それぞれの道を歩いていくシーンだったんですが、小松さんの表情が素晴らしかったですね。

と答えている。

小松菜奈の目が赤かったのは、
リハーサルから涙が止まらなかったからなのだ。
そして、このラストシーンの小松菜奈の表情が、とにかく素晴らしい。
このラストシーンを見るために、
また最初から見たいくらい。(また見に行くけどね)



⑦“今の小松菜奈の美”をたくさん保存しておいてもらいたい。
小松菜奈のこれまでの出演作(全部ではない)を、
むりやり三つのジャンルに分類すると、

【過激青春三部作】
『渇き。』(2014年6月27日公開)
『ディストラクション・ベイビーズ』(2016年5月21日公開)
『溺れるナイフ』(2016年11月5日公開)

【キラキラ青春三部作】
『近キョリ恋愛』(2014年10月11日公開)
『バクマン。』(2015年10月3日公開)
『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016年2月27日公開)

【純愛青春三部作】
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016年12月17日公開)
『坂道のアポロン』(2018年3月10日公開)
『恋は雨上がりのように』(2018年5月25日公開)

となるような気がする。
この中で、【純愛青春三部作】での小松菜奈が最も美しい。
最も新しく撮られた3作品なので、
女性として完成された美が楽しめる。
そういう意味で、
映画関係者は、小松菜奈をもっといろんな映画に出演させて、
“今の小松菜奈の美”を保存しておいてもらいたいと思う。
次の小松菜奈の出演作は、
中島哲也監督作品『来る』(2019年公開予定)である。
小松菜奈にとっては、『渇き。』以来の中島哲也監督作品への出演となる。
岡田准一、黒木華、松たか子、妻夫木聡など、
私の好きな俳優との共演も楽しみ。


まだまだ書きたいことはあるが、
それは3回目の鑑賞の後にでも……
皆さんも、映画館で、ぜひぜひ。

映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』……原作の韓国映画を上回る超面白作……

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※今日(6月8日)の夜9時から、
 日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で地上波初放送される。
 超オススメです。


本作『22年目の告白-私が殺人犯です-』は、
2012年の韓国映画『殺人の告白』(日本公開は2013年6月1日)のリメイクである。


私はこの『殺人の告白』を2013年8月15日に佐賀のシアターシエマで見ている。
だがレビューは書いていない。
なぜか?
私がこれまで見た韓国映画で、最も好きな作品は『殺人の追憶』で、
タイトルも似ている『殺人の告白』は私にとっての期待作であった。

時効の成立後、
イ・ドゥソク(パク・シフ)という男が、
自分は15年前に世間を騒がせた連続殺人事件の犯人だと告白する。
その後、暴露本を出版した彼はそのルックスの良さも味方し、
一躍時の人として世間にもてはやされる……


なぜ犯人は時効後に姿を現したのか?
という一点の謎に迫っていく内容で、
その結末も私にとっては想定内であったし、
それほどの驚きはなかったということもあるが、
『殺人の追憶』とは比較にならないほどのB級映画で、
ガッカリしたのを憶えている。
だからレビューは書かなかった。

その『殺人の告白』を、日本でリメイクしたのだという。
〈大丈夫か?〉
と思った。
主演は、藤原竜也と伊藤英明。
藤原竜也は私の好きな男優で、期待もしているのだが、
映画に関しては、これまであまり作品に恵まれていなかった。
〈今回も……〉
と心配したが、
見ないことには何も言えない。
ということで、映画館へ駆けつけたのだった。



阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が発生した1995年、
同一犯による5件の連続殺人事件が日本中を震撼させる。
犯人はいずれも、
「被害者と親しい者に殺人の瞬間を見せつける」
「殺害方法は背後からの絞殺」
「目撃者は殺さずに犯行の様子をメディアに証言させる」
という三つのルールに則って犯行を重ねていた。
捜査を担当する刑事・牧村航(伊藤英明)は、


犯人を逮捕寸前にまで追い詰めるが、
犯人の罠にはまって上司を殺され、
事件は未解決のまま時効を迎えてしまう。
そして事件から22年後の2017年、
犯人を名乗る男・曾根崎雅人(藤原竜也)が執筆した殺人手記「私が殺人犯です」が出版される。
曾根崎は出版記念会見にも姿を現し、
マスコミ報道やSNSを通して一躍時の人となっていく……



結論から言うと、「面白かった」。
“超”をつけて、「超面白かった!」と表現してもイイだろう。
それほどの満足感があった。
私は結末を知っているので、
それほどの期待をして見ていたわけではない。
だが、私の知っている結末は、
映画の3分の2が経過した頃に、案外あっさりと観客に知らされる。
〈こんなに早く教えて大丈夫なのか?〉
と、いらぬ心配をするが、
それは杞憂であった。
そこから、もう「一ひねり」、いや「二ひねり」があったのだ。
その部分がやや強引で、
見る人によっては批判の対象になるかもしれないが、
私にとっては許容範囲であった。
オリジナルの韓国映画にはない結末を編み出し、
独自の面白さを創出した脚本と演出に拍手。


監督は、『SR サイタマノラッパー』シリーズで有名な入江悠。
第30回「古湯映画祭」(2013年)で、
入江悠監督の『SRサイタマノラッパー2』と『 女子ラッパー☆傷だらけのライム』が上映され、
入江悠監督自身もゲストとして来佐されていたので、
佐賀の映画ファンにはお馴染みの監督。
演出もさることながら、
脚本(入江悠、平田研也)が特に優れていて、
見る者を最後まで飽きさせない。
オリジナルの『殺人の告白』を超える自信があったからこそのリメイクであったのだ。


最初は、
原作の『殺人の告白』を見ていない人の方が、
『殺人の告白』を見ている人よりも(結末を知らない分)楽しめると思ったが、
映画を見終わってしばらく経ってみると、
『殺人の告白』を見ていた人の方がより楽しめるのではないか……と思った。
結末を知っているからこそ、
最後の「一ひねり」「二ひねり」がより楽しめたからだ。
だから断言しよう。
原作の『殺人の告白』を見ている人にこそ、
本作『22年目の告白-私が殺人犯です-』を見てもらいたい……と。
映画館で、ぜひぜひ。

映画『海街diary』  ……綾瀬、長澤、夏帆、そして広瀬すずの演技が光る傑作……

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是枝裕和監督最新作『万引き家族』のカンヌ・パルムドール(最高賞)受賞記念として、
本日(6月9日)、フジテレビ系「土曜プレミアム」(21:00~23:35)にて、
映画『海街diary』が放送される。
海の見える街を舞台に、四姉妹が絆を紡いでいく家族の物語で、
是枝裕和監督作品の中では、私の一番好きな映画である。
本編ノーカット放送とのことなので、じっくり楽しめると思う。
映画館での鑑賞ができなかった方々には、
ぜひ観てもらいたい作品である。

2015年06月14日に書いたレビューは、
有難いことに、多くの方々に読んで頂き、
今もアクセスの多い記事のひとつである。
「このレビューを読めば、映画を数倍楽しめること請け合い!」(笑)
今夜放送される映画を観る前に、ぜひ御一読を……


私の尊敬する川本三郎氏は、
映画評論家であり、
文芸評論家であり、
エッセイストであり、
翻訳家でもあるのだが、
なんと、漫画にも造詣が深くて、
多くの媒体に評論を寄稿されている。
2012年に刊行された『時には漫画の話を』(小学館)は、
そんな漫画評論40数編をまとめた本なのであるが、


この著書では、

現代の「若草物語」――吉田秋生『海街diary~蝉時雨のやむ頃』

と題した評論を、冒頭に置かれている。
吉田秋生の『海街diary』は、
川本三郎氏にとって、それほど重要な漫画であるのだ。

『カリフォルニア物語』や『吉祥天女』で知られる吉田秋生の、鎌倉に住む四姉妹の物語『海街diary』は近年、もっとも好きな漫画。少女漫画誌『月刊フラワーズ』(小学館)に連載されているものだが、大人が読んでも充分に面白い。
現在、単行本は『蝉時雨のやむ頃』『真昼の月』『陽のあたる坂道』『帰れないふたり』の四冊※が出ている。(二○○七年~)
※その後、『群青』(2012年12月10日発売)と『四月になれば彼女は』(2014年7月10日発売)が刊行され、既刊6巻となっている。
第一作の『蝉時雨のやむ頃』がなんといっても素晴らしい。


鎌倉の、江ノ電の極楽寺駅近くの古い家に三人姉妹が住んでいる。長女の幸は鎌倉の市民病院で働く看護師。次女の佳乃は鎌倉の信用金庫に勤めている。三女の千佳は藤沢のスポーツ用品店の店員。
三人とも二十代。両親は十五年前に離婚した。父親は女性が出来、家を出た。その二年後、なんと母親が三人の子供を置いて再婚して家を出た。三姉妹は学校の先生をしていた祖母に育てられた。(後略)

このように「あらすじ」を紹介しながら、
川本三郎氏は、漫画『海街diary』の素晴らしさをじっくり解説されている。
私は、川本三郎氏の影響を受け、漫画も読んでいたので、
是枝裕和監督によって実写化された映画の方も楽しみにしていたのだ。
なので、公開されてすぐに見に行ったのだった。

鎌倉で暮らす、幸(綾瀬はるか)、
佳乃(長澤まさみ)、
千佳(夏帆)。
そんな彼女たちのもとに、
15年前に姿を消した父親が亡くなったという知らせが届く。
葬儀が執り行われる山形へと向かった三人は、
そこで父とほかの女性の間に生まれた異母妹すず(広瀬すず)と対面する。


身寄りがいなくなった今後の生活を前にしながらも、
気丈かつ毅然と振る舞おうとするすず。
その姿を見た幸は、彼女に、
「すずちゃん、鎌倉にこない? 一緒に暮らさない?」
と声を掛ける。
こうして鎌倉での生活がスタートするが……


宮本輝の小説を映画化した長編映画デビュー作『幻の光』は違うものの、
是枝裕和監督は、これまで、
『誰も知らない』(2004年)、
『歩いても 歩いても』(2008年)、
『そして父になる』(2013年)など、
そのほとんどをオリジナル脚本で映画作りをしてきた稀有な監督である。


にもかかわらず、漫画『海街diary』を何故映画化したいと思ったのか?
某インタビューで、それは、
「漫画の一巻目で、父親の葬儀の後に四姉妹が高台に登って、街を見下ろすシーンを読んだ時に、映画化したいと衝動的に思った」と答えている。

すずが泣き、4人のシルエットが重なって、蝉しぐれが鳴くというシーンが素晴らしくて、やられちゃった。あのシーンはカメラがクレーンアップで、音も含めて、自分のなかで映像ができ上がっていました。これは、絶対に誰かが映画にするぞと。それは嫌だから、自分が手を挙げちゃおうと思いました。

川本三郎氏も、『時には漫画の話を』の中で、
同じ場面を絶賛しておられた。

列車を待つあいだ三姉妹は、すずに町を一望のもとに見られる小高い山に案内してもらう。
しっかりした中学生の妹を見て、長女の幸が気づく。父の最後の日々、世話をしたのはすずの「義母」ではなく、まだ小さいすずだったのだ、と。そしてすずにいう。
「すずちゃん 大変だったでしょう ありがとうね あなたがお父さんのお世話をしてくれたんでしょう? お父さん きっと 喜んでると思うわ ほんとうに ありがとう」
その優しい言葉を聞いて、それまで涙ひとつ見せなかったすずがはじめて泣く。号泣する。二ページにわたってすずが泣く姿がとらえられる。


おそらく父親が再婚してから死ぬまで、この女の子はずっと我慢していた。泣いてはいけないと自分にいいきかせてきた。
子供は案外、怒られたりした時には泣かない。むしろ悲しみをずっとこらえていて、はじめて優しい言葉を掛けられた時に、こらえきれずに泣く。
「ああ、この人の前なら泣いていいんだ。この人は悲しみを分ってくれる」と素直になれる。
泣きじゃくる小さな妹を三姉妹が慰める。寄り添う。それをうしろ姿で描く。ここは正直、読んでいてこちらも涙が出てくる。


小さな駅に列車がやってくる。三姉妹が乗り込む。ホームですずが見送る。ドアが閉まる瞬間、長女の幸が突然、すずにいう。「すずちゃん 鎌倉にこない? あたしたちといっしょに暮さない?」
「ちょっと考えてみてね」という幸の言葉に、意外やすずはすぐに答える。「行きます!」。このお姉さんたちと暮らしたいとすがるような気持ちだろう。そしてはじめて笑顔を見せる。

川本三郎氏は、『小説を、映画を、鉄道が走る』(集英社)でも、
次のように記している。


近年の、子供の駅の別れといえば、これはもう本書で何度か紹介した吉田秋生の『海街diary 1 蝉時雨のやむ頃』が随一だろう。
(中略)
三姉妹を乗せた列車(ディーゼルなので汽車とは書きにくい)が駅を去ってゆく。その列車を、中学生の小さな妹がホームの端まで追ってゆく。「キクとイサム」以来、これほど感動的な子供の駅の別れは他に知らない。
しかも「キクとイサム」が悲しい別れなのに対し、この漫画は、妹のこれからの鎌倉での幸福が約束されているのだから、「すずちゃん、よかったね」、と読者は祝福したくなる。

川本三郎氏が感動した場面を、
是枝裕和監督もまた感動し、
この漫画の映像化を熱望したのだ。

だが、監督が名乗りを挙げた時点で、
映画化権は他者に押えられていたのだそうだ。
だから一度は諦めたとのこと。
それが、「(権利を)手放した」という連絡が入り、
是枝監督が最終的に権利を手にする。
映画『海街diary』は、
是枝裕和監督によって撮るべくして撮られた作品なのである。

『誰も知らない』『歩いても 歩いても』『そして父になる』など、
これまでオリジナル脚本でいろんな家族を活写してきた是枝裕和監督であるが、
漫画を脚色した作品『海街diary』もまた、家族の物語になっているのは、
是枝裕和監督が、自身の中に、
「家族」というテーマを核として持っているからだろうと思われる。
この「家族」をテーマにしているという点で、
また、古き良き日本映画の香りを残しているという点で、
是枝裕和監督作品『海街diary』は、
限りなく小津安二郎監督作品に似ている。
海外で、「小津の再来」と言われているのも頷けるというものだ。
映画『海街diary』を見終わって、
私はかつてないほどの幸福感に包まれた。
これは、良い作品を見たということの証である。
監督を褒めるのはこのくらいにして、
次に、出演者について述べてみたい。

両親へのわだかまりを抱えた、しっかり者の長女の幸を演じた綾瀬はるか。
私のブログ(映画レビュー)では、
彼女の出演作である
『ハッピーフライト』(2008年)、
『おっぱいバレー』(2009年)、
『あなたへ』(2012年)などのへのアクセスが多いが、
綾瀬はるかという女優としての代表作は、まだないように思う。
本作では、これまで見せたことのない表情、演技で魅了する。
映画評論家の西村雄一郎氏は、
「綾瀬はるかは、まことに小津映画のミューズ、原節子そのものなのである」
とまで絶賛しておられた。
この作品で、彼女は、本年度のいくつかの女優賞を受賞することだろう。


姉・幸と何かとぶつかる次女の佳乃を演じた長澤まさみ。
ここ数年、
『岳-ガク-』(2011年)
『奇跡』(2011年)
『モテキ』(2011年)
『ボクたちの交換日記』(2013年)
『WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~』(2014年)
など、彼女の出演作はよく見ている方だと思うが、
長澤まさみもまた、未だ代表作というものに恵まれていないように感じる。
本作では、「監督でこうも違うものか……」と思わせるほど、
良い演技をしていた。
漫画と同様、映画でも、次女の佳乃が冒頭に登場する。(寝姿ではあるが……)
あの足のアップにはドキッとさせられた。
ドキッとさせられつつ、
これからも傑作と呼ばれる作品に出演している彼女をもっと見たいと思った。


マイぺースな三女の千佳を演じた夏帆。
現在、私のブログ「一日の王」の、
「このブログの人気記事」で常に上位にいるのが、
夏帆の出演作『箱入り息子の恋』(2013年)である。
私は、
……本年度屈指のラブコメであり、感動作だった……
とのサブタイトルをつけているが、
この映画は傑作と呼べる作品であったし、
現時点での夏帆の代表作と呼んでいいと思う。
夏帆には、もう一作、
『天然コケッコー』(2007年)という愛すべき作品がある。
映画出演が少ない割に、良い作品に恵まれているように感じる。
そして、本作『海街diary』がまた彼女の代表作に加わった。


腹違いの妹すずを演じた広瀬すず。
驚いたのは、彼女の演技である。
綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆の演技とは、
あきらかに違っていた。
予定調和ではない、
なんだかドキドキするような演技なのだ。
某インタビューで語っていたのだが、
広瀬すずは、あえて原作を読まなかったという。
なぜなら、
事前に脚本を読まず、
「是枝裕和監督から撮影ごとに口伝えでシーンや台詞を指示される方法を選択したから」
だというのだ。
それゆえの、あの臨場感であり、ドキドキ感だったのだ。
是枝監督も語る

すずの希望で台本は渡さず、セリフは現場で口伝えをして決めていった。物語を知らずに、彼女はその瞬間に集中して演じていましたが、適応能力が高く、物おじせず、そして勘がとてもいい。大物感がありますね。

と絶賛。
いやはや、凄い若手女優が出現したものだ。
偶然とはいえ、漫画の登場人物と同じ名前の「すず」という役柄を得、
早くも代表作と呼べる作品をも得た。
彼女からはもう目が離せない……


大叔母・菊池史代を演じた樹木希林。
ここ数年の樹木希林の充実ぶりは凄いの一言。
『悪人』(2010年)
『奇跡』(2011年)
『わが母の記』(2012年)
『そして父になる』(2013年)
『駆込み女と駆出し男』(2015年)
など、彼女が出演しているだけで、
質の高い作品になるような気がする。
本作でも実に好い演技をしていて、
それだけで見る価値ありである。
実は、5月30日に公開された『あん』(2015年)も見ているのだが、
こちらでは本作以上の演技を見せていた。
近いうちに『あん』のレビューも書こうと思っているが、
私が今年前半の邦画ベスト3と思っている、
『駆込み女と駆出し男』『あん』『海街diary』の3作すべてに出演しているとは……
いやはや、樹木希林という女優は、とてつもない女優である。


三姉妹の母・佐々木都を演じた大竹しのぶ。
『悼む人』(2015年2月14日公開)での演技が記憶に新しいが、
本作でも、三人の子供を置いて再婚して家を出るという、
ちょっと非情な母親役を、実に上手く演じていた。
子供を置いて出ていったにもかかわらず、
子供たちが暮らしている家を「売らないか?」と持ち掛けるところなど、
大竹しのぶの本領発揮で、(笑)
いつ見ても「巧いな~」と思ってしまう。


海猫食堂の店主・二ノ宮さち子を演じた風吹ジュン。
ここ数年の彼女の出演作は、
『八日目の蝉』(2011年)、
『うさぎドロップ』(2011年)、
『東京家族』(2013年)、
『真夏の方程式』(2013年)、
『そして父になる』(2013年)などを見ているが、
彼女が登場するだけで、なんだかホッとするような雰囲気がある。
本作『海街diary』でも、重要な役を得、好演している。
風吹ジュンの代表作といえば、
やはり報知映画賞主演女優賞を受賞した『コキーユ・貝殻』(1999年)かな。


山猫亭の店主・福田仙一を演じたリリー・フランキー。
このブログで何度も言っているように、
私の大好きな俳優(?)で、彼が出演しているだけで、
その出演作を見たくなる。そして、
『ぐるりのこと。』(2008年)、
『凶悪』(2013年)、
『そして父になる』(2013年)、
『ジャッジ!』(2014年)など、
かれの出演作は傑作が多い。
本作『海街diary』もしかり。
彼の醸し出す雰囲気は、既成の俳優では出せない貴重なものだ。
既成の俳優が持たない顔つき、面構えもイイ。


信用金庫の係長・坂下美海を演じた加瀬亮。
次女・佳乃(長澤まさみ)の上司という役柄で、
脇役ではあり、静かな演技であるのだが、
実に存在感があり、素晴らしかった。
脇役がこんな素晴らしい演技をするのだから、
こういうキャスティングを見ても、
凡作にはなりようがないのである。


この他、
幸が働く病院の小児科医・椎名和也を演じた堤真一、


サッカーチームの監督・井上泰之を演じた鈴木亮平、


すずの同級生・尾崎風太を演じた前田旺志郎などが、
確かな演技で作品を支えていた。


東京に住んでいたとき、
都会の人々にとっては、
鎌倉は特別な空間であることを知った。
その鎌倉の四季を舞台に、
静謐で、心に響く物語が展開する。
これほど質の高い作品には、なかなかめぐりあえないものである。
みなさんも、映画館で、ぜひぜひ。


曽根麻矢子(チェンバロ)コンサート ……佐賀県伊万里市の西念寺にて……

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今年(2018年)から始めている「逢いたい人に逢いに行く」という企画。
これまで、
1月27日、E-girlsのパフォーマーであり女優の石井杏奈(イベント)、
2月11日、女優でボーカリストの薬師丸ひろ子(コンサート)、
2月26日、女優の蒼井優(舞台)、
3月17日、ボーカリストの手嶌葵(コンサート)、
4月7日、女優でボーカリストの薬師丸ひろ子(映画祭)
に逢ってきた。
6回目となる今回は、チェンバロ奏者の曽根麻矢子。


【曽根麻矢子】(そね・まやこ)
桐朋学園大学附属高校ピアノ科卒業。
高校在学中にチェンバロと出会い、
1983年より通奏低音奏者としての活動を開始。
1986年ブルージュ国際チェンバロ・コンクールに入賞。
その後渡欧を重ね、同コンクールの審査員であった故スコット・ロスに指導を受ける。


ロスの夭逝後、
彼の衣鉢を継ぐ奏者としてエラート・レーベルのプロデューサーに認められ、
1991年に同レーベル初の日本人アーティストとしてCDデビューを果たした。


以後、
イスラエル室内オーケストラのツアーや録音に専属チェンバリストとして参加するほか、
フランスおよびイタリア等のフェスティバル参加、
現代舞踊家とのコラボレーションなど国際的に活躍。
日本国内でもリサイタル、室内楽と積極的な音楽活動を展開するとともに、
テレビ、ラジオへの出演、雑誌「DIME」でのエッセイ連載、『いきなりパリジェンヌ』(小学館)の刊行など多才ぶりを見せている。


録音活動も活発に行い、エイベックス・クラシックスよりCDを多数リリースしている。
また、
2003年からの全12回、6年にわたるJ.S.バッハ連続演奏会(浜離宮朝日ホール)に続き、
2010年から2014年まで全12回のF.クープランとラモーのチェンバロ作品全曲演奏会(上野学園エオリアンホール)を行い、いずれも好評を博した。
1996年「第6回出光音楽賞」をチェンバロ奏者として初めて受賞。
1997年飛騨古川音楽大賞奨励賞を受賞。
2011年よりスタートした「チェンバロ・フェスティバルin東京」では芸術監督をつとめている。
上野学園大学特任教授。


チェンバロとは?
鍵盤を用いて弦をプレクトラムで弾いて発音させる楽器で、
撥弦楽器(はつげんがっき)、または鍵盤楽器の一種に分類される。
英語ではハープシコード、フランス語ではクラヴサンという。
狭義にはグランド・ピアノのような翼形の楽器を指すが、
広義には同様の発音機構を持つヴァージナルやスピネット等を含めた撥弦鍵盤楽器を広く指す。
チェンバロはルネサンス音楽やバロック音楽で広く使用されたが、
18世紀後半においてピアノの興隆と共に徐々に音楽演奏の場から姿を消した。


しかし20世紀に復活し、
古楽の歴史考証的な演奏に用いられ、現代音楽やポピュラー音楽でも用いられている。


もともとチェンバロの音色が好きで、
出勤する車の中などでよく聴いているのだが、
日本の奏者では、曽根麻矢子さんのCDを好んで聴いていた。
コンサートも何度か行っており、
CDにサインをしてもらったこともある。


そんな曽根麻矢子さんのコンサートが、
我が家から車で20分ほどの所にある伊万里市の西念寺で行われるという。
そのことを地元紙の記事で知った。

伊万里市大坪町上古賀の西念寺(井手恵住職)で5月19日午後6時から、チェンバロ奏者曽根麻矢子さんのコンサートがある。繊細で豊かな音色に浸りながら心と向き合い、命の大切さなどについて考える。
親鸞聖人の誕生日(5月21日)を祝う降誕会(ごうたんえ)に合わせて毎年、第一線で活躍する音楽家や学識者を招いた催しを開いている。曽根さんは日本を代表するチェンバロ奏者で、バッハの名曲などを披露する。門徒以外でも誰でも入場できる。

「門徒以外でも誰でも入場できる」と書いてあったので、
行ってみようと思った。
西念寺の井手恵住職は、かつて(20数年前)地元紙で、
アレグリーニ・アレグリーノ神父との「往復書簡」を連載されおり、
イタリア人神父と浄土真宗僧侶が語り合うというミスマッチな組み合わせが面白く、
世代、宗教の垣根を超えて、宗教や政治、いじめ、環境問題などを語り合うという内容も興味深かったので、私は毎回熟読していた。
『心のシルクロード : 神父と僧侶の往復書簡』(佐賀新聞社/1995年刊)という本にまとめられ出版されているので、ご存じの方も多いことと思う。


そんな井手恵住職が、今度は、「お寺でチェンバロ演奏」という、これまたミスマッチな面白さのあるコンサートを企画された。
もともとチェンバロの音はそれほど大きくないので、大ホールのような場所は適さない。
案外、お寺のような空間の方が良い音色を生むのではないか……と思った。
で、ワクワクしながら伊万里市にある西念寺へ向かったのだった。


西念寺に到着。




炎は美しい。


本堂の中に入ると、
チェンバロを調律中であった。


調律しているのは、
唐津市浜玉町で工房を構える調律師の中村壮一氏。


このチェンバロは、中村氏自身が1990年に制作したもので、
国内外の一流アーティストの要望を受け、
演奏会でたびたび愛用されているとのこと。


佐賀県にチェンバロは2台しかなく、
その内の1台がこのチェンバロだそうだ。


午後6時が近くなり、
多くの人たちが集まってきた。


午後6時から降誕会のおつとめがあり、
午後6時半からコンサートが始まった。
登場した曽根麻矢子さんはとても若々しく、溌剌としておられた。
ご自身が書かれているブログに、
「生まれ年ワイン」と題し、

ワイン仲間との新年会で、自分の生まれ年ワインをいただきました。
1964年のラフィットロートシルドです。
とても素晴らしい状態でした!
雨に濡れた枯葉の様な香り…
素晴らしい熟成感を堪能させていただきました。

と書かれているので、
1964年(11月11日)生まれの53歳(2018年5月現在)
ぜんぜんそんなお年には見えない。


井手恵住職から、
「自由にお弾き下さい」
と言われていたそうで、
「プログラムなしで弾きたい曲を弾いていきます」
と冒頭に曽根さんは宣言された。(笑)
前半は、
バッハの「アリア」や「プレリュード」、
シャンボニエールの「神達の対話」などを次々に演奏され、
休憩を挟んで、
後半は、全部スカルラッティの曲であった。
曽根さんは、
今年(2018年)7月22日に、
フランスのモンペリエで開催される「スカルラッティ・フェスティバル」に出演することになっており、
そこでは、ソナタ555曲を、30人のチェンバリストで演奏することになっている。
曽根麻矢子さんは、そのうちの17曲を演奏するそうで、
すべて、これまで一度も演奏したことのない曲だとか。
いま、暇を見つけては練習しているとのこと。
後半は、
曽根麻矢子さんが担当するそのスカルラッティの曲を演奏されたのだ。
アンコールは、ソレルの「ファンタンゴ」だった。(井手恵住職からリクエスト)


お寺でのおつとめの後のコンサートということで、
1時間くらいで終わるかなと思っていたら、
2時間を軽く超えるコンサートであった。
井手恵住職からの「自由にお弾き下さい」は、
選曲だけでなく演奏時間も指していたようだ。
曽根麻矢子さんはチェンバロを弾くのが楽しくて仕方ないような感じで、
いつまでも弾いていたいような雰囲気であった。
聴いている我々も幸福感に包まれ、楽しいひとときを過ごすことができた。
今日も「一日の王」になれました~


【動画】(4曲収録・14分間)
4曲目がアンコールで演奏して下さったソレルの「ファンタンゴ」。
3曲目と4曲目のヘアースタイル、ファッション(そして演奏)にも注目!

天山 ……お気に入りのヤマボウシの木に逢いに行ってきたよ……

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ブログ「一日の王」では、
このところ映画レビューばかり続いている。
見たい映画が目白押しなので……ということもあるが、
山歩きの方は“調査登山”が多く、
ブログに書きたくても書けないことが多かったのだ。

今日は、久しぶりに、天山に登ってきた。
天山山頂から七曲峠方面へ向かい、
下りに転じた縦走路に、
私のお気に入りのヤマボウシの木があるのだが、
ヤマボウシの花が満開になると、
彦岳を背景に見るヤマボウシが殊の外美しいのだ。

ミヤマキリシマが終わったこともあるが、
天候がイマイチということもあって、
日曜日だというのに、山頂に人は少なかった。


さっそくお気に入りのヤマボウシの木の方へ向かう。


稜線にも誰もいない。


途中にあるこのヤマボウシの木も美しいが、


私のお気に入りの木ではない。


でも、なかなかイイね~


下りに転じて、しばらく下って行くと、
私の好きなヤマボウシの木が見えてくる。


今日はちょっとガスっているので、
彦岳が見えにくいが、
彦岳を背景にしたこの構図が私のお気に入りだ。


今日はまさに満開だった。
丁度好い時に来ることができた。


この木はあまり大きくはないが、
花が真っ白で本当に美しい。


もう少し下った所まで行って、引き返した。


いつもの場所で、ランチ。


ガスっていたので、背振山地も雲仙も見えず。
天山山頂も見えたり見えなかったり。


本日の「天山南壁」。


本日出逢った花を少しだけ。
天山の麓の祇園川では、今まさに蛍が飛び交っている時期。
ホタルブクロも同じ時期に咲くんだね。




今はキイチゴが食べ放題。


美味しい~


天山にもモミジウリノキがたくさんあった。


カワイイ~


ヤマアジサイが咲き始めていた。


ミズタビラコも群生していた。


本当に美しい。


終わりかけであったが、サイハイランも見ることができた。


バイカイカリソウも、


サバノオも、
まだ咲いていたのでビックリ。


ツクシタツナミソウも終盤を迎えていたが、


ソクシンランは咲き始めたばかりであった。


セイヨウノコギリソウや、


コナスビの花も数が増えていた。


ちょっと驚くような場所に咲いていたクモキリソウ。


逢えて嬉しかった。


ズーム。
いいね~


まだ咲き始めのようで、蕾が多い。


しばらくは楽しめそうだ。


見ているだけで楽しくなる。


今日も「一日の王」になれました~

映画『羊と鋼の森』 ……愚直なまでに真っ直ぐに、丁寧に丁寧に撮られた作品……

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2016年に第13回本屋大賞を受賞した、
宮下奈都の小説『羊と鋼の森』を映画化したものである。
この『羊と鋼の森』のブックレビューを、
私は、ちょうど2年前の2016年06月22日に書いている。
この小説に対する私の感想は、
正直、あまり良いものではなかった。
少し引用してみる。


ピアノの調律に魅せられた一人の青年の話で、
彼が調律師として、人として成長する姿を、
透明感のある文体で綴った小説であった。
『羊と鋼の森』は、こんな文章で始まる。

森の匂いがした。秋の、夜に近い時間の森、風が木々を揺らし、ざわざわと葉の鳴る音がする。夜になりかける時間の、森の匂い。
問題は、近くに森などないことだ。乾いた秋の匂いをかいだのに、薄闇が下りてくる気配まで感じたのに、僕は高校の体育館の隅に立っていた。放課後の、ひとけのない体育館に、ただの案内役の一生徒としてぽつんと立っていた。
目の前に大きな黒いピアノがあった。大きな、黒い、ピアノ、のはずだ。ピアノの蓋が開いていて、そばに男の人が立っていた。何も言えずにいる僕を、その人はちらりと見た。その人が鍵盤をいくつか叩くと、蓋の開いた森から、また木々の揺れる匂いがした。夜が少し進んだ。僕は十七歳だった。

いきなり、ピアノを森に喩える言葉が並び、
なんだか純文学的な書き出しだったので、ちょっと身構えたが、
このような文章が所々に挟まるものの、
全体の文章は平明で、読みやすく、
240頁ほどの小説は、短時間で読み終えることができた。

小説のタイトル『羊と鋼の森』も、
羊:ピアノの弦を叩くハンマーに付いている羊毛を圧縮したフェルト
鋼:ピアノの弦
森:ピアノの材質の木材
であることも判り、
ピアノ、およびピアノの音を、「森」に形象することで、
言葉にしにくい感覚的なものを、読む者にスッと解らせる。
未来に不安を抱く悩み多き若者には、共感される作品だと思った。

で、未来のない悩み無きジジイ(笑)の私の読後感はいうと、
これが困ったことに、「薄い」のだ。
最後まで読み通せたし、
読後感も悪くなかったが、
「それだけ」だった。
「濃いィ~」人生を歩んできた私には、(爆)
なんだか、薄めのスープを飲まされたようにしか感じなかった。
小説に現実味を感じられず、
ファンタジー小説を読まされたような気分になったのだ。
(私はファンタジー小説をあまり好まない)
それは何故なのか?
理由をいくつか挙げてみる。

この物語の時代背景が分らない。
年号はおろか、時代を推測できるような事項は一切書かれていないので、
いつの頃の物語なのかが分らない。
街の描写や、車の車種や、時代が判るような商品名などがまったく表記されていないので、
なんだか夢物語のような印象を受ける。

この物語の場所の印象が希薄。
「生まれて初めて道を出た」という記述があるので、
一応、舞台は北海道ということは判るが、
北海道らしい風景描写や方言等もなく、
舞台となる「場所」にまったくリアリティがない。

人物描写が平板。
登場人物は、ほとんどピアノおよびピアノの音についてしか話さず、
その他のことにはまったく興味がないみたいだ。
多少の葛藤は記述されているものの、
人間としての、様々なものに対する欲望みたいなものが消去されている。

これらのことは、
作者が意図的にやったことなのかどうかは分らないが(たぶんそうだと思うが……)、
これほど「時代」や「場所」や「人物」についての情報がないと、
「ファンタジー小説」、あるいは「大人のための童話」にしか思えなくなってしまう。
たとえば、
いくら比喩にしても、
「森の匂い」という言葉に、まったく「匂い」が感じられない。
「森の匂い」は、
「土の匂い」「樹木の匂い」「草の匂い」「獣の匂い」などの他に、
季節、温度、湿度、風などが複雑に絡み合い、
その森の匂いを創り出す。
場所が違えば、「森の匂い」も違う。
一様ではないのだ。
長年、山歩きをしたり、森で寝たことのある者ならば、
それは誰しも解ること。
作者は、「森の匂い」という言葉ひとつにしても、
安易に使い過ぎているような気がした。
それは、実体験の無さからきているものなのか……
想像力だけではカバーしきれていないように感じた。

ただ、この手の小説が、若者にウケること、
このような小説が、若者に好まれるであろうことも解る。
が、ジジイの私には、やや物足りなかった。


小説に関しては、残念ながら物足りなさを感じてしまったが、
映画化に関しては、希望的な感想を記している。


本屋大賞受賞作ということで、
いつかは映画化されるだろう。
映画になれば、
原作である小説に「時代」や「場所」や「人物」についての情報がなかったとしても、
映像としてそれを鑑賞者に見せなければならない。
小説にはなかった、それら映像化された情報が、
血となり肉となって、
小説とはまったく違った芸術作品として生まれ変わるかもしれない。
情報がないことで、かえって優れた映画になる可能性もある。
傑作映画として登場するかもしれない。
映画『羊と鋼の森』が公開される日を待ちたいと思う。


その映画『羊と鋼の森』が6月8日に公開された。
気になっていた作品だったので、
公開初日の夕刻、仕事帰りに映画館に駆けつけたのだった。



将来の夢を持っていなかった主人公・外村(山﨑賢人)は、
高校で、ピアノ調律師・板鳥(三浦友和)に出会う。


彼が調律したその音に、
生まれ故郷と同じ森の匂いを感じた外村は、
調律の世界に魅せられ、
果てしなく深く遠い森のようなその世界に、足を踏み入れる。


ときに迷いながらも、
先輩調律師・柳(鈴木亮平)や、


ピアノに関わる多くの人に支えられ、
磨かれて、外村は調律師として、人として、逞しく成長していく。
そして、
ピアニストの姉妹、和音(上白石萌音)と、由仁(上白石萌歌)との出会いが、


“才能”に悩む外村の人生を変えることになるのだった……



橋本光二郎監督は、
良い意味でも悪い意味でも、
原作のイメージを壊すことなく、
原作にきわめて忠実に、丁寧に丁寧に撮っていた。
愚直なまでに真っ直ぐに……


北海道の風景が、とにかく美しい。
美しい風景以外は採用しないと宣言しているかのように……
特に、冬の風景には魅せられた。
これほどの映像を文章で書き表すことは難しい。
原作には風景描写がほとんどなかったので、
これほどの風景を想像することはできなかった。
映像が持つ力を感じた。


これら、素晴らしい風景と共に、
そこに登場人物たちを加えたイメージ映像も多用されていた。
森の中の外村(山﨑賢人)、
水の中の和音(上白石萌音)など、
随所にイメージカットが挿入されていて、
それが、やや長い。
原作を読んでいる私でさえそう感じたので、
原作を読んでいない人には、
美しい北海道の風景と、登場人物のイメージカットが多用された、ヒーリング映像のように感じられたかもしれない。


では、原作を読んだときに感じた疑問点はどう処理されていたか?

まずは、“この物語の時代背景”。
原作には、年号はおろか、時代を推測できるような事項は一切書かれていないので、
いつの頃の物語なのかが分らなかったのだが、
映画ではさすがにそうはいかず、
いくつかのヒントで、時代設定は“今”であることが判った。
ずっと調律されていなかったピアノの最終調律が平成15年となっており、
「もう14年も調律されていなかったのか……」
という言葉があったので、
時代設定は、映画が撮影されていた平成29年とされていたようだ。
それと、外村(山﨑賢人)が乗っている車が、
(山崎賢人がCMにも出演している)ダイハツのキャストであったことも、
時代設定が“今”であることを裏付けていた。


次に、“この物語の場所の印象が希薄”という点についてはどうだったか?
原作には、「生まれて初めて道を出た」という記述があるので、
一応、舞台は北海道ということは判ったのだが、
北海道らしい風景描写や方言等もなく、
舞台となる「場所」にまったくリアリティがなかった。
映画では、
「これでもか」というほどに北海道の美しい風景が映し出されるので、
北海道ということは判る。
ただ、これが、あまりに現実離れした美し過ぎる風景ばかりなので、
どこか海外の風景のようでもあり、
北海道の方言もなく、
なんだかファンタジーの世界のようにも感じた。


では、“人物描写が平板”という点についてはどうだったか?
原作では、純粋培養されたような登場人物ばかりで、
俗世間に生きている人間には思えなかったのだが、
映画でもそれは同じだった。
基本的に善人しか登場せず、
それぞれの人物にあまり生活感がなく、浮世離れしていた。


私は、『羊と鋼の森』のブックレビューで、

映画になれば、
原作である小説に「時代」や「場所」や「人物」についての情報がなかったとしても、
映像としてそれを鑑賞者に見せなければならない。
小説にはなかった、それら映像化された情報が、
血となり肉となって、
小説とはまったく違った芸術作品として生まれ変わるかもしれない。
情報がないことで、かえって優れた映画になる可能性もある。
傑作映画として登場するかもしれない。

と書いた。
私の希望は、半分は叶えられ、半分は叶えられなかった。

私は、先程、

橋本光二郎監督は
良い意味でも悪い意味でも、
原作のイメージを壊すことなく、
原作にきわめて忠実に、丁寧に丁寧に撮っていた。

と、もってまわった言い方をしたが、
この「良い意味でも悪い意味でも」には、
〈よくぞ小説の世界を映像で表現した〉
という思いと、
〈もっと冒険しても良かったのでは……〉
という思いがあったからである。


……もっと書きたいことはあるが、出勤前なので、この辺で終わろうと思う。

エンドロールに流れる、久石譲が作曲し、辻井伸行が演奏する曲を聴きながら思ったのは、


〈愚直なまでに真っ直ぐに、丁寧に丁寧に撮られた作品だったな~〉
ということ。
随所で物足りなさは感じるものの、
これほどまでに、“愚直なまでに真っ直ぐな作品”は稀だ。
そういう意味で、見る価値のある作品だと思われる。
映画館で、ぜひぜひ。

映画『妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III』 ……匂うように美しい夏川結衣……

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山田洋次監督作品『東京家族』(2013年1月19日公開)を見て、
私がレビューを書いたのは、
2013年の2月14日であった。
この『東京家族』は、
名匠・小津安二郎監督作品『東京物語』をモチーフにしており(実質的なリメーク作品)、
山田洋次監督の81本目となる作品であると共に、
山田洋次監督の監督50周年の記念すべき作品でもあった。


1953年公開の小津安二郎監督作品『東京物語』は、
私の生まれる前の作品なので、もちろんリアルタイムでは見ていないが、
名画座での小津安二郎特集や、ビデオやDVDなどで何度も見ている。
『東京家族』と『東京物語』は、基本的なストーリーは同じだが、
相違点がいくつかあった。




最も大きな相違点は、『東京家族』では次男が生きていること。
(『東京物語』では戦死したことになっている)
そして、『東京家族』ではその次男(妻夫木聡)が重要な役を果たしていること。
『東京物語』では、戦死した次男の妻・紀子は未亡人という設定で、
終始どこか物悲しい印象を漂わせ、紀子を演じた原節子は神々しいまでに美しい。


一方、『東京家族』の紀子は、舞台美術の仕事をしている次男の恋人として、
活発で明るいキャラクターとして描かれている。
そして、この部分が、批判の対象にもなっていた。
映画評論家の西村雄一郎氏は、かつて、次のように語っていた。

しかしその設定だと父と嫁の最後の対話シーンが盛り上がらない。オリジナルでは、息子は戦死しているが故に、紀子の独身を貫こうとする健気さが、ある種の神々しさを醸し出して、感動に結びついた。そこには小津監督の原節子に対する秘めたる思いさえ感じさせた。
しかし、紀子が昌次との若者コンビで登場すると、紀子の存在が途端に希薄になってしまう。これでは彼女は、世代の違う4組のカップルのうちの、単なるワン・オブ・ゼムではないか。(佐賀新聞)

紀子だけではなく、『東京家族』の登場人物はすべて、
『東京物語』に比べ、明るく朗らかな印象を受ける。
それは、やはり、
人情味あふれる作品を多く手掛けてきた山田洋次監督の特質と言えるだろう。
私はその演出が別に嫌いではなかった。

元々、名作のリメークは、批判の対象になりやすい。
名作であればあるほど、その名作と比較され、批判的に論じられる。
だから多くの映画監督は、名作のリメークには手を出さない。
それでもなお『東京物語』のリメークに踏み切ったのには、
山田洋次監督の小津安二郎に対する大いなるリスペクトと、
自作に対する並々ならぬ自信と意欲があったからだと思われる。
事実、『東京家族』は、
変貌していく現代の「日本の家族」を描いており、
芸術性や完成度においては『東京物語』に劣るけれど、
小津安二郎作品とはまた違った魅力を持っている佳作だと思った。


この映画には、私の好きな2人の女優が出ていた。
夏川結衣と蒼井優。

夏川結衣は、長男の幸一(西村まさ彦)の妻・文子を演じていたが、
山田洋次監督は、この文子を実に魅力的な人物として造形している。


嫌みはまったくなく、穏やかで、優しくて、
私など、原節子の面影を、
紀子(蒼井優)ではなく、文子(夏川結衣)の方に感じたほどだった。


昌次(妻夫木聡)の恋人役の紀子を演じた蒼井優は、
年齢的にも原節子の雰囲気を期待するのは無理だと思っていたが、
『東京物語』の紀子とはまったく違う、
現代的な明るくて朗らかな紀子を巧く演じていた。


現代っ子特有の伸びやかな性格でありながら、
正直で誠実な、感じの良い紀子像は、
蒼井優なればこそ生まれたキャラクターのように感じた。


先程も述べたが、
『東京物語』に比べ、『東京家族』の方は、
すべての登場人物が、それほど嫌な人物として描かれていない。
一人ひとりに、監督の優しい眼差しを感じた。
上京してきた両親を、できるだけ歓待したいという、
優しい心の持ち主として子供たちを描いている。
やむを得ない事情で両親に淋しい思いをさせてしまうが、
それが子供たちの本意でないことは明らか。
だからこそ、映画を見る者に、せつなさが迫ってくる。
私が『東京家族』を「佳作」と言った所以はそこにある。



この『東京家族』と同じキャスト(名前は変えてある)で喜劇映画として撮ったのが、
『家族はつらいよ』シリーズである。
『東京家族』の作品世界を愛していた私は、
その作品世界を壊されるようで、
喜劇『家族はつらいよ』シリーズにはあまり興味がなかった。
『家族はつらいよ』は“熟年離婚”を、
『家族はつらいよ2』は“無縁社会”をテーマにしていたが、
そのテーマにも、
周造(橋爪功)を中心とした物語にも、
あまり食指が動かなかった。
だが、
3作目となる『妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III』のテーマは“主婦への賛歌”で、
そのタイトルは、女性の生き方を描いてきた成瀬巳喜男監督の1935年(昭和10年)の作品『妻よ薔薇のやうに』へのオマージュとなっているとか。
平田家の長男・幸之助(西村まさ彦)の妻・史枝(夏川結衣)を中心とした物語だそうで、
『64 -ロクヨン- 前編・後編』(2016年)以来、夏川結衣をスクリーンで見ていなかったし、
好きな女優・夏川結衣を中心とする物語なら見てみたいと思った。
で、先日、映画館へ足を運んだのだった。



史枝(夏川結衣)は、


夫・幸之助(西村まさ彦)、
育ち盛りの息子ふたりと、
夫の両親の周造(橋爪功)と富子(吉行和子)と暮している三世代家族。


ある日、
家事の合間にうとうとしていた昼下がり、
泥棒に入られ、冷蔵庫に隠しておいたへそくりを盗まれてしまう。
夫から、
「俺の稼いだ金でへそくりをしていたのか!」
と嫌味を言われ、
あまりに気遣いの無い言葉に、
それまでたまっていた不満が爆発した史枝は、家を飛び出してしまう。


一家の主婦が不在となった平田家は大混乱となる。
身体の具合の悪い富子に代わり、
周造が、掃除、洗濯、食事の準備など、慣れない家事に挑戦するが、
それが毎日となると、続くわけがない。


家族揃って史枝の存在のありがたみをつくづく実感する。
緊急事態ということで、
家族会議が開かれ、幸之助が糾弾されるが、
幸之助は逆ギレして、史枝を迎えに行く気配がまったくない。


そこで、数日後、
幸之助の弟・庄太(妻夫木聡)が幸之助を会社から呼び出し、
必死に説得を試みるのだった……


まず、オープニングに驚かされた。
横尾忠則が描いたらしい家の絵が登場し、
それが実写へと移行するのだ。
後で調べてみたら、
映画のポスターを手掛けている横尾忠則が、


本編のオープニングタイトルも担当しているそうで、
そのビビッドでカラフルな色合いとタッチで描かれた絵が動き出す瞬間は、
ゾクッとするほどの快感があった。


映画『東京家族』では、
妻夫木聡(平山昌次 役)は、都内で舞台美術のアシスタントとして働く青年であったが、
この『家族はつらいよ』シリーズ(平田庄太 役)では、
ピアノの調律師をしており、
先日、映画『羊と鋼の森』を見たばかりなので、
感慨深いものがあった。
しかも、世界で活躍するピアニスト・近藤嘉宏との共演もあり、
劇中には、近藤嘉宏がピアノを演奏するシーンもあり、
短い時間ではあるが、彼の奏でる美しい音色を聴くことができる。
嬉しいサプライズであった。


“驚き”ついでに、もうひとつ紹介すると、
史枝(夏川結衣)が働き疲れて、
周造の寝椅子でウトウトするシーンがあるのだが、
寝るときに、スカートの裾をちょっと持ち上げるのだ。
すると、夏川結衣の生足が露わになる。
このシーンが実にエロティックなのだ。
いやらしいエロではなく、
清潔で爽やかなエロティシズムを感じさせる。


そして、“驚き”の極め付きは、
喜劇映画でありながら、感動させられるシーンがあったこと。
それは、
幸之助(西村まさ彦)が史枝(夏川結衣)を迎えに行く気配を見せないため、
幸之助の弟・庄太(妻夫木聡)が、幸之助を会社から呼び出し、
必死に説得を試みるシーン。
このときの庄太の言葉に感動させられたのだ。

「お前は俺にどうしろと言いたいんだ」

「昨日、史枝さんと電話で話をしたんだ」

「お前がかけたのか、それとも向うからかけてきたのか」

「ぼくがかけたんだよ」

「どうしてお前はそんな差し出がましいことをするんだ」

「悪かったと思うけどさ。あのね兄さん、史枝さんに、泥棒が入った日の晩、兄さんと史枝さんとの間にどんなやり取りがあったかをちゃんと聞いたんだよ。聞かなきゃこんな話もできないと思ってさ。……兄さん、間違ってるよ。兄さんの方が悪い」

「間違ってるだと? 何だその偉そうな言い方は。俺のどこが間違ってるって言うんだ」

「兄さんは史枝さんのへそくりは俺が稼いだ金だ、と言ったんだろ。俺が一所懸命働いている時に昼寝なんかしていい身分だ、そういう言い方したんだろ」

「事実じゃないか。あいつが昼寝している頃、俺が香港でどんな苦労をしていたか。営業という仕事がどんなに辛い仕事か、お前や史枝にはわかりゃしないんだ」

「僕だって社会人だよ。兄さんみたいに大きな金額を扱っていないけど営業だってやってる。だから、兄さんの苦労はわかるけど、兄さんはそうやって稼いだ月給で史枝さんや子供たちを食わせてやってると思ってるんだろう? そう言ってるんだろう?」

「ああ、当たり前だ」

「そうじゃないよ。史枝さんに家計のやり繰りや子育てや家事を全て委ねているから、兄さんは一所懸命働くことができる、言わば役割分担なんだろ。史枝さんの20年にわたる子育てや家事労働がどんなに大変なことか。どれほど価値があることか、少しは想像したことがあるのか、兄さんは」

「庄太。要するにお前は俺が史枝に謝れって言いに来たのか」

「そうじゃない」

「悪かった、ごめんなさいって涙流して謝れと」

「そんな上辺のことじゃないよ。兄さんの考え方、兄さんと史枝さんの愛情の問題じゃないか」

「わかったわかった。要するにお前はいつだって史枝の肩を持つんだ。そうだろ。昔からそうだよ。お前たちは仲良かったもんな」

「兄さんと義姉さんが結婚して家に来た頃、義姉さんは匂うように美しくてさ。ああ、この人には幸せになってほしい、ならなきゃいけない。僕は真剣に、心の底からそう思ったんだ。本当にそう思って、それからずっと、今でもそう思ってるよ。そしてそれは、義姉さんを幸せにするのは、兄さんにしかできないことじゃないか。違う? 兄さんは、義姉さんを幸せにすると約束したんだろう? だから結婚したんだろう?」

「考えてみるよ」

「考える暇なんかないよ。今すぐ行けよ」

「どこに」

「決まってるじゃないか、史枝さんに会いにだよ」

「何言ってるんだ、俺はいま仕事中だぞ」

「その営業で鍛えた口先で、妻が倒れて救急車で病院に運ばれましたぐらいのことは言えるでしょう? 誰だって急いで行けと言うよ。後のことだって無事に治りましたって言えばいいじゃないか。ね、頼むよ兄さん。行ってくれよ史枝さんのところへ」

このセリフのやりとりは凄い。
このシーンだけでも、本作を“見る価値はある”と言える。
「義姉さんは匂うように美しくてさ」
という言葉のインパクト。
映画での年齢設定はよく判らないが、
夏川結衣と妻夫木聡の年齢差は12~13歳ほどなので、
史枝が幸之助と結婚した時、
庄太はまだ小学5~6年生か、中学1~2年生だったと思わる。
庄太は、史枝が家に来た時。
実の姉・成子(中嶋朋子)とは全く違った、血のつながらない美しい女性に接し、
「匂うような美しさ」を感じてしまう。
もしかしたら庄太の初恋であったかもしれない。
その庄太にとって、史枝の存在は絶対的なものであった。
そして、史枝は、庄太にとって、絶対に幸せでなければならない存在だったのだ。


「兄さんと義姉さんが結婚して家に来た頃、義姉さんは匂うように美しくてさ。ああ、この人には幸せになってほしい、ならなきゃいけない。僕は真剣に、心の底からそう思ったんだ。本当にそう思って、それからずっと、今でもそう思ってるよ。そしてそれは、義姉さんを幸せにするのは、兄さんにしかできないことじゃないか。違う? 兄さんは、義姉さんを幸せにすると約束したんだろう? だから結婚したんだろう?」

「兄さんが幸せにできないんだったら、僕が幸せにするよ」
とでも言い出しそうな勢いで庄太が言うものだから、
幸之助はその言葉に従わざるを得なくなる。
喜劇映画で、こんな凄いセリフはあまり聞いたことがない。
このシーンがあることで、
この映画は特別な作品になっていると言える。


と、まあ、私の極私的な感動ポイントをいくつか紹介したが、
喜劇なので、笑えるシーンも多い。
本編を見終わった感想としては、
なんだか『男はつらいよ』シリーズを髣髴とさせるシーンが随所にあり、
『男はつらいよ』シリーズ全作品を見ている私としては、懐かしさで一杯になってしまった。

家族から糾弾された幸之助(西村まさ彦)が怒って家を飛び出した後、
追いかけるように飛び出した成子(中嶋朋子)が幸之助を「お兄ちゃん!」と呼ぶシーンや、
幸之助が史枝を迎えに行って帰って来たとき、
どうせ史枝は連れて帰れないと予測して、
「間違っても史枝さんはどうしたんだ、なんて訊いちゃ駄目だぞ」
と周造(橋爪功)が家族全員に言ったのに、
その言い出しっぺの周造自身が真っ先に、
「おい、史枝さんはどうしたんだ、結局、帰ってこないのか」
と訊くシーンなど、
『男はつらいよ』シリーズのまんまと言っていいほどの場面がたくさんあり、
『男はつらいよ』シリーズを一度でも見たことのある人ならば、
懐かしく思い出すのではないかと思われた。


私の場合、
夏川結衣と蒼井優を目当てに行ったので、
美しい二人の女優を大きなスクリーンで見ることができて、
もうそれだけで大満足であった。
しかも感動させられるシーンもあり、
〈見て良かった〉
と思った。


蒼井優に関しては、
彼女が映画のラストで哲学的な言葉を口にし、
驚きの告白をするので、
それは皆さんが映画館に足を運んで確かめてもらいたい。
ぜひぜひ。

「モンベルクラブ・フレンドフェア2018 福岡」 ……仲川希良に逢いたくて……

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今年(2018年)の5月4日、このブログ「一日の王」で、
「YURI MIYATA」 ……登山中に見つけた植物の形をモチーフにしたアクセサリー……
と題して記事を書いた。


そのとき、次のように書き始めている。(全文はコチラから)


モデルをしながら山にも登っているという美しき人がいる。
(近いうちに「逢いたい人に逢いに行く」という企画に登場予定)
この女性のインスタグラムを見ていたら、
アクセサリーの写真と共に、
次のような文章が添えられていた。

素敵だな、森を感じるな、と思いながら
ちょっと私には似合わないかもなぁと横目でチラチラ見るだけだった
@yuri_miyata のアクセサリー

買っちゃった
いっひっひ



植物の形や景色、山道から感じた魅力が制作インスピレーションなんだそう

私の選んだこのイヤリングもね、ナントカって植物の茎のとこをモチーフにしててね
山で撮った写真を見せていただいたんだけど……
えーっと……
……そのナントカを忘れてしまった(2回も聞いたのに.笑)!
細くて力強い線に感じる植物らしさと、結晶みたいにも見えるとこが好き*

軽いから耳のフチにも留められます(写真2枚目)
フタリシズカのブローチも可愛かったなぁ

森を連れて歩きたい方はぜひ🌟



このときの、
「モデルをしながら山にも登っているという美しき人がいる」
というその人こそ、仲川希良であった。


【仲川希良】(モデル、フィールドナビゲーター)
1984年埼玉県生まれ。
子どもの頃から自然の中で過ごすことが好きで、
山登り歴は8年。
アウトドア誌での執筆も行い、
テレビ、ラジオなど幅広いメディアで自らが感じた自然の魅力を伝えている。
5月11日には、
自身の経験を元に、山で役立つノウハウを紹介する書籍『山でお泊まり手帳』を発売。




仲川希良という美しき女性がいることを知ったのは、
「ランドネ」という雑誌であった。


表紙に度々登場していたが、
その“笑顔”に魅了された。
モデルとしての営業用の笑顔ではなく、
真に楽しんでいるような、太陽のような“笑顔”だったのだ。


他の山の雑誌でも度々見かけるようになり、
そこでも、その“笑顔”は特別で、
見る者を元気づけるような素晴らしい“笑顔”であった。
以降、仲川希良のファンとなり、
ブログやインスタグラムなどを見るようになった。


昨年(2017年)の6月にブログで結婚したことを発表し、
7月には結婚式の模様が掲載された。


本人は、結婚式はしないつもりでいたそうだが、
彼女の仲間たちが内緒で企画し、
雪山でのサプライズウェディングとなったとのこと。


そのときのウェディングドレス姿が、びっくりするほど美しかった。


サプライズであった為、
「今日はここで結婚式を挙げます」
と夫が手紙を読んでくれている間も、


用意してくれていた衣装に着替え、結婚式を挙げたときも、
驚きと嬉しさがまぜこぜになって涙が止まらなかったそうだ。


かように素敵な仲川希良という女性を、
機会があったら実際に見てみたいと思った。
その日本一(いや、世界一)の“笑顔”を見てみたいと思った。
そして、その機会が、ついに訪れた。
今年(2018年)6月16日~17日に実施される
「モンベルクラブ・フレンドフェア2018 福岡」で、
トークショーを行うことが決まったのだ。
で、6月16日(土)に、福岡まで逢いに行ったのだった。


「モンベルクラブ・フレンドフェア」は、
東京、大阪、名古屋などで、以前より行われていたイベントであるが、
福岡での開催は今年が初めてであった。
会場である福岡国際センターに到着。




全国のえりすぐりの逸品が集合しているフレンドマーケット、


お買い得商品が目白押しのアウトレット商品販売コーナー、


クライミング体験コーナーなどがあり、
大人も子どもも楽しめるフェアとなっている。


そして、いよいよ仲川希良トークショーが始まった。


モデルさんなので、写真は撮ってはいけないと思い、このときは自粛。
(写真は過去のイベントのもの)


内容は、
彼女が現在取り組んでいる「ジャパンエコトラック」に関するもので、
とても興味深いものであった。


【ジャパンエコトラック】
アウトドア・アクティビティを通じて地域の自然や文化を楽しむ新しい旅のスタイル。
トレッキング、カヤック、自転車といった人力による移動手段で、
日本各地の豊かで多様な自然を体感し、
地域の歴史や文化、人々との交流を楽しみながら、旅をするというもの。
エリアは現在14箇所ある。

仲川希良は、この「ジャパンエコトラック」の旅を体験レポートしており、
モンベルクラブの会報誌『OUTWARD』に記事を連載している。


今回のトークショーでは、
「境港・皆生・大山」
「やんばる本部半島・伊江島」
の2箇所について、実際に体験した出来事などを、楽しく語っていた。
「ジャパンエコトラック」は、“人力”というのが重要なポイントで、
自転車、カヤック、そして自分の足を使って旅をする。
「境港・皆生・大山」では、海から山頂へ、
カヤック、自転車、そして登山で山頂へ到達していたが、
それは、私がやっている「海抜0メートルから登る」シリーズに通じるものがあり、
そういう意味でとても興味深かった。


トークショーの後は、
発刊されたばかりの『山でお泊まり手帳』のサイン会があった。
このとき、気軽に写真撮影にも応じておられたので、
私もサインをしている彼女の姿をパチリ。




私の番になり、
「どちらから来られましたか?」
と訊かれたので、
「佐賀県から来ました」
と答えると、
「近くにオススメの山はありますか?」
と再び訊かれたので、
「天山があります」
と答えた。
どんな山か知りたそうだったので、
「“一日の王”というブログをやっているので、そちらを見て頂ければ、天山登山のレポがたくさん載っています」
と付け加えた。
彼女は、「天山」「一日の王」とメモしていたので、
もしかしたら、このブログを見てくれるかもしれない。


モデルというと、
華奢なイメージがあるが、
仲川希良は、身長が172cmあり、
重いザックもひょいと担いで歩くオトコマエ女子である。
そして、人間国宝級の“笑顔”。
美しい人は“冷たい人”と思われがちだが、
彼女は太陽のように“温かい人”で、“優しい人”であった。
実際に逢って、話して、ますますファンになった。
今日も「一日の王」になれました~

天山 ……ヤマトキソウが咲き始めた稜線で、「一日の王」の愛読者に会ったよ……

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6月17日(日)に、天山に登った。
だが、この山行も、調査が主な目的だったので、
ブログにレポを書くつもりはなかった。
だが、稜線で、ブログ「一日の王」の愛読者と出会った。
「タクさんですか?」
と呼び止められ、
「ブログの山の記事、止めないで下さいよ」
とお願いされてしまった。
なぜそう言われたかというと、
5月27日の記事で、次のように書いたからだった。

最近は、映画レビューや、ブックレビューが多く、
〈山の記事が少ないのではないか……〉
〈タクさんは山に登っているのか……〉
と、思われている方もおられるのではないかと思うが、
今年は例年にも増して山へ行っている。
では、なぜブログにレポがないかと言えば、
「調査登山が多いから……」
と答えるしかない。
極秘に調査しているので、
ブログに書けることがないのだ。
近くの山ばかりなのだが、
マイナールートだったり、ヤブ漕ぎだったり、(笑)
まともな道をあまり歩いていない。
「その山には咲いていない」(とは言っても希少種とは限らない)
と言われている花を探したりしているが、
見つからないことの方が多く、
すると、ブログに書く材料もない。
発見できたとしても、
ブログに書くと、珍花ハンターがやってきて、
すぐに知れ渡り、盗掘されたりしてすぐに消滅してしまう。
だから見つけたとしても、ブログには書けない。
書いていない花々が年々増えていく。
そうすると、ブログをやっている意味がないので、
そろそろブログをやめようかとも考えている。
ブログのやめ時を模索している。
そして、
誰にも知られていない“秘密の花園”で遊ぶ老後を夢想している。(爆)
とは言っても、
映画レビューや、ブックレビューは書き残したいので、
〈山抜きのブログにしようか……〉
〈山のレポは書いても、花抜きにしようか……〉
などと考えている。
今後どうなるかは、まだ分らない。

こんな風に書いたので、
心配して声をかけてくれたのだ。
山の記事を楽しみにしてくれている読者の方もおられることを知り、
〈珍しい花はあまり載せられないけれど、頑張ってみるか……〉
と思った次第。

6月17日(日)は、山頂にも立ったので、
まずは、山頂の写真から。


花の少ない時期ではあるが、
登山者は少なくなかった。




花は少なくても、
天山は、360度の展望が楽しめる。


多良山系の山々は見えていたし、


雲仙もかすかに見ることができた。(見えるかな?)


佐賀平野は、麦秋の田から水田へと変貌を遂げていた。


花はなくても、
この稜線散歩自体が楽しい。


両側の風景を楽しみながら歩くことのできる縦走路は素敵だ。


このヤマボウシの木も、


まだ花を見ることができた。


もっと先へ進み、


私のお気に入りのヤマボウシの木に到着。
まだ花のピークを維持しており、嬉しかった。
先程お会いした読者の方も、
このヤマボウシ越しに見る彦岳の風景を楽しみに登って来たとのことで、
「感激しました」
と、仰っていた。
花の情報はなくとも、
こんな風景に感動して下さる読者もおられるので、
これからも細々と山のレポを書いていこうかなと思った。


もう少し先まで歩き、引き返した。


いつもの場所でランチ。


背振山地方面も素晴らしい眺めであった。


本日の「天山西壁」。(いいね~)


この日の稜線散歩で気づいたことは、
石の囲いがいくつか見受けられたこと。


何を囲ってあったかというと、
モウセンゴケであった。


ここにも、


そして、ここにも。


縦走路にあるモウセンゴケを踏まないように、
誰かが石の囲いを作って下さったようだ。


ヒメハギはまだ頑張っていたし、


ホソバノヤマハハコも順調に育っていた。


そして、ヤマトキソウ。


まだ数は少ないが、数箇所で見ることができた。


嬉しい。


最後に、散歩道の花を少しだけ。
ヤマツツジがまだ咲いていた。


ヤマアジサイは、ピークを迎えつつある。


地味な花だけれど、私の好きな花だ。


ギボウシの花は、


もうすぐ開花。
楽しみだ。


オカトラノオも咲き始めていた。


よく見ると、美しい花だ。


マタタビの花も見ることができた。


いいね~


そして、私のお気に入りの花。


花の部分をズームアップ。
なんて愛らしい花なんだろう。


羊歯植物は、見ているだけで楽しい。


よく見ると、小さな生き物も発見できる。


クモキリソウもまだ咲いて待っていてくれた。


カワイイ。


驚いたことに、サバノオの花をまだ見ることができた。


そして、散歩道でも、ヤマトキソウに出逢うことができた。


しかも、たくさん。


米粒くらいの小さな花だけれど、
見ているだけで楽しくなる。


よく見ると、案外美しい。


ねっ。


今日も「一日の王」になれました~

「大迫半端ないって」

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「大迫半端ないって」とは、
第87回全国高校サッカー選手権大会(2008年12月30日~2009年1月12日)の準々決勝、
鹿児島城西VS滝川第二の試合後に、
滝川第二のDF中西隆裕選手が、
鹿児島城西のFW大迫勇也選手を絶賛した言葉からきている。

「大迫半端ないって」動画・完全版



「大迫半端ないって」


「あいつ半端ないって」


フラッグにもなっている。


Tシャツにもなっている。


この人たちも言っている。(爆)
「大迫半端ないって」


「大迫半端ないって」

映画『空飛ぶタイヤ』……痛快でスカッとする極上の大逆転エンターテインメント……

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池井戸潤の、
『オレたちバブル入行組』
『オレたち花のバブル組』
を原作としたTVドラマ『半沢直樹』がヒットして以降、
池井戸潤の小説を原作としたTVドラマが相次いで制作され、


TBS系日曜劇場では、
『半沢直樹』(2013年7月~9月)原作:『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』
『ルーズヴェルト・ゲーム』(2014年4月~6月)
『下町ロケット』(2015年10月~12月)
『陸王』(2017年10月~12月)

日本テレビ系水曜ドラマでは、
『花咲舞が黙ってない』
第1シリーズ(2014年4月~6月)原作:『不祥事』『銀行総務特命』
第2シリーズ(2015年7月~9月)原作:『銀行仕置人』『銀行狐』

テレビ朝日系金曜ナイトドラマでは、
『民王』(2015年7月~9月)

など、いずれもが、その時間帯での高視聴率をマークしている。
私の友人知人には、
これら池井戸潤作品を原作としたドラマを欠かさず観ている人が多いし、
評判の良さもよく耳にするのだが、
私自身はあまり興味がなかった。
それでも「なぜそんなにウケているのか?」と思い、
時々(主に最終回を)観るようにはしていた。

池井戸潤作品を大雑把に分析すると、

①一般企業が舞台
②銀行員がよく登場する(池井戸潤は元銀行員)
③主人公は熱くストレートな性格
④状況設定として、主人公は理不尽な扱いを受けている
⑤さらに、主人公にいくつもの困難が襲いかかる
⑥登場人物の対立構図がはっきりしており、解り易い
⑦物語が類型的で、基本的に“勧善懲悪”
⑧ストーリー展開が劇画的
⑨感情移入しやすい
⑩スカッとするような成敗シーンがある

など、どの作品も似通っているように思える。
ピンチを乗り越えての逆転劇や下剋上は、
現実社会においては“ファンタジー”なのであるが、
ストレス社会に生きる人々にとっては、
日頃の憂さを晴らしてくれる痛快な物語として受け入れられているのではないかと思われた。

かように池井戸潤作品がTVドラマ界ではもてはやされているのに、
不思議と映画化はなされていなかった。
ここへきて、ようやくと言うべきか、
池井戸潤作品が映画化されることになり、
最初に選ばれたのが、今回紹介する『空飛ぶタイヤ』(6月15日公開)なのである。


トラックの脱輪事故で整備不良を疑われた運送会社社長が、
自社の無実を証明すべく、
製造元の自動車会社がひた隠す不正を暴く闘いに挑む……

というストーリーで、
監督は、『超高速!参勤交代』シリーズなどの本木克英、
主演は、長瀬智也。

本木克英監督の『超高速!参勤交代』シリーズを高評価していた私としては、
『空飛ぶタイヤ』も面白い作品に仕上がっているのではないかと考えて、
公開初日に(仕事の帰りに)映画館へ駆けつけたのだった。



よく晴れた日の午後、
一台のトラックが脱輪事故を起こし、
外れたタイヤが直撃したことにより、一人の主婦が亡くなる。
事故を起こしたトラックの運送会社社長・赤松徳郎(長瀬智也)が、
警察から聞かされたのは、
走行中のトラックからタイヤが突然外れたという耳を疑う事実だった。


事故原因を一方的に整備不良とされ、
「容疑者」と決め付けられた赤松は、
警察からの執拗な追及を受ける。
世間からもバッシングを受け、
取引先からは仕事が来なくなり、
銀行も融資をストップするだけでなく、
借入金の全額返済を求めてきたことから、
倒産寸前の状態に追い込まれてしまう。


納得のいかない赤松は、
自暴自棄になりながらも、
赤松運送の専務・宮代(笹野高史)、
整備士・門田(阿部顕嵐)
妻・史絵(深田恭子)らの支えもあり、


独自の調査を開始する。
そして、車両の構造そのものに欠陥があるのではないかと気づき、
ホープ自動車に再調査を要求する。


一方、ホープ自動車の販売事業部課長である沢田(ディーン・フジオカ)は、
再三にわたる赤松の要求を疎ましく思いながらも、
同僚の小牧(ムロツヨシ)や、杉本(中村蒼)と調査を進めていくうちに、
社内でひた隠しにされる真実の存在を知る。


同じ頃、ホープ銀行の本店営業本部の井崎(高橋一生)は、
週刊潮流の記者・榎本(小池栄子)より、
グループ会社であるホープ自動車について探りを入れられ、
そのずさんな経営計画と、ある噂について疑問を抱く。


それぞれが辿り着いた先にあった真実は、
大企業の“リコール隠し”であった。
過去にも行われていたそれは、二度とあってはならないことだった。
その真実の前に立ちはだかる、ホープ自動車常務取締役・狩野(岸部一徳)。


はたしてそれは、事故なのか事件なのか……
男たちは大企業にどう立ち向かっていくのか……



映画を見終わった感想はというと、
「面白かった!」
ということになる。
「大逆転エンターテインメント」と謳っているので、
結末は判っているのだが、
それでも面白かった。
まさに池井戸潤作品の法則、

①一般企業が舞台
②銀行員がよく登場する(池井戸潤は元銀行員)
③主人公は熱くストレートな性格
④状況設定として、主人公は理不尽な扱いを受けている
⑤さらに、主人公にいくつもの困難が襲いかかる
⑥登場人物の対立構図がはっきりしており、解り易い
⑦物語が類型的で、基本的に“勧善懲悪”
⑧ストーリー展開が劇画的
⑨感情移入しやすい
⑩スカッとするような成敗シーンがある

に則った映画であった。
特に、⑤の「主人公にいくつもの困難が襲いかかる」という部分が秀逸で、
見ている方も、
〈もうダメなんじゃないか……〉
と思ってしまうほどに主人公を追い込む。
それ故に、ラストの「成敗シーン」はスカッとするし、
満足度が高い。
今、「スカッとする」と書いたが、
木下ほうか、津田寛治、笹野高史、岡山天音など、
「痛快TVスカッとジャパン」(フジテレビ系)に出演している俳優がたくさん出ていたし、
深田恭子、佐々木蔵之介、寺脇康文、六角精児など、
本木克英監督の『超高速!参勤交代』シリーズに出演していた俳優も多くキャスティングされていて、
思わずニヤリとさせられた。

原作も映画も、ホープ自動車と社名を変えてあるが、
2002年に発生した三菱自動車製大型トラックの脱輪による死傷事故、
及び、三菱自動車によるリコール隠し事件などを物語の下敷きとしているのは判るし、
巨悪に立ち向かう男たちの覚悟が感じられる作品で、
三菱自動車に勤める社員は映画を見ないだろうなと思いつつも、
三菱自動車の社員にこそ見て欲しい作品だなと思った。

運送会社社長・赤松徳郎を演じた、長瀬智也、
ホープ自動車販売事業部課長・沢田を演じたディーン・フジオカ、
ホープ銀行本店営業本部の井崎を演じた高橋一生。
この主要3人のクールかつ熱い演技が予想以上に素晴らしく、
見応えのある作品になっている。


男ばかりが蠢く映画の中で、
週刊潮流の記者・榎本を演じた小池栄子、


赤松の妻・史絵を演じた深田恭子には華が感じられたし、
存在自体に「ホッ」とさせられ、癒された。


現況、日本映画界は、大きく分けると、
高校生向けのラブストーリーと、
中高年向けの作品に二極化している傾向がある。
その中間の、現役バリバリのサラリーマン世代が観て楽しめる映画が少なかった。
そういう状況の中、
どの世代でも楽しめる本作『空飛ぶタイヤ』が公開された意義は大きい。
若い世代の人たちには、社会という荒波に立ち向かう“覚悟”と“決意”を、
現役バリバリのサラリーマン世代には、仕事に対する“情熱”と“勇気”を、
そして、シニア世代には、“共感”と“歓び”を与えてくれるだろう。
映画館で、ぜひぜひ。

天山(岸川ルート)……夏山のトレーニングも兼ねて標高差1000メートルを登る……

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今年は夏山遠征には行けない可能性が高いのだが、
“万が一”のことを考えて、トレーニングだけはしておこうと思った。
で、いつものように、天山の岸川ルートを登ることにした。

今出川ふるさと公園駐車場へ向かう途中で見た天山(正確には「あめ山」)。


今出川ふるさと公園駐車場に到着。
6:26
軽くストレッチをして、出発。


一番奥に見えるのが天山(正確には「あめ山」)。
まだ遥か遠い。


岸川集落を抜けて、振り返る。
この今出川は、蛍が飛び交う清流だ。


ネムノキの花が満開であった。


ここから左へ。


ゆっくり登って行く。


「九州自然歩道」の道標は草に覆われていた。


驚いたことに、アキノタムラソウに出逢った。


大好きなムラサキニガナは、
朝早くだったので、まだ花が閉じていた。


帰り(復路)に見たら、美しく開花していた。


イイね~


美しい~


テリハアカショウマや、


オオバギボウシも咲いていた。


天山山頂ではまだ咲いていないので、
ここで見ることができてラッキー。


オカトラノオも多く見ることができた。


ここから右へ入って行く。


急登が続くが、


所々にある滝が疲れを忘れさせてくれる。


冬には氷瀑だったよね。


カメラを縦にしてパチリ。


こちらも冬の写真と比較してみる。


第一林道を横切る。


軽快に登って行く。


第二林道を横切る。


雰囲気の好い道だ。


あめ山分岐を通過。
天山にとりつく。


ヤマツツジがまだ咲いていた。


もうすぐ山頂という所で、振り返る。
あめ山の向うに雲海ができている。


いいね~


こちらにも。


天山山頂に到着。


スタート地点の今出川ふるさと公園駐車場から約3時間で到着。


山頂からは、よりはっきりと雲海が見えた。


今日は、稜線散歩というより、
ランチの場所(いつもの場所)へ向かう。


ここで、早めのランチ。


本日の「天山南壁」。


ランチを済ませ、下山のため、再び山頂へ向かう。
途中、バイカイカリソウを発見。


まだ咲いていたとは……


別の場所でも発見。
嬉しい。


ヤマトキソウは1週間前よりも数が増えていた。


花の少ない時期だからか、
日曜日なのに登山者は少なかった。
私は、この後、一気に今出川ふるさと公園駐車場まで下って行った。
約6時間の山歩きであった。
今日も「一日の王」になれました~

映画『ほたるの川のまもりびと』 ……里山を守ろうとする人々を描写した秀作……

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ちょうど7年前の6月23日、
私は、
「九州のマッターホルン」と称されている虚空蔵山(608.5m)に、
海抜0メートルから登った。(コチラを参照)
それまでは、佐賀県側の長野登山口からしか登ったことがなく、
海側の長崎県側からは登ったことがなかった。
海抜0メートルからの山歩きということで、
そのときは、
川棚の海から出発し、木場登山口を経て、虚空蔵山山頂へ。
復路は、川内登山口へ下りて、東彼杵町の海へ至った。


長崎県側から登るのは初めてだったので、
なにもかもが新鮮で、
キョロキョロしながら登っていたのだが、
美しい田園風景の中に、
ある地点から看板が目立つようになった。
その看板には、
「水の底より今の故郷」


「ダム絶対反対」


などと書かれてあり、
〈ここにもダム建設の話があるのか……〉
と思いながら歩いていたのを思い出す。


そして、7年後の今年、
シアターシエマの上映予定の作品をチェックしていたら、
『ほたるの川のまもりびと』という作品が目に留まり、
映画の内容を調べてみて、
それが、あの、虚空蔵山の中腹にある長崎県川棚町川原(こうばる)地区の、
ダム建設問題に翻弄されてきた人々のドキュメンタリーであることを知った。
約半世紀にわたり長崎県と佐世保市が計画する石木ダム事業に、
ノーと言い続けてきた人たちの日常を映し出しているという。
アウトドアブランド「パタゴニア」日本支社長の辻井隆行らがプロデュースを担当し、
CMプランナーとして大手広告代理店に所属する山田英治が監督を務める。


〈これは見ておかなければ……〉
と思った。
シアターシエマでの上映は6月22日(金)~6月28日(木)の1週間だけだったので、
公開2日目の6月23日(土)に見に行ったのだった。



朝、子どもたちが学校に行く、
父と娘がキャッチボールをしている、
季節ごとの農作業、


おばあちゃんたちがおしゃべりをしている。


それは一見、ごく普通の日本の田舎の暮らし。


昔ながらの里山の風景が残る長崎県川棚町川原(こうばる)地区に、
ダム建設の話が持ち上がったのが半世紀ほど前。
この計画は長崎県でもあまり知られていないが、
50年もの長い間、川原(こうばる)地区の住民たちは、このダム計画に翻弄されてきた。


かつて同じ地域に暮らしていた人びとの一部は補償金を手に土地から去っていった。
現在残っている家族は、13世帯。
長い間、苦楽を共にしてきた住民の結束は固く、
54人がまるで一つの家族のようだ。


ダム建設のための工事車両を入れさせまいと、
毎朝、おばちゃんたちは必ずバリケード前に集い、座り込む。


こんなにも住民が抵抗しているのに、進められようとしている石木ダム。
「ただ普通に暮らしたい」
という住民たちのごくあたりまえの思いが、
映像を通じてつづられていく……



映画を見終わって感じたのは、
あの一見穏やかに見える田園風景の中に、
〈これほどまでに厳しい歴史があったのか……〉
ということだった。
「自分たちの暮らしを守る」という、
ぶれることのない住民ひとりひとりの思いが詰まっている作品だなと思った。


石木ダムの計画は、約半世紀前の1962年に持ち上がった。
事業の主体は、長崎県と佐世保市。
ダムの目的は、利水と治水。
利水とは水道事業のことだが、
人口減により水需要は年々減少している。
また、治水の面では、
石木川は、注ぎ込む川棚川の流域面積の9分の1にすぎない。
その川にダムをつくることで、果たして治水に有効なのか?


総工費は538億円。
長崎県民が負担する。
長崎県負担185億円、佐世保市民負担353億円。
うち国庫補助金(=国民の税金)147.5億円。
これだけ大きな負担を負うにもかかわらず、
実は、長崎県民の2人に1人が、石木ダムの計画について、
「よく分らない」
と調査で答えている。
また、ダム建設に反対する人の割合が賛成する人を上回るなど、
客観的に見て、巨額の公共事業の進め方としては、
疑問を呈さざるを得ない。
調査でも、県民の約8割が、県が「十分な説明をしていない」と答えている。


この石木ダム計画については、
著名人も関心を示していて、
ダム建設予定地を訪れ、コンサートもした加藤登紀子は、


「口にするまでもない素晴らしい自然がある。計画から50年以上たって、建設をすることに不条理を感じる」
とコメントし、


同じく、ダム建設予定地を視察し、本作の試写会にも参加した坂本龍一は、


「ネット上の情報だけは伝わらないことも多く、ぜひ多くの人に映画を観てほしい」
と映画に関して話したほか、
「環境資源は有限で、現在の豊かな生活のために未来の資源を奪ってはならない」
という環境問題に関する考えも述べている。


また、映画を見た椎名誠も、
「国家権力の元、強引に迫ってくる妥協のない自然破壊のなかで、おだやかな人間のこころそのままに里山を守ろうとする人々の淡々とした描写が美しい。決していきりたつこともなく、しかし粘り強く手をつなぎ、真剣にたたかう人間の力に感動した」
とコメントしている。


豊かな未来の図というのは、
SF映画で描かれるような巨大都市ではなく、
きっと、
蛍の飛び交うような里山の風景のようなものなのだ。
そういうことを、さりげなく教えてくれる映画であった。


長崎県民はもちろんのこと、
佐賀県民、福岡県民、熊本県民にも、ぜひ見てもらいたい作品である。


ダム建設問題は、全国各地にあり、
決して他人事ではなく、
いずれ何らかの形で己の身に降りかかってくる問題である。
映画『ほたるの川のまもりびと』は、
九州以外では、
(東京)ユーロスペース 2018年7月7日(土)〜
(神奈川)ジャック&ベティ 2018年7月28日(土)~
を皮切りに、全国でも公開予定である。
機会がありましたら、ぜひぜひ。


エンドロールに「川原(こうばる)のうた」が流れるのだが、


最後の最後、
ちょっと感動的なシーンが付け加えられている。
館内が明るくなるまでは席を立たないようにね。

鬼ノ鼻山 ……アキノキリンソウや白花のママコナなどが目を楽しませてくれた……

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6月27日(水)
天気予報も芳しくなく、
午後から用事もあったので、
裏山である鬼ノ鼻山に登ることにした。
車で山頂直下まで行ける山であるが、
自宅から登山靴を履いて歩き出せば、2時間ほどかかる。
往復4時間。
少しはトレーニングになるだろう。
そう考えて、
午前6時に家を出た。
“家の玄関が登山口”の山があるなんて、
なんて私は幸せなんだろう。

水田に映る空と雲。
こんな風景が大好きだ。


“天使の梯子”も見ることができた。


ゆっくり歩いて行く。


1時間ほど歩くと、天ヶ瀬ダムが見えてきた。


長い階段を前に、
〈一度も休まずに登り切ろう〉
と考える。


一度も休まずに、2分ほどで登り切ることができた。


たくさんいた水鳥たちは、もういなかった。


しばらく登って、ダム湖を眺める。


鬼ノ鼻山の山頂近くは、切り拓かれて、
太陽光発電のソーラーパネルが張り巡らされている。


上から見ると、こんな感じ。
最近の里山では、どこも同じ現象が起きているような気がする。


ここからが本格的な登山道となる。(距離は短い)


「岩場道」コースを選択。
「岩場道」とあるが、岩場はほとんどないに等しい。(笑)


林を抜けて、


第一展望所へ。
だが、夏草に覆われ、
木々も葉が生い茂り、
展望は甚だ良くなかった。


鬼の展望台へ向かう。


鬼の展望台に到着。


八幡岳と女山(船山)、


それに、作礼山はよく見えたが、


天山は雲に覆われてまったく見えなかった。


一旦下り、
登り返す。


鬼ノ鼻山山頂(435m)に到着。


山頂よりも“鬼のテラス”の方が眺めがイイので、
“鬼のテラス”へ移動する。


“鬼のテラス”に到着。


水田になってしまった白石平野の眺めが素晴らしい。
蛇行する六角川がアクセントになっている。


さらに縦走路を歩くと、


“みはらしの丘”に到着する。
ここは最近、南側の木々が伐採されて、
格段に眺めが良くなった。
ベンチも設置されていた。


ここに座って、
今日出逢った花々を思い出してみた。


麓では、ヤブカンゾウに出逢った。
花の少ない時期なので、橙赤色の花がひときわ目立つ。


カンゾウ(萱草)の意味は、
この美しい花を見ていると物も忘れると言う故事からの漢名で、
忘れ草とも言う。


山頂が近くなると、
オカトラノオや、


ウツボグサを多く見ることができた。


嬉しかったには、
鬼ノ鼻山でも大好きなムラサキニガナに出逢えたこと。


いいね~


縦走路は、“ママコナの小径”と化していた。


もともとママコナの多い山だが、
今年は特に多いような気がする。


白花の蕾を見つけた。
なんだか、ギンランのよう。


白花を探して歩く。
開花した白花を見つけた。
美しい。


こちらにもあった。
案外たくさん見つかる。


ママコナと、白花のママコナのコラボ。


ママコナと、白花のママコナのハーフも見つけることができた。


なんと、
アキノタムラソウや、


アキノキリンソウにも逢うことができた。


珍しい花ではないけれど、
この時期に逢えるのは嬉しい。
今日も「一日の王」になれました~

映画『焼肉ドラゴン』 ……『この世界の片隅に』に欠けていたものがここに……

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鄭義信(作・演出)による舞台『焼肉ドラゴン』は、
日本の新国立劇場と韓国の芸術の殿堂によるコラボレーション作品であり、
2008年に両劇場で上演された後、(韓国では梁正雄の演出)
2011年、2016年に再演されている。




2008年、初日の幕が開けた後、
瞬く間にその口コミが広がり、
チケットは争奪戦になり、
ソウルでは、感極まった観客の一人が過呼吸になり、
救急車で運ばれるという事態に……
朝日舞台芸術賞グランプリ、読売演劇大賞及び最優秀作品賞など、
数々の演劇賞を受賞したその『焼肉ドラゴン』が、
ついに映画化された。
監督は、舞台『焼肉ドラゴン』の生みの親である鄭義信。


【鄭義信】
1957年7月11日生まれ。兵庫県姫路市出身。
1993年に『ザ・寺山』で第38回岸田國士戯曲賞を受賞。
その一方、映画に進出し、
同年『月はどっちに出ている』の脚本で、
毎日映画コンクール脚本賞、キネマ旬報脚本賞などを受賞。
1998年には、『愛を乞うひと』で、
キネマ旬報脚本賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第一回菊島隆三賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞など数々の賞を受賞した。
『焼肉ドラゴン』では、
第8回朝日舞台芸術賞 グランプリ、第12回鶴屋南北戯曲賞、第16回読売演劇大賞 大賞・最優秀作品賞、第59回芸術選奨 文部科学大臣賞を受賞。
韓国演劇評論家協会の選ぶ2008年、今年の演劇ベスト3 。
韓国演劇協会が選ぶ 今年の演劇ベスト7。など、数々の演劇賞を総なめにした。
近年では『パーマ屋スミレ』『僕に炎の戦車を』『アジア温泉』『しゃばけ』『さらば八月の大地』『すべての四月のために』『密やかな結晶』『赤道の下のマクベス』と話題作を生み出している。
2014年春の紫綬褒章受賞。

演劇界では、一流の演出家で、
映画界でも、一流の脚本家である鄭義信が、
“還暦の新人監督”として、初監督に挑戦したのだという。


私の好きな女優である真木よう子、井上真央、桜庭ななみや
私が好感を抱いている大泉洋も出演している。
〈見たい〉
と思った。
で、公開されてすぐに、
映画館に駆けつけたのだった。



昭和44年(1969年)から、
万国博覧会が催された昭和45年(1970)へ。
高度経済成長に浮かれる時代の片隅。


関西の地方都市の一角で、
ちいさな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む亭主・龍吉(キム・サンホ)と、


妻・英順(イ・ジョンウン)は、


静花(真木よう子)、梨花(井上真央)、美花(桜庭ななみ)の三姉妹と、


一人息子・時生(大江晋平)の6人暮らし。


失くした故郷、
戦争で奪われた左腕。
つらい過去は決して消えないけれど、
「たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる」
それが龍吉のいつもの口癖だった。
そして店の中は、
静花の幼馴染・哲男(大泉洋)など、
騒がしい常連客たちでいつも賑わい。


ささいなことで、泣いたり笑ったり。
そんな何が起きても強い絆で結ばれた「焼肉ドラゴン」にも、
次第に時代の波が押し寄せてくるのだった……



1970年代には、まだ、
在日コリアンの人々が肩寄せ合って暮らす場所が全国各地にあった。
私が育った佐世保にもあったし、
映画の時代設定である1970年代、
私は中学生から高校生になる時期で、(映画だと時生の世代)
それらのことはとてもよく憶えている。
だが、時代と共にそれら集落は立ち退かされたりして減少し、
人々の記憶からも消え去ってしまった。
鄭義信監督によると、
そんな場所や人を記録したいという想いから始まったのが、
『焼肉ドラゴン』であるという。
私と鄭義信監督とはほぼ同年代であるし、
時代を共有しているので、共感できる部分が多く、
とても面白く見ることができた。



長女・静花を演じた真木よう子。


在日コリアンの役といえば、
『パッチギ!』(2005年)でのチョン・ガンジャ役を思い出すが、


このときは、喧嘩の強いガラの悪い役であったが、
『焼肉ドラゴン』では、足の悪い、昔の思い出を引きずっているような、ちょっとナイーブな長女・静花を巧く演じていた。



次女・梨花を演じた井上真央。


ビックリさせられたのは、彼女のキスシーン。
これが彼女らしからぬ濃厚なものであったのだ。

井上さんのパブリック・イメージとは違うと思いつつも「ここは野獣のように積極的に」とお願いしたところ、体当たりで演じて下さった。尚且つ、井上さんらしさもちゃんと映っているんです。その女優魂に敬服しました。

と、鄭義信監督は語っていたが、


このキスシーンを見るだけでも、この映画を“見る価値あり”だ。
私の好きな西川美和監督も、

井上真央さんがキスをするカットは観ながら喉元が鳴りそうになりました。
山崎カメラマンの撮る画は、こういうところで異様な熱量を発揮するので、恐ろしいです。

とコメントしている。



三女・美花を演じた桜庭ななみ。


『最後の忠臣蔵』(2010年)を見て、
……桜庭ななみの比類無き美しさが傑作を生んだ……
とのタイトルでレビューを書いて以来、(コチラを参照)
ずっと気になる女優であったのだが、
私の中では清純なイメージが出来上がっていたので、
『焼肉ドラゴン』での奔放な三女・美花役はちょっと驚きであった。
長谷川(大谷亮平)とのキスシーンあり、
美根子(根岸季衣)との乱闘シーンありで、
私が抱いていた清純なイメージは打ち壊されてしまった。(笑)

桜庭ななみさんはとにかくフレッシュ。経験値が高いとは言えないけれど、撮影が進むほど尻上がりに良くなっていき、ラストの、恋人・長谷川の妻役である根岸季衣さんとの乱闘シーンは一発OKにしてくれました。若い方の伸びしろはやはりスゴい。

と、鄭義信監督は語っていたが、
この役を経たことで、女優としてさらに飛躍していくことだろう。



静花の幼馴染・哲男を演じた大泉洋。


舞台『焼肉ドラゴン』の2011年の再演時に、
(他の会場ではチケットが取れなかったので)北九州まで舞台を観に行って、ボロ泣きし、   
純粋に作品のファンだったとのことで、
映画のオファーがきたときは、正直「恐かった」そうだ。
責任重大だし、
クオリティを下げてはいけないというプレッシャーを感じたという。
静花(真木よう子)の幼なじみで、
ずっと静花に思いを寄せているという役で、


コミカルな面を持ちながらも、
一本気で猪突猛進な性格も併せ持つという難役を好演しており、
『恋は雨上がりのように』での店長役を見たばかりであるが、
これまでの大泉洋とは違った“顔”を見ることができて嬉しかった。



映画を見終わって感じたのは、
〈あの『この世界の片隅に』に欠けていたものがここにある……〉
ということだった。
私が書いた『この世界の片隅に』のレビューは、
今でもアクセスが多く、最も読まれているレビューのひとつであるのだが、
そこで、私は、こう指摘している。

『この世界の片隅に』は、
実際は、
「この日本の片隅に」であり、
「この広島の片隅に」であったと思う。
そして、すずのような温厚で善良な国民が、戦争を支えていたという事実。
恐ろしいのは、こんな穏やかな日常が、戦争と直結しているということなのだ。
物語は、すずの視点で進むので、
その恐ろしさが見る者に伝わってこないし、
「Yahoo!映画」のユーザーレビューにあった、
「普通というしあわせがここに描かれている」
などといった呑気な感想が生まれる要因にもなっている。
勿論、戦争の悲惨さも描かれており、
食糧難、
そして、空襲や原爆が、登場人物たちを苦しめる。
亡くなる人もいるし、
すずも片腕を失う。
だが、いずれも、被害者としての日本人の描き方だし、
同じ広島の地に住んでいた(抑圧されていた)他国の人々のことはまったく描かれていない。
(全文はコチラから)

この描かれていなかった「(抑圧されていた)他国の人々のこと」のひとつが、
(時代は違うが)まさに『焼肉ドラゴン』であったように感じた。
『この世界の片隅に』のすずは、落ちてきた時限爆弾で片腕を失うが、
「焼肉ドラゴン」を営む龍吉(キム・サンホ)も、
日本兵として戦争に行き、片腕を失う。
それでも日本を恨むことなく、
日本の社会に溶け込もうと努力し、
息子・時生(大江晋平)にも日本の教育を受けさせようとする。
だが、日本社会は、そんな龍吉や時生を差別し、拒絶する。
後半に、龍吉による3分ほどのロングテイクシーンがある。
そこで語られる言葉に、見る者は涙を禁じ得ない。

そのワンシーンを6時間にわたって撮影したのですが、終わった瞬間、撮影監督をはじめ、スタッフさんたちとも抱きしめながら喚声を上げていました。あの瞬間は、俳優として最高の瞬間であり、永遠に忘れられない瞬間。この場を借りてすべての方々にもう一度深い感謝の気持ちを伝えたいです。この映画の中には人間の生と、涙と、感動があります。必ず見に来てほしい。感動と面白さを必ず約束します。

と、龍吉を演じたキム・サンホは語る。
この3分間の龍吉の言葉の中に、
小さな焼肉屋の、大きな歴史があり、
関西の“片隅”で生きてきた小さな一人の人間の、壮大な物語がある。
『この世界の片隅に』に感動した人にこそ、
ぜひ本作を見てもらいたいと思う所以である。


この映画には、様々な人がコメントを寄せている。
そのほとんどが、私の好きな監督や作家であることが嬉しい。

『繕い裁つ人』『幼な子われらに生まれ』の三島有紀子監督。


『フラガール』『悪人』『怒り』の李相日監督。


『ゆれる』『夢売るふたり』『永い言い訳』の西川美和監督。


『妊娠カレンダー』『博士の愛した数式』の作家・小川洋子。


『ホテルローヤル』『起終点駅(ターミナル)』の作家・桜木紫乃。


そして、キャスター・堀尾正明の最後の言葉に共感する。
「この国に住む人は観る義務さえあると思う」



70年代の時代の記憶、
人々のぬくもりが鮮明に蘇り、
明日を生きるエネルギーで溢れる人生讃歌『焼肉ドラゴン』。
映画館で、ぜひぜひ。

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