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映画『羊の木』 ……吉田大八監督が寂れた港町を舞台に描いた文学的ユートピア……

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吉田大八監督作品である。


これまで、
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007年)
『クヒオ大佐』(2009年)
『パーマネント野ばら』(2010年)
『桐島、部活やめるってよ』(2012年)
『紙の月』(2014年)
『美しい星』(2017年)
など、数は少ないけれど、
優れた作品を創り続けている監督である。
吉田大八監督の新作が公開されたなら、
映画ファンならば、
まずはさておいても見ておかなければならないだろう。
この『羊の木』には、
私の好きな松田龍平、田中泯、木村文乃、市川実日子、優香、安藤玉恵なども出演している。
寒波が襲来した日の夜、
(そんな日は観客は少ないだろうと)
会社の帰りにワクワクしながら映画館へ向かったのだった。



寂れた港町・魚深(うおぶか)に、
それぞれ移住して来た6人の男女。
福元宏喜(水澤紳吾)
太田理江子(優香)
栗本清美(市川実日子)
大野克美(田中泯)
杉山勝志(北村一輝)
宮腰一郎(松田龍平)


彼らの受け入れを担当することになった市役所職員・月末一(錦戸亮)は、
この6人の移住が、国の極秘プロジェクトであることを知る。
過疎問題を解決するために、町が身元引受人となって、元受刑者を受け入れたというのだ。
月末や町の住人、そして6人にもそれぞれの経歴は明かされなかったが、
やがて月末は、6人全員が元殺人犯だという事実を知ってしまう。


理髪店に勤務する福元宏喜(水澤紳吾)
殺人(懲役7年)


介護センターに勤務する太田理江子(優香)
殺人(懲役7年)


清掃員として勤務する栗本清美(市川実日子)
殺人(懲役6年)


クリーニング店に勤務する大野克美(田中泯)
殺人(懲役18年)


釣り船屋に勤務する杉山勝志(北村一輝)
傷害致死(懲役8年)


宅配業者として勤務する宮腰一郎(松田龍平)
傷害致死(懲役1年6ヶ月)


月末が高校時代に思いを寄せていた石田文(木村文乃)が帰郷してきて、


受刑者の一人、宮脇と付き合い出したことにより、


月末の心にも、魚深の町にも、
不穏な空気が漂い始める。
そして、港で起きた死亡事故をきっかけに、
殺人歴がある犯罪者と、
かれらを受け入れた町の住民との間に、
少しずつ狂いが生じていく……



山上たつひこといがらしみきおによる、
第18回文化庁メディア芸術祭優秀賞(マンガ部門)に輝いた問題作を、
アレンジを加え、吉田大八監督が実写映画化したもので、
移住した6人の(殺人歴のある)元受刑者のキャラが立っており、
平凡な魚深市役所職員・月末との対比が絶妙で、
2時間6分、面白く見ることができた。

この映画は、
最初から最後まで、不穏な空気に覆われている。
仮釈放された殺人犯が6人もやってくるのだ。
それを知っているのは、市役所の一部の人間だけで、
町の住民は知らない。
だが、6人の醸し出す雰囲気は尋常ではない。
次第に嫌な空気が漂いはじめ、
町民の間にもじわじわと不穏さが染みわたっていく。
6人の受け入れを担当させられた月末も、事あるごとに、
「信じるか?」「疑うか?」
の局面に立たされる。


考えてみるに、
ただ知らないだけで、
元犯罪者は、私たちの住む町に、当然のことながらいるだろうし、
日々、日常に溶け込んで生活しているに違いない。
その人の過去を知ってしまったとき、どういう行動をするのか?
映画を見ている我々も、いつ月末と同じ局面に立たされるか分らないのだ。
映画の中の物語としてだけでなく、
これから起こりうる問題として、
観客はちょっとドキドキしながらこの映画を見ることになる。

私は、原作は未読であるが、
この『羊の木』の舞台は、寂れた港町という設定で、
閉じられた世界の中の、きわめて文学的な、ある種のユートピアではないかと考えた。
とても魅力的な空間だったからだ。
世間から隔絶し、閉じている世界は、
その内側がいかに過酷であろうとも、とても甘美な空間だ。
太宰治は、『パンドラの匣』の人里離れた健康道場で、
坂口安吾は、『黒谷村』などで田舎の村を舞台に、
田中英光は、『オリンポスの果実』で船の中を舞台に、
ウィリアム・ゴールディングは『蠅の王』で南海の孤島で、
イエールジ・コジンスキーは『異端の鳥』で異国の村々で、
大江健三郎は『芽むしり仔撃ち』で山奥の村で、
文学的ユートピアを構築した。
『羊の木』もまた、寂れた港町で、ユートピアを創り上げたと言える。
いや、『羊の木』の場合は、甘美なる“ディストピア”と表現すべきかもしれないが……



宅配業者として勤務する宮腰一郎を演じた松田龍平。


その存在感からして不穏で、(笑)
だからこそ、これまで、様々な役で我々を驚かせてくれた。
昨年も『散歩する侵略者』((2017年9月9日公開)での演技は素晴らしかったし、
本作でも、不気味さではピカイチであった。
市役所職員・月末一を演じた錦戸亮が“表”の主役とすれば、
“裏”の主役は、間違いなく松田龍平であろう。
映画の中盤から終盤にかけては、まさに独壇場であった。



介護センターに勤務する太田理江子を演じた優香。


「吉田大八監督、俺の優香に何させるんだ!」
と思わず叫びたくなるほど、本作での優香はエロかった。(コラコラ)
(北見敏之さん、役得です!)


優香本人は、
「普段、セクシーさとかけはなれているので、エロかったね~って言われるととってもうれしいです」
と語っていたが、
30代後半となった彼女の、
役の幅を広げることのできた今回の太田理江子役であったと思う。
今後の活躍が益々楽しみになってきた。



クリーニング店に勤務する大野克美を演じた田中泯。


元ヤクザの役ということで、
その目の鋭さは超一級であった。
言葉は発さなくても、その存在感で相手を圧倒する。
だが、雇人であるクリーニング店主・内藤朝子(安藤玉恵)の前では、
優しい表情を見せる。
私の好きな安藤玉恵も、ここで実に好い演技をしている。



釣り船屋に勤務する杉山勝志を演じた北村一輝。


見るからに悪いことをしそうな顔をしているが、(褒めています)
本作でも、物語の発火点の役割を果たしている。
彼がいなかったら、『羊の木』という物語は動き出さないし、
彼がいたことで、この映画は面白くなっている。
先日見た『8年越しの花嫁 奇跡の実話』とは真逆の役柄だが、
話題作に立て続けに出演しているということは、
多くの監督に愛されているからであろう。
すぐに公開が始まる、
『今夜、ロマンス劇場で』(2018年2月10日公開)
『去年の冬、きみと別れ』(2018年3月10日公開)
にも出演しているので、こちらも楽しみ。



理髪店に勤務する福元宏喜を演じた水澤紳吾。


『SR サイタマノラッパー』など、
入江悠監督作品の常連俳優という印象であるが、
最近では、
李相日監督作品『怒り』(2016年)や、
三島有紀子監督作品『幼な子われらに生まれ』(2017年)などにも出演しており、
いろんな作品でよく目にするようになってきた。
本作でも重要な役を得ての出演で、
地味ながらドキッとさせる演技で、観客を魅了した。
特に、酒を呑んで暴れるシーン、月末の髭剃りをするシーンは秀逸で、
(良い意味で)ヒヤヒヤ、ハラハラさせられた。



清掃員として勤務する栗本清美を演じた市川実日子。


一昨年(2016年)あたりから映画出演が急に増えて、
『ミュージアム』(2016年)
『シン・ゴジラ』(2016年)
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017年)
『三度目の殺人』(2017年)
『ナラタージュ』(2017年)
『DESTINY 鎌倉ものがたり』(2017年)
など、傑作、話題作でよく見かけるようになった。
しかも、印象に残る演技で、
一度見ると、忘れられなくなる。
本作『羊の木』では、セリフがほとんど無く、
表情や動きだけで表現するシーンが多かったが、
『羊の木』というタイトルに関わる重要な役であったが、
その役目を十分に果たしていた。



清掃員の栗本清美が、
浜辺の清掃をしているとき、
浜辺に流れ着いた缶のフタを拾う。
そのフタには、羊の木が描かれていた。


【羊の木】とは、
西洋につたわる伝説の植物で、
「東タタール旅行記」には、次のように記されているという。

その種子やがて芽吹き タタールの子羊となる
羊にして植物
その血 蜜のように甘く
その肉 魚のように柔らかく
狼のみ それを貪る

中世の時代、西欧では、
「東方には羊のなる木がある」
と信じられていたという。
当時、西欧では「木綿」の存在が知られておらず、
交易でもたらされる「綿花」を見て、
「羊の木」の存在を想像したようだ。

羊の毛は、刈っても、また生えてくる。
何度刈っても、また生えてくる。
だから、「羊の木」は“再生”を意味しているのかもしれない。
究極の犯罪・殺人を犯した者が、
はたして一般社会で“再び”普通に生活できるのか?

栗本清美は、浜辺で拾った「羊の木」が描かれた缶のフタを持ち帰り、
アパートの戸に掛ける。
栗本清美はいろんな生き物の死骸を土に埋め、
その上に土饅頭を作っている。
その盛られた土饅頭から、ラスト、植物の芽が顔を出す。
それが、“再生”の象徴のようで、ちょっと救われた。
衝撃的なシーンも多いが、
ラストには希望がほの見えた作品であった。


エンドロールに流れる主題歌は、
ボブ・ディランの楽曲をオーストラリアの鬼才ニック・ケイブがカバーした、
「DEATH IS NOT THE END」
これがまたシブい。
映画館で、ぜひぜひ。

映画『祈りの幕が下りる時』 ……『砂の器』へのオマージュを感じさせる佳作……

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公開日(2018年1月27日)に見た映画なのだが、
レビューを書くのが遅れてしまった。
映画を見た印象もそれほど悪くなかったのだが、
本作以降に見た映画のレビューを先に書いているうちに、
なんだか書くのが億劫になってしまっていた。
で、出勤前に、ちょっと書いていこうかという気になった。



東京都葛飾区小菅のアパートで女性の絞殺死体が発見される。
被害者は滋賀県在住の押谷道子。
殺害現場となったアパートの住人・越川睦夫も行方不明になっていた。
やがて捜査線上に浮かびあがる美しき舞台演出家・浅居博美(松嶋菜々子)。


しかし彼女には確かなアリバイがあり、捜査は進展しない。


松宮脩平(溝端淳平)は捜査を進めるうちに、
現場の遺留品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることを発見する。




その事実を知った加賀恭一郎(阿部寛)は激しく動揺する。


それは失踪した加賀の母(伊藤蘭)に繋がっていた……



東野圭吾の人気ミステリー小説を映像化した「新参者」シリーズは、
これまで、
2010年に放送された連続ドラマ「新参者」、
2本のスペシャルドラマ、
映画『麒麟の翼 劇場版・新参者』と続いているが、
『祈りの幕が下りる時』は、このシリーズの完結編となる。


主人公の刑事・加賀恭一郎の、父との確執、母の失踪など、
これまで明かされることがなかった加賀自身の謎が明らかとなる。


前作『麒麟の翼 劇場版・新参者』も映画館で見ているのだが、
このブログにレビューは書いていない。
あまり感心しなかったからだ。
殺人の動機が甘く、
レビューを書いたら批判的なものになってしまうと判断したことに由る。

この『祈りの幕が下りる時』も、
〈そんなことで人を殺すかな?〉
という疑問が「なきにしもあらず」なのだが、
全体的な雰囲気が名作『砂の器』に似ており、
なんだか懐かしく見ているうちに、
〈まあいいか……〉
と思ってしまった。(笑)
ちなみに、「号泣必至」だそうだが、涙は出なかった。
スミマセン。(って、なんで謝るんだ)

原作は未読なので、原作もそうなっているのかは分らないが、
映画『祈りの幕が下りる時』は、『砂の器』に酷似していた。
日時、場所など、各シーンの状況を字幕スーパーで表現していることや、
親子の因縁話であること。
そして、ラストのクライマックス、
『砂の器』は演奏会であったが、
『祈りの幕が下りる時』は演劇の舞台で、
音楽家と演出家、男と女の違いはあるが、
『砂の器』を見たことのある人なら、きっと思い出さずにはおられないだろう。

これは、監督である福澤克雄の影響も少なからずあるだろう。
TVドラマ『半沢直樹』や『陸王』などの演出を務めたことで有名だが、
過去に、中居正広が主演したTVドラマ『砂の器』も演出しているからだ。
幼少時代の浅居博美と父親(小日向文世)が、海辺を彷徨うシーンは、


映画『砂の器』のあの名シーンを意識したものであることは明白であろう。


ただ、かの名作『砂の器』とは格調が違う。


すべて点で『祈りの幕が下りる時』の方が劣っている。
まあ、比べること自体が無謀で、失礼なことなのだが、
東野圭吾と福澤克雄監督からの『砂の器』へのオマージュと考えれば、
納得できる一作と言える。


舞台演出家・浅居博美を演じた松嶋菜々子や、


看護師・金森登紀子を演じた田中麗奈が美しく、


加賀の母が住んでいたアパートの大家・宮本康代を演じた烏丸せつこや、
浅居博美の母・浅居厚子を演じたキムラ緑子の演技も見事だ。


「新参者」シリーズのファンならずとも楽しめること間違いない。
映画館で、ぜひぜひ。

海抜0メートルから登る「六甲山」(最高峰) ……魚屋道(ととやみち)を歩いて……

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関西方面へ行く機会があったら、
六甲山の魚屋道(ととやみち)を歩いてみたいと、かねてより思っていた。

魚屋道とは?

江戸初期から、
灘地方と有馬を結ぶ東六甲最古の山越え交通路で、
当時の絵地図では、
森から山に登り、
蛙岩、山の神、風吹岩、東お多福山、本庄橋、一軒茶屋、射場山山腹、有馬のルートを通り、
「六甲越え」と呼ばれていた。
幕府が、灘から有馬への正規の街道を、
西宮、宝塚、船坂、有馬の線に定めた後も、
遠回りを嫌った人々は、この魚屋道を利用した。
そこで、街道沿いの西宮や生瀬などの宿場の商人は、
これを「抜け荷の道」と称して、通行禁止を大阪奉行所へ訴え、
しばしば紛争が生じた。
文化3年(1806年)に、灘本庄と有馬の人々がひそかに道の大修理をしている。
深江浜の魚は、大正時代まで、ここから有馬に運ばれていた。

で、やっとその機会がおとずれた。
関西に用事ができたのだ。
この機会を逃す手はない。
絶対、魚屋道を歩くのだ。(笑)
この魚屋道には、
海に近い深江駅の近くに、起点となる標石がある。
ここから歩き始めるのが普通であるが、
私は、どうせなら、海抜0メートルから歩きたいと思った。(コラコラ)

2018年2月11日(日)
早朝、深江南町の海岸沿いを歩く、怪しいジジイが一人。(笑)
海水に靴を浸せそうな場所を探すが、無い。(爆)


いつも、この場所探しで、かなりの時間を食うのだ。
場所探しをしているとき、
ふと見上げると、鳥の大群が……


なんの鳥だろう?


列をなして飛んでいるのもいる。


最初はカラスかなと思ったが、
カラスよりも大きく、姿も違う。


渡り鳥だろうか……


やっと、靴を海水に浸せそうな場所を見つけて入って行くと、


「ここは私有地なので、入ったらダメですよ」とおじさんに注意される。
60歳を過ぎて注意されるのも情けないが、
「海抜0メートルから六甲山に登ろうと思っている者です。登山靴を海水に浸したところを写真に収めたいと思っているのですが……」
と言うと、
「じゃ、写真を撮ったら、すぐに出て下さいね」
と一応承諾してもらえた。(のかな?)
写真を撮って、GPSの電源をONにして、そそくさとその場を立ち去る。
て言うか、
7:33
出発。(笑)


海沿いの道を歩き、


ここを右折。


あとは、まっすぐ歩いて行く。


これが起点となる標石。




阪神本線の線路を横切る。
左側に見えるのが、深江駅。


しばらく歩くと、鳥居が見えてくる。
「稲荷神社」の鳥居だ。


東海道本線(JR神戸線)と、


阪急神戸線を横切る。


右手に「稲荷神社」を見ながら、高度を上げていく。


坂道が続く。


甲南女子大学(左手)の前を通る。


8:14
やっと道標が現れた。
ここまで道標が無かったので、
魚屋道を正しく歩いているか不安だった。


舗装された道から、山道へ入って行く。


いい雰囲気。


やはり登山道は、いいね~


8:42
蛙岩に到着。


標高306mの地点。


ここから先、美しい道が続く。


大都市のすぐ近くに、こんな美しい自然があるなんて、
神戸の人たちは、なんて幸せなんだろう。


苔むした岩のある道も素敵だ。


ベンチを見ると、佐賀の金立山を思い出す。


あまりに雰囲気の好い道なので、


セルフタイマーで、後ろ姿の自撮り。


こんな道も好きなので、


またまたパチリ。(コラコラ)


9:11
風吹岩(447m)に到着。


これが風吹岩らしい。


ここから先は、変化に富んだ道が続く。
美しい道のあとに、


舗装道路を横切り、
猪除けの柵に入ったり出たり。


急坂に息も絶え絶え。(笑)


残雪が現れ出したころに、


9:50
雨ヶ峠に到着。




少し休んで、すぐに出発。
この辺りから、地元の方と抜きつ抜かれつしながら登って行く。


沢を横切り、


急坂を登りつめると、


アイスバーンの道となり、


見覚えのある建物が見えてきた。


10:46
一軒茶屋に到着。
ここでホットドリンクを購入。


チェーンスパイクを装着し、


この坂を登って行く。


10:58
六甲山・最高峰(931.3m)に到着。






チェーンスパイクを外して、
海抜0メートルから登る「六甲山」(最高峰)達成。
六甲山・最高峰は一等三角点だ。


一応、私自身の記念写真も。
逆光気味に……(笑)


2012年11月に、
六甲全山縦走をしたときにも、
一応、海抜0メートルから登り、
この最高峰に立っているのだが、
あの時は夜だったので、
今日は、特別の感慨。
眺めも堪能できた。


山頂直下の四阿で、
先程購入したホットドリンクとパンで、簡単ランチ。
寒いので、すぐに下山開始。


有馬温泉の方へ、魚屋道を下って行く。


チェーンスパイクのおかげで、
軽快に下って行く。


このくらいのアイスバーンは、
6本爪の軽アイゼンより、
チェーンスパイクの方が快適に歩くことができる。
着脱も簡単だしね。


やがて雪も氷も無くなり、


さらにスピードアップして下って行く。


魚屋道もあと1km。


12:11
ここで登山道は終わり、
舗装道路を右の方へまっすぐ歩いて行けば、有馬温泉駅だ。


土産物屋をひやかし、


温泉街の雰囲気をちょっぴり味わい、


12:36
有馬温泉駅に到着した。


約5時間の魚屋道の旅であった。


実際は、昔の人は、一日でこの魚屋道を往復したそうなので、
私は半分を歩いたに過ぎない。
それでも歴史ある古道の素晴らしさをたっぷり感じ取ることができた。
歩いて良かったと思った。
六甲全山縦走したときにも感じたことだが、
六甲の山々はそれほど標高は高くないが、
歩いてみるとかなりキツイ。
この六甲の山々から有名なクライマー達が育ち、
世界へ羽ばたいているのを、納得させられた山行であった。
また機会があったらこの山域を訪れたいと思った。
今日も「一日の王」になれました~

薬師丸ひろ子コンサート2018(大阪) ……憧れの女優の美しき声を堪能する……

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短い人生、
逢いたい人には逢っておいた方がイイ……
ということで、
今年(2018年)から始めた「逢いたい人に逢いに行く」という企画。
第1弾は、E-girlsのパフォーマーであり女優の石井杏奈であった。
で、先日、早くも第2弾を実施した。
逢いに行ったのは、薬師丸ひろ子。

元々、好きな女優ではあったのだが、
どうしても逢ってみたいと思ったのは、
ある動画を観たことに由る。
それは、2013年10月に行われた「芸能活動35周年記念コンサート」で、
「Woman"Wの悲劇"より」を歌ったときのもの。


なんという美しさ。
なんという美しい声。
若い頃よりも美しく、
若い頃よりも声に艶がある。
表現力がはるかに増している。

この動画を観たとき、彼女のコンサートに行ってみたいと思った。
だが、いつコンサートが行われるかは分らない。
「薬師丸ひろ子 コンサート2015」のときも、
「世界遺産劇場 春日大社 第六十次式年造替奉祝 薬師丸ひろ子コンサート」(2016年9月)のときも、
コンサートの実施を知ったときには、チケットはsold outであった。
これではいつまでたってもコンサートには行けないと思い、
日頃からファンサイトを見たりして見張っていた。(笑)
そして、2018年2月に「薬師丸ひろ子コンサート2018」が行われるという情報を、
昨年(2017年)秋にキャッチする。
コンサートは、
2018年2月11日(日)大阪・フェスティバルホール
2018年2月15日(木)東京・Bunkamuraオーチャードホール 
2018年2月16日(金)東京・Bunkamuraオーチャードホール
の3回のみ。
で、2月11日(日)の大阪・フェスティバルホールで行われるコンサートに、
先行予約の申し込みをし、当選。
やっとチケットを手に入れることができたのだった。
ちなみに、チケットの料金、なぜ8940円なのか分ります?
そう、8940(ヤ・ク・シ・マル)なんですね~(笑)


2月11日(日)
海抜0メートルから登る「六甲山」(最高峰)を終えて、
向かった先は、大阪フェスティバルホール。
今回の関西遠征の真の目的は、
「薬師丸ひろ子コンサート2018」だったのだ。(コラコラ)

かなり早めに会場に到着。




いよいよだ。


なんだかすごいところだ。(笑)
(この階段の横にはエスカレーターもある)


階段を上がると、コンサート会場入り口。
右側の長椅子には、私よりも早く来た人たちが座って待っていた。


午後5時に開場。
(コンサートは撮影禁止なので、私が撮った写真はここまで)


以下の写真は、過去のコンサートのときのものを使用させて頂いた。


まだ東京での2回のコンサートが残っているので、
詳しい事は書けないが、
15分の休憩をはさんで、
18:00から20:40まで、
たっぷりと薬師丸ひろ子の歌声を堪能することができた。
これまでのコンサートでは、休憩を入れていなかったそうだが、
今回から15分の(トイレ)休憩を入れることにしたそうだ。
(観客の年齢層を考えてのことかな?)
その分、閉演時間が遅くなっているので、
東京でのコンサートに地方から日帰りしようと思っていらっしゃる方は、
時間に余裕のある計画を立てられた方がいいでしょう。

どの曲を歌ったか……も、
これから東京のコンサートに行く人の楽しみを奪うことになるので、ここには書かないが、
過去のヒット曲から、最新の曲まで、
素晴らしい選曲がなされていたと思う。


もうすでにネットでは情報が流れているが、
薬師丸ひろ子の20年ぶりのオリジナルアルバムリリースが決定している。
コンサート会場内で予約すると、特典として、
2月16日の東京・Bunkamuraオーチャードホール公演のライブ音源5曲を収めた非売品のCDがプレゼントされることになっている。
コンサートでは、このアルバムの中からも一曲歌っているので、
いつ歌ってくれるかも含めて、お楽しみに……


薬師丸ひろ子の素晴らしいところは、
過去のヒット曲を歌うときには、
今でも原曲のキーで歌い、
原曲のイメージを変えないように、
オリジナルに忠実に歌唱していること。
作曲家が書いた音符の一つ一つに、こだわりがあることを知っているので、
自分流にアレンジして歌うことはせず、楽譜に忠実でいたいというのもあるが、
それぞれの歌は、薬師丸ひろ子の手を離れて、
それぞれの聴き手のものになっているので、
それぞれの想い出に寄り添えるような歌い方にしているそうだ。


「懐かしのメロディー」というようなTV番組を観ると、
昔の面影がまったくない歌手が、
声が出ないからか、勝手に編曲して、
オリジナルとはかけ離れた歌い方をしていたりする。
「そこまでして出演しなくていいから、昔の映像を流してくれよ」
と言いたくなるような惨状で、(笑)
そういうシーンを多く観ているので、
薬師丸ひろ子の歌う姿勢には感心させられた。
高音を保つために声楽家のレッスンを受けているが、
訓練して歌が上手くなることも大事だが、
自分らしさを失わないようにも気をつけているそうだ。


大ヒットした「セーラー服と機関銃」を歌っているときは、
会場から手拍子が沸き、
薬師丸ひろ子の目に光るものが見えたような……

極私的にいちばん好きな曲は、「メイン・テーマ」。
この曲のイントロを聴くだけで、胸がキュンとなる。
もちろん、歌ってくれました。


アンコールのときは、
なかなか再登場しないので、
粘り強く手を叩き続けてね。(笑)
たぶん、衣装替えに時間がかかっていると思うのだが……
アッと思うような衣装で出てくるので、お楽しみに。

ちなみに、
「薬師丸」という姓は、
全国でも20人くらいしかいない珍しい姓だが、
佐賀と縁があり、
彼女自身は東京出身だが、
「薬師丸」姓は肥前国佐賀郡薬師丸邑にルーツがあると言われている。
現在も、佐賀県佐賀市金立町に、薬師丸という地名があるので、


いつか薬師丸ひろ子にも来てもらいたい……と思うが、
今のところ、東京と大阪でしかコンサートをやっていないので、
せめて、福岡あたりでライブをやって欲しいな。(願望)


とにもかくにも、
本当に薬師丸ひろ子という女優が存在していたという歓び、
(もしかしたら想像上の人物で、実際にはいないのではないかと思うときもあった)
憧れの女優・薬師丸ひろ子と同じ空間にいることができた喜び、
薬師丸ひろ子の美しい歌声を聴くことができた悦び……
を堪能した2時間40分であった。
感謝。

映画『今夜、ロマンス劇場で』 ……綾瀬はるかが美しく、映画愛に溢れた感動作……

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映画監督を夢見る青年・健司(坂口健太郎)が、
密かに想いを寄せるのは、


通い慣れた映画館・ロマンス劇場の映写室で見つけた、
古いモノクロ映画のお姫様・美雪(綾瀬はるか)。


今は誰も見なくなったその映画を、
毎日のように繰り返し見ていた健司の前に、ある日奇跡が起きる。
美雪が健司の目の前に突然現れたのだ。


その日から二人の不思議な同居生活が始まった。


モノクロの世界しか知らない美雪に、
カラフルな現実世界を案内する健司。


同じ時間を過ごす中で、二人は次第に惹かれ合っていく。


しかし、美雪にはある秘密があった。
現実の世界に来るための代償で、人のぬくもりに触れたら美雪は消えてしまうのだ。


そんな中、美雪は、
映画会社の社長令嬢・塔子(本田翼)が健司に想いを寄せていることを知る。


好きだから触れたい、
でも触れられない……
この切ない真実に、二人はどう向き合い、そんな答えを出すのか……



映画を見た感想はと言うと、
面白かったし、
感動もさせられた。
綾瀬はるかが、とびっきり美しかったし、
もうそれだけで“見る価値あり”だと思った。
もし、この映画を「見ようか」「見まいか」と迷っている方がおられたら、
「見る」ことをお薦めする。
予備知識なしで見た方が、感動が大きいと思うからだ。
映画愛に溢れた映画なので、
映画ファンなら、きっと楽しんでもらえると思う。



ここからは、ちょっとネタバレ気味になります。


だが、不幸にして、
ある程度の予備知識なくしては見ることができないという、
用心深く、疑い深い方がおられましたら、
以下の文章を読んで、判断してもらいたい。

映画館や映画会社、あるいは映画そのもの題材にした作品は案外多い。
洋画の名作には、
『サンセット大通り』(1950年)
『雨に唄えば』(1952年)
『フェリーニの8 1/2』(1963年)
『軽蔑』(1963年)
『映画に愛をこめて アメリカの夜』(1973年)
『カイロの紫のバラ』(1985年)
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989年)
などがあるし、
邦画でも、
『蒲田行進曲』(1982年)
『キネマの天地』(1986年)
『虹をつかむ男』(1996年)
『オリヲン座からの招待状』(2007年)
『シグナル〜月曜日のルカ〜』(2012年)
など、思いつくままに挙げても、かなりの数になる。

だから、この手の作品は、アイデアがほぼ出尽くしていて、
過去の作品にどうしても似てしまう。
本作『今夜、ロマンス劇場で』も、
「スクリーンからキャラクターが飛び出すのは『カイロの紫のバラ』の真似ではないか?」
「白黒の世界からカラーの世界へ変化は『カラー・オブ・ハート』のアイデアを盗んでいるのではないか?」
とか、すでにそういう批判をしている映画評論家もいる。
綾瀬はるかの本作での衣裳など見ていると、
(クラシカル&カラフルなドレス姿を25変化している)
『ローマの休日』など、一連のオードリー・ヘプバーンの作品を思い浮かべる人も多いのではないかと思われる。
言い出したらキリがないほど。


では、実際、制作側の意図はどうなのか?
これが、そういった批判はすべて“織り込み済み”というほどに、
あらゆる作品を調べ、参考にしていたのだ。
健司と映画館主との関係は、『ニュー・シネマ・パラダイス』


映画の世界と現実世界を繋ぐファンタジックな設定は、『キートンの探偵学入門』や『カイロの紫のバラ』


王女と身分の違う青年が恋におちるのは、『ローマの休日』


落雷によって変化が生じるのは『バック・トゥ・ザ・ヒューチャー』


劇中劇「お転婆姫と三獣士」のモデルは、『オズの魔法使い』や『狸御殿』シリーズ


北村一輝が演じるスター俳優・俊藤龍之介の愛称ハンサムガイは、日活のガイシリーズ


そして、美雪と健司のガラス越しのキスシーンは、『また逢う日まで』というように、


むしろ、ありとあらゆる作品の良い所を抽出し、昇華し、
絞り出したような作品になっているのだ。
この脚本を書いた宇山佳佑も素晴らしいし、
演出した武内英樹も優れている。


あらゆる名作を参考にし、
いろいろな要素を詰め込んではいるが、
構造はシンプルで、一言で表現するならば「映画愛」である。
それは、美雪が、映画の中から飛び出して、こちらの世界に来た理由を語る場面に集約されている。
美雪が語った言葉を並べてみる。

「……逢いたかったんだ」

「お前に逢いたかったから……」

「昔はたくさんの人がわたしのことを観てくれた。でも一人いなくなり、二人いなくなり、結局そのうち誰もいなくなってしまった。仕方のないことだと分っていた。それがわたしの宿命だということも。でも――」

「でも怖かったんだ。このまま皆の記憶から消えていくことが……」

「そんなとき、お前はわたしを見つけてくれた」

「こんなわたしでも、まだ誰かを喜ばせることができる。そう思うと、嬉しくてたまらなかった……」

「ずっとあの日が続いてほしかった。でも、もうすぐお前に逢えなくなると知って一日逢いたくなってしまったんだ。逢って、最後に言いたかった。見つけてくれてありがとうって……」

この他にも、本作には名言がちりばめられていて、
映画館主の本多がつぶやいた言葉で、こういうのがある。

「人の記憶に残れる映画なんてほんのわずかだ。あとのほとんどは忘れられて捨てられちまう。誰かを幸せにしたくて生まれてきたはずなのに」

美雪が出演した映画も廃棄されていたのだが、
健司が見つけてくれた。
何度も何度も自分を見てくれた。
「見つけてくれてありがとう」
という言葉は、美雪の言葉であり、
映画自身の言葉でもある。
美雪は謂わば“映画の化身”と言えるのだ。


序盤、健司がつぶやいた、

「どんな映画にもいいところは必ずあるんですよ」

という言葉も忘れがたい。
私も、映画を見るとき、
なるべく“いいところ”を見ようと思っている。
それは、このレビューを書く際の心構えにもなっている。

映画愛に溢れ、
名言がちりばめられ、
綾瀬はるか史上、一番美しい綾瀬はるかを見ることができる映画『今夜、ロマンス劇場で』。
映画館で、ぜひぜひ。

天山 ……美しい雪景色と、雄大な展望と、咲き始めたマンサクの花を楽しむ……

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久しぶりに天山に登ることにした。
とは言っても、2週間ぶりだけどね。
TV「ボクらの時代」を観て、
7:30頃に車で家を出る。
天川登山口に向かうが、
途中から道はアイスバーンになっていた。
この辺りから歩いて行くことにする。


多分、雪山だろうと思って、登山靴も雪山仕様。


滑らないように気をつけて登って行く。


道の脇には、氷の芸術品が……


左の氷柱は、長さが1mくらいあった。
剱のよう。


ゆっくり登って行く。


もうすぐ登山口。


天川登山口に到着。
さあ、もう一息。


登山道には、雪がたっぷりある。


太陽が雪面を輝かせる。


プチ氷瀑と、


氷が創り出す芸術的な模様。


まだこれほど雪が残っているとは……


雪と格闘しながら登って行く。


だが、山頂に近づくと、雪がなくなった。


天山山頂に到着。


今日は、遠望が効き、
くじゅうや、


阿蘇山も見ることができた。


山頂に雪はなかったが、
山頂直下の南側には、まだたっぷり雪が残っていた。
雪原越しに。佐賀平野をパチリ。


佐賀平野の上空に、バルーンがぽっかり浮かんでいた。


雲仙や、多良山系の山々も見える。


こんな風景が大好きだ。


あめ山も美しい。


さあ、稜線散歩。
この辺りは雪がないが、


少し歩くと、縦走路には雪がたくさん残っている。


雪山である。


こんな風景を見ると、
夏の北アルプスを思い出す。


いいね~


雪も深くて、


膝くらいまで埋まったりする。


家から近い山で、こんな風景を見ることができるなんて、
なんて幸せなんだろう。


いつもはこの辺りで引き返すのだが、
今日はもう少し先まで行ってみよう。


楽しくて仕方がない。


たっぷりの雪と彦岳を激写。
今日はここで引き返す。


いつもの場所でランチ。


本日の「天山北壁」。


帰りに、秘密の散歩道へ寄ってみる。
寒い日が続いていたので、
オオキツネノカミソリの葉は少しだけ顔を出していた。


夏が楽しみ。


天山のマンサクも心配していたのだが、
咲き始めていたので、安心。


ズーム。
いいね~


まだ蕾が多い。


カワイイ。


木々の枝の間からパチリ。


暖かい日が続けば、きっと、一気に開花するだろう。


今日も「一日の王」になれました~

映画『ミッドナイト・バス』 ……竹下昌男監督によって丁寧に丁寧に創られた傑作……

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昔、『ジャンプ』(2004年)という映画を見たことがある。
佐藤正午の小説を映画化したもので、
ネプチューンの原田泰造が主演し、
牧瀬里穂や笛木優子などが共演していた。
佐藤正午の友人でもある竹下昌男の監督デビュー作であった。
佐藤正午の『ジャンプ』は好きな小説だったし、
ロケが佐賀県内でも行われたという興味も手伝って、
かなり期待して鑑賞した記憶がある。
地味だが、丁寧に創られた作品で、
愛すべき小品とも言うべき佳作であった。


それから10数年の歳月が流れたが、
この『ジャンプ』を監督した竹下昌男の、2作目がようやく完成した。
それが、本日紹介する映画『ミッドナイト・バス』である。

【竹下昌男】
1960年生まれ、大分県出身。
CF制作会社のプロダクション・マネージャーを経て、
東陽一監督『ジェラシー・ゲーム』(1982年)でフリーの助監督となる。
その後、
藤田敏八監督『リボルバー』(1988年)、
大林宣彦監督『青春デンデケデケデケ』(1992年、『はるか、ノスタルジィ』(1993年)、
原田眞人監督『バウンス ko GALS』(1997年)、
エドワード・ヤン監督がカンヌ国際映画祭監督賞を受賞した『ヤンヤン 夏の想い出』(2000年)など多数の作品に参加、助監督としてキャリアを積む。
1993年以降、
『乳房』(1993年)、『絆-きずな-』(1998年)ほか、主に根岸吉太郎監督に師事する。
2004年、長編映画『ジャンプ』で監督デビュー。
新藤兼人賞銀賞、第8回みちのく国際ミステリー映画祭・新人監督奨励賞グランプリを受賞。
2011年、大林宣彦監督の監督補佐として『この空の花 -長岡花火物語』(2012年)の制作に参加、
AKB48のミュージック・ビデオ「So long !」(2013年)のセカンドユニット・ディレクターも務める。

キャリアは長いのに、監督2作目とは、あまりに寡作過ぎないか?
とはいえ、『ジャンプ』の監督なら、「さもありなん」とも思った。
竹下昌男監督は語る。

「新潟って面白いな……」
そう思ったのは、大林宣彦監督の映画『この空の花 -長岡花火物語』の撮影をしていたときでした。
日差し、空の色、流れる雲……
目の前に広がる一見何気ないロケーションが、
ワンカットの中でいろいろな表情を魅せる。
もし機会があったら、ここで映画を撮りたいと思いました。
それも、どうせなら冬の新潟を。
その後、プロデューサーから持ちこまれた伊吹有喜さんの小説は、
そんな新潟を舞台にした希有な作品でした。


最初はなぜか高倉健をイメージしながら、
映画に出来るかどうか、何度も読み返したのを覚えています。
主演の原田泰造くんとは『ジャンプ』に続いて二度目の顔合せです。
彼の出演したものはだいたい観てますが、実は好いと思ったことが一度もない。
監督として「泰造ならもっとやれるはず」という確信はあったのですが、
今回起用して、改めて俳優としての可能性を感じました。
こんなものじゃない、もっといろいろやれるぞ、と。
そして何より、僕自身がまだまだ満足出来ていない。
泰造には、いっその事トリュフォー作品のジャン=ピエール・レオのようになってもらおうかと思ってるんです。
監督デビューから十三年、
『ミッドナイト・バス』のように長い夜を走り続けてきましたが、
ようやく「撮れない」呪縛から解放されそうな気がします。

なんだか、“誠実”を絵に描いたような人柄である。
今回は、自らプロデュースを兼ねての企画だそうで、
『ミッドナイト・バス』も大いに期待できると思った。
この手の地味な映画は、普通は佐賀県での上映はなく、
福岡あたりまで行かないと見ることのできないのだが、
今回は、イオンシネマ佐賀大和でも上映されるという。
期待に胸を膨らませて映画館へ向かったのだった。



主人公の高宮利一(原田泰造)は、
東京での過酷な仕事を辞め、
故郷の新潟で長距離深夜バスの運転士として働く中年の男だ。


ある夜、利一がいつもの「東京発・新潟行」のバスを発車させようとしたその時、
滑り込むように乗車してきたのが、
16年前に離婚した妻・美雪(山本未來)だった。
突然の、思いがけない再会。
美雪は東京で新しい家庭を持ち、
新潟に独り暮らしている病床の父親(長塚京三)を見舞うところだった。


利一には、東京で定食屋を営む恋人・志穂(小西真奈美)がいる。


その志穂との再婚を考えていた矢先、
長男の怜司(七瀬公)が、東京での仕事を辞めて帰ってくる。


娘の彩菜(葵わかな)は、友人とルームシェアしながら、
インターネットでマンガやグッズのウェブショップを立ち上げていたが、
実現しそうな夢と、結婚の間で揺れていた。


そして、利一は、
元妻の美雪が、夫の浮気と身体の不調に悩み、
幸せとはいえない結婚生活を送っていると知る。


利一と美雪の離婚で、一度ばらばらになった家族が、
今、それぞれの問題を抱えて、故郷「新潟」に集まってくる……
16年という長い時を経て、やるせない現実と人生への不安が、
再び、利一と美雪の心を近づけていく。
利一とは違う場所で、美雪もまた、同じ分の歳月を生きていた。
だけど、どんなに惹かれ合っても、
一度分かれてしまった道は、もう二度と交わらないこともわかっている。
この数ヶ月、
志穂といた利一は美雪を思い、
美雪といた利一は志穂を思った。
利一には恋人の志穂が、
美雪には夫とまだ幼い息子がいる……
奇跡のような再会から数ヶ月が過ぎ、小雪が舞う中を、
美雪は利一に見送られ、東京行きの深夜バスに乗る。
ひとりになった利一は、
これから自分が進むべき道を考えるのだった……



上映時間が2時間37分となっていたので、
いろんな意味で心配していた。
やっとこぎつけた2作目ということで、
「たくさんのものを詰め込み過ぎていないか?」
「冗長になっていないか?」
等々。
その心配は杞憂であった。
丁寧に、丁寧に創られてはいるが、
冗長さはまったくなく、
上映時間の長さはまったく気にならなかった。
むしろ、「もっと見ていたい」と思ったほど。
映画の中にどっぷりと浸かることができた。



息子や娘との関係に苦悩する新潟の方では、“父性”を、
定食屋を営む志穂の待つ東京の方では、“男性”を、
バスが関越トンネルを抜ける度に切り替えざるを得ない利一なのだが、
その利一を原田泰造が実に巧く演じている。
この長距離深夜バスの運転手を演ずるにあたり、撮影に先立って、
原田泰造は大型自動車免許を取得したそうだ。


新潟でのシーンと、東京でのシーンを繋ぐのは、
原田泰造が演じる利一が、バスを運転する姿だ。


このバスが走っているときのシーンで流れるのが、


ヴァイオリニスト・川井郁子が演奏する「ミッドナイト・ロード」。
この音楽が実に好い。



利一の恋人で、東京で定食屋を営む志穂を演じた小西真奈美。


昔から小西真奈美のファンなので、
本作『ミッドナイト・バス』の存在も、
彼女のブログで知った。
小西真奈美が出演しているなら見たいと思ったし、
調べてみると、『ジャンプ』の監督の2作目ということで、
さらに興味も増した。
志穂を演ずる小西真奈美は、
利一をひたすら待っている“待つ女”を演じているのだが、
観客の心まで切なくなるほどに繊細に演じていて、素晴らしかった。
『のんちゃんのり弁』(2009年)のときのような元気娘の役もイイが、
『阿弥陀堂だより』(2002年)や『行きずりの街』(2010年)のときのような、
切なさを感じさせる役の方が、一層彼女の持ち味が発揮されるような気がした。


地味な作品の中にあって、
透明感のある美しさ華やかさを持っている小西真奈美の存在は、
一際価値あるものに思えた。



利一の元妻・美雪を演じた山本未來。
なんだか、映画では久しぶりに見た気がするのだが、
調べてみると、『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』(2009年)以来であった。
山本未來に関しては、(失礼ながら)それほど期待していなかったのだが、
これが、びっくりするほど素晴らしい演技をしていたのだ。
利一との、利一の母親との過去や、
現在の夫とのことなど、
何も言わずとも解るような繊細な演技で、
とても惹かれたし、魅せられた。
「一日の王」映画賞の最優秀助演女優賞の候補になるであろう名演であった。



利一の娘・彩菜を演じた葵わかな。
極私的に、
フジテレビ系のバラエティ番組『痛快TV スカッとジャパン』や、
映画『くちびるに歌を』(2015年)、『サバイバルファミリー』(2017年)などで注目していた彼女だが、
連続テレビ小説『わろてんか』(2017年10月7日~2018年3月31日)に主演が決まり、
アッと言う間に国民的女優になってしまった。
本作『ミッドナイト・バス』の撮影時は、
これほど注目される前であったと思われるが、
現在の人気が「さもありなん」と思わせるほどの好い演技をしている。
朝ドラに主演すると、メジャーな作品からのオファーが多くなると思うが、
これからも、こういった地味な作品にも出演してほしい……と思った。



新潟~東京間を走る長距離深夜バスの運転手を主人公にした、
その家族や、恋人を描いた、小さな小さな物語である。
その小さな物語を、竹下昌男監督は、
丁寧に丁寧に演出している。
私はこんな作品を愛する。
映画館で、ぜひぜひ。

近くの里山 ……(遅ればせながら)バイカイカリソウが咲き始めたよ……

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今日は公休日であったが、
何かと忙しい一日で、
寸暇を縫って近くの里山を歩いてきた。
まず向かったのは、セリバオウレンの群生地。
もうたくさん咲いていて、早くもピークを迎えていた。


でも開き始めのものもあって、


もうしばらくは楽しめそう。


近くの里山でセリバオウレンを見ることのできる“幸せ”をかみしめる。


ずっと見ていても飽きることがない。


本日のベストショット。


次に、バイカイカリソウの早咲きが見られる場所へ移動する。
今年の冬は寒い日が続いていたので、
〈まだ咲いていないかもしれない……〉
と思ったが、1株だけ咲いて私を待っていてくれた。


極端に早く(1月に)咲く年もあるが、
今年は平年並み(2月に開花)かな。
それでもバイカイカリソウの一般的な開花時期(4~5月)よりはかなり早い。


以前は、この早咲きのバイカイカリソウを紹介するとき、
“登吾留山”ということで、
花の写真だけでは味気ないと思って、
ダミーの“風景の写真”を掲載していたのだが、
珍花ハンターたちが、このダミーの風景の場所を特定し、
訪れているという情報を友人から知らされた。
このダミーの風景の場所は、A神社の周辺なのだが、
はっきり言って、早咲きのバイカイカリソウが咲く場所は、A神社の周辺ではない。
(まあ、A神社周辺も、他の場所よりは早く咲くには咲くが……)


珍花ハンターたちを惑わせないように、
今回からは、花の写真のみにする。


誰でも、
バイカイカリソウが咲く山に、1月、2月に何度も登れば、
どこかの山でいつかは早咲きの花に逢えるのではないか……と思うのだが、
如何。

映画『サニー/32』 ……『凶悪』の白石和彌が撮った北原里英のアイドル映画……

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NGT48でキャプテンを務める北原里英の映画初主演作である。
初主演作に、白石和彌監督作品を選んだのは、北原里英本人だという。
私から言わせると、
「スゴイ!」
としか言いようがない。
白石和彌監督といえば、
『凶悪』(2013年)
『日本で一番悪い奴ら』(2016年)
『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)
など、ある意味ヤバイ作品ばかりものしている監督なのである。
(タイトルをクリックするとレビューが読めます)
なぜ白石和彌監督作品だったのか?
北原里英は語る。

(映画のスーパーバイザーを務める)秋元(康)先生から、
「北原はどんな映画に出たいの?」
と訊かれたとき、『凶悪』を見た後だったんです。
すごく面白くて、心に残っていたので、
「凶悪のような映画に出たいです」
と言いました。

「いやはや」である。(笑)
白石和彌監督の方も、

秋元(康)先生から、
「北原さんで撮ってください」
とお話をいただいて。
僕はどこかでアイドル映画をやりたい思いがあったので、
せっかくのチャンスですし、やろうと。
だから、うれしかったです。
まして、オリジナルでやれるのも、昨今なかなかないですし、
「日本のトップアイドルを好きなようにしていいよ」
みたいな話ですから。(笑)

と、快諾。
脚本は、オリジナルということで、
白石和彌と高橋泉の『凶悪』コンビが再タッグを組み、
ネット上で神格化された殺人犯の少女「サニー」を信奉する男たちに誘拐・監禁された女性教師の壮絶な運命を描いたサスペンスドラマに仕上げたのだという。
この話を聞いただけで、
私はもうワクワク感が止まらなかった。(笑)
佐賀県には上映館がなかったので、
博多駅のビルの9階にあるTジョイ博多まで出掛けたのだった。



冬の新潟のある町で、
仕事も私生活も振るわない中学校教師・藤井赤理(北原里英)は、
24歳の誕生日を迎えたその日、何者かに拉致された。


やったのは、
柏原(ピエール瀧)と、小田(リリー・フランキー)の二人組で、
雪深い山麓の廃屋へと連れ去り、彼女を監禁する。


小田は嬉々としてビデオカメラを回し、


柏原の方は、
「ずっと会いたかったよ、サニー……」
と、赤理のことを何故か“サニー”と呼ぶのだった。


“サニー”とは、2003年に世間を騒がせた、
「小学生による同級生殺害事件」の犯人の通称だった。
当時11歳だった小学生女児が同級生を殺害したというもので、
突然、工作用のカッターナイフで首を切りつけたのだ。
事件発覚後、
マスコミが使用した被害者のクラス写真から、加害者の女児の顔も割りだされ、
いたいけで目を引くルックスゆえに、
「犯罪史上、最も可愛い殺人犯」
とたちまちネットなどで神格化され、
狂信的な信者を生み出すことになった。
出回った写真では、
独特の決めポーズ(右手が3本指、左手は2本指でピースサインをつくる)も話題を集め、
それは信者たちの間で「32(サニー)ポーズ」と名付けられ、
加害女児自体も“サニー”と呼ばれるようになった。


奇しくも、この“サニー”の起こした事件から14年目の夜に、
二人の男によって拉致監禁された赤理。
柏原も小田もカルトな信者で、
二人は好みのドレスに着替えさせ、
赤理の写真や動画をネット上の「サニーたんを愛する専門板www」にアップ。


赤理は正気を失っていきながらも、
必死に陸の孤島と化した豪雪地帯の監禁部屋から脱出を試みる。
が、それは驚愕の物語の始まりにすぎなかった……



映倫区分は「PG12」ということで、
アイドル映画でありながら、
子供は見てはいけないのである。(笑)
大人の私は、とても面白く見たが、
衝撃的なシーンも多く、


北原里英のファンにとっては、
辛く、試練の映画だったかもしれない。(笑)


事実、ファンらしき人々が多く書き込んでいるように見える「Yahoo!映画」のユーザーレビューなどでは、酷評している人が多く、評点も低い。
だから、
極私的感情が入ったこの手のユーザーレビューなどには惑わされずに見た方がイイ。
『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』ほどではないにしろ、
ちゃんと白石和彌監督作品になっているし、
これまで白石和彌監督作品を楽しんできた人なら、
この『サニー/32』も間違いなく楽しめることだろう。



拉致された中学校教師・藤井赤理を演じた北原里英。


まずは、白石和彌を自らの初主演映画の監督に選んだことを褒めたい。
そして、事前に『凶悪』という作品を見ていたということも褒めたい。
2012年だったか、
映画『悪の教典』の「AKB48特別上映会」で、大島優子が、
「私はこの映画が嫌いです」
と、涙を浮かべて退場したが、
普通、アイドルは、この手の映画は嫌うものである。
それが、自ら望んで『凶悪』の世界に入って行くとは、見上げた“志”だ。
映画は2017年2月2日、北原が所属する「NGT48」の拠点でもある新潟でクランクインし、
厳寒のロケは想像以上に過酷だったという。


横殴りで吹き付ける雪、風、霙。
おまけに、サニー信者たちから祀り立てられるヒロイン役の北原は、
アイドルの舞台衣装のような薄着で、しかも、素足同然。
インタビューで、
「寒くて泣いたのは、生まれて初めてでした」
と語っていたが、それほど過酷だったのであろう。


正直、演技は「まだまだ」であるが、
頑張りは見る者にも伝わってきたし、
女優としての“覚悟”も感じられ、
今後の活躍にも大いに期待できる熱演だったと思う。


ことに、それまでオドオドしていた赤理が、
「サニー」としてのスイッチが入った途端、
「サニー」になりきって小田や柏原などをいたぶるシーンは秀逸であった。


(このシーンを見るだけでも本作を見る価値はあると思う)
私としては、「一日の王」映画賞の新人賞候補にリストアップしておくつもりでいる。



柏原を演じたピエール瀧と、


小田を演じたリリー・フランキー。


言わずと知れた傑作『凶悪』コンビで、
『凶悪』の世界を望んで挑んできた北原里英を迎え撃つ側でありながら、
北原里英の強力な“助っ人”でもあった。
赤理を拉致した凶悪犯なのだが、
なんだか北原里英と共演していることが嬉しそうで、
これまでの作品とは違った雰囲気を醸し出していた。
「サニー」としてのスイッチが入った赤理(北原里英)からいたぶられるシーンでは、
特に、小田を演じたリリー・フランキーが嬉しそうで、(爆)
彼が奇声を発する度に、私は笑いをこらえるのに必死だった。



もう一人の「サニー」を演じた門脇麦。


出演シーンは短いものの、
見る者に鮮烈な印象を残す。
さすが、門脇麦。
好きな女優なので、本作でも見ることができて嬉しかった。
彼女を見ていたら、
〈北原里英が目指すべき女優は、門脇麦なのかもしれない……〉
と思わされた。
二人共、“唇”が印象的だし、共通項も多いような気がするからだ。
ただし、門脇麦の高みへ到達するには、まだまだ試練が必要だ。
門脇麦はすでにそれほどのレベルに達している。



北原里英は、殺人犯という役を演じてみて、

監督に「アイドル映画にしたい」と言われたんですけど、
脚本を読んだとき「アイドル映画じゃない!」と思いました。(笑)
でも完成してみて、
赤理がネットを通じて崇拝されていくという意味で、アイドル映画だなと思いました。

と語っている。
現代はネットによって人との付き合い方が変わってきており、
社会のゆがみを曝け出した本作『サニー/32』は、
紛うことなきアイドル映画なのかもしれない。


北原里英のファンも、
そういうアイドル映画を選択した彼女を誇りに思うべきだし、
それが真のファンの姿なのではないかと私は考える。

海抜0メートルから登る「六甲山」(最高峰) ……魚屋道(ととやみち)を歩いて……

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関西方面へ行く機会があったら、
六甲山の魚屋道(ととやみち)を歩いてみたいと、かねてより思っていた。

魚屋道とは?

江戸初期から、
灘地方と有馬を結ぶ東六甲最古の山越え交通路で、
当時の絵地図では、
森から山に登り、
蛙岩、山の神、風吹岩、東お多福山、本庄橋、一軒茶屋、射場山山腹、有馬のルートを通り、
「六甲越え」と呼ばれていた。
幕府が、灘から有馬への正規の街道を、
西宮、宝塚、船坂、有馬の線に定めた後も、
遠回りを嫌った人々は、この魚屋道を利用した。
そこで、街道沿いの西宮や生瀬などの宿場の商人は、
これを「抜け荷の道」と称して、通行禁止を大阪奉行所へ訴え、
しばしば紛争が生じた。
文化3年(1806年)に、灘本庄と有馬の人々がひそかに道の大修理をしている。
深江浜の魚は、大正時代まで、ここから有馬に運ばれていた。

で、やっとその機会がおとずれた。
関西に用事ができたのだ。
この機会を逃す手はない。
絶対、魚屋道を歩くのだ。(笑)
この魚屋道には、
海に近い深江駅の近くに、起点となる標石がある。
ここから歩き始めるのが普通であるが、
私は、どうせなら、海抜0メートルから歩きたいと思った。(コラコラ)

2018年2月11日(日)
早朝、深江南町の海岸沿いを歩く、怪しいジジイが一人。(笑)
海水に靴を浸せそうな場所を探すが、無い。(爆)


いつも、この場所探しで、かなりの時間を食うのだ。
場所探しをしているとき、
ふと見上げると、鳥の大群が……


なんの鳥だろう?


列をなして飛んでいるのもいる。


最初はカラスかなと思ったが、
カラスよりも大きく、姿も違う。


渡り鳥だろうか……


やっと、靴を海水に浸せそうな場所を見つけて入って行くと、


「ここは私有地なので、入ったらダメですよ」とおじさんに注意される。
60歳を過ぎて注意されるのも情けないが、
「海抜0メートルから六甲山に登ろうと思っている者です。登山靴を海水に浸したところを写真に収めたいと思っているのですが……」
と言うと、
「じゃ、写真を撮ったら、すぐに出て下さいね」
と一応承諾してもらえた。(のかな?)
写真を撮って、GPSの電源をONにして、そそくさとその場を立ち去る。
て言うか、
7:33
出発。(笑)


海沿いの道を歩き、


ここを右折。


あとは、まっすぐ歩いて行く。


これが起点となる標石。




阪神本線の線路を横切る。
左側に見えるのが、深江駅。


しばらく歩くと、鳥居が見えてくる。
「稲荷神社」の鳥居だ。


東海道本線(JR神戸線)と、


阪急神戸線のガード下を潜る。


右手に「稲荷神社」を見ながら、高度を上げていく。


坂道が続く。


甲南女子大学(左手)の前を通る。


8:14
やっと道標が現れた。
ここまで道標が無かったので、
魚屋道を正しく歩いているか不安だった。


舗装された道から、山道へ入って行く。


いい雰囲気。


やはり登山道は、いいね~


8:42
蛙岩に到着。


標高306mの地点。


ここから先、美しい道が続く。


大都市のすぐ近くに、こんな美しい自然があるなんて、
神戸の人たちは、なんて幸せなんだろう。


苔むした岩のある道も素敵だ。


ベンチを見ると、佐賀の金立山を思い出す。


あまりに雰囲気の好い道なので、


セルフタイマーで、後ろ姿の自撮り。


こんな道も好きなので、


またまたパチリ。(コラコラ)


9:11
風吹岩(447m)に到着。


これが風吹岩らしい。


ここから先は、変化に富んだ道が続く。
美しい道のあとに、


舗装道路を横切り、
猪除けの柵に入ったり出たり。


急坂に息も絶え絶え。(笑)


残雪が現れ出したころに、


9:50
雨ヶ峠に到着。




少し休んで、すぐに出発。
この辺りから、地元の方と抜きつ抜かれつしながら登って行く。


沢を横切り、


急坂を登りつめると、


アイスバーンの道となり、


見覚えのある建物が見えてきた。


10:46
一軒茶屋に到着。
ここでホットドリンクを購入。


チェーンスパイクを装着し、


この坂を登って行く。


10:58
六甲山・最高峰(931.3m)に到着。






チェーンスパイクを外して、
海抜0メートルから登る「六甲山」(最高峰)達成。
六甲山・最高峰は一等三角点だ。


一応、私自身の記念写真も。
逆光気味に……(笑)


2012年11月に、
六甲全山縦走をしたときにも、
一応、海抜0メートルから登り、
この最高峰に立っているのだが、
あの時は夜だったので、
今日は、特別の感慨。
眺めも堪能できた。


山頂直下の四阿で、
先程購入したホットドリンクとパンで、簡単ランチ。
寒いので、すぐに下山開始。


有馬温泉の方へ、魚屋道を下って行く。


チェーンスパイクのおかげで、
軽快に下って行く。


このくらいのアイスバーンは、
6本爪の軽アイゼンより、
チェーンスパイクの方が快適に歩くことができる。
着脱も簡単だしね。


やがて雪も氷も無くなり、


さらにスピードアップして下って行く。


魚屋道もあと1km。


12:11
ここで登山道は終わり、
舗装道路を右の方へまっすぐ歩いて行けば、有馬温泉駅だ。


土産物屋をひやかし、


温泉街の雰囲気をちょっぴり味わい、


12:36
有馬温泉駅に到着した。


約5時間の魚屋道の旅であった。


実際は、昔の人は、一日でこの魚屋道を往復したそうなので、
私は半分を歩いたに過ぎない。
それでも歴史ある古道の素晴らしさをたっぷり感じ取ることができた。
歩いて良かったと思った。
六甲全山縦走したときにも感じたことだが、
六甲の山々はそれほど標高は高くないが、
歩いてみるとかなりキツイ。
この六甲の山々から有名なクライマー達が育ち、
世界へ羽ばたいているのを、納得させられた山行であった。
また機会があったらこの山域を訪れたいと思った。
今日も「一日の王」になれました~

薬師丸ひろ子コンサート2018(大阪) ……憧れの女優の美しき声を堪能する……

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短い人生、
逢いたい人には逢っておいた方がイイ……
ということで、
今年(2018年)から始めた「逢いたい人に逢いに行く」という企画。
第1弾は、E-girlsのパフォーマーであり女優の石井杏奈であった。
で、先日、早くも第2弾を実施した。
逢いに行ったのは、薬師丸ひろ子。

元々、好きな女優ではあったのだが、
どうしても逢ってみたいと思ったのは、
ある動画を観たことに由る。
それは、2013年10月に行われた「芸能活動35周年記念コンサート」で、
「Woman"Wの悲劇"より」を歌ったときのもの。


なんという美しさ。
なんという美しい声。
若い頃よりも美しく、
若い頃よりも声に艶がある。
表現力がはるかに増している。

この動画を観たとき、彼女のコンサートに行ってみたいと思った。
だが、いつコンサートが行われるかは分らない。
「薬師丸ひろ子 コンサート2015」のときも、
「世界遺産劇場 春日大社 第六十次式年造替奉祝 薬師丸ひろ子コンサート」(2016年9月)のときも、
コンサートの実施を知ったときには、チケットはsold outであった。
これではいつまでたってもコンサートには行けないと思い、
日頃からファンサイトを見たりして見張っていた。(笑)
そして、2018年2月に「薬師丸ひろ子コンサート2018」が行われるという情報を、
昨年(2017年)秋にキャッチする。
コンサートは、
2018年2月11日(日)大阪・フェスティバルホール
2018年2月15日(木)東京・Bunkamuraオーチャードホール 
2018年2月16日(金)東京・Bunkamuraオーチャードホール
の3回のみ。
で、2月11日(日)の大阪・フェスティバルホールで行われるコンサートに、
先行予約の申し込みをし、当選。
やっとチケットを手に入れることができたのだった。
ちなみに、チケットの料金、なぜ8940円なのか分ります?
そう、8940(ヤ・ク・シ・マル)なんですね~(笑)


2月11日(日)
海抜0メートルから登る「六甲山」(最高峰)を終えて、
向かった先は、大阪フェスティバルホール。
今回の関西遠征の真の目的は、
「薬師丸ひろ子コンサート2018」だったのだ。(コラコラ)

かなり早めに会場に到着。




いよいよだ。


なんだかすごいところだ。(笑)
(この階段の横にはエスカレーターもある)


階段を上がると、コンサート会場入り口。
右側の長椅子には、私よりも早く来た人たちが座って待っていた。


午後5時に開場。
(コンサートは撮影禁止なので、私が撮った写真はここまで)


以下の写真は、過去のコンサートのときのものを使用させて頂いた。


まだ東京での2回のコンサートが残っているので、
詳しい事は書けないが、
15分の休憩をはさんで、
18:00から20:40まで、
たっぷりと薬師丸ひろ子の歌声を堪能することができた。
これまでのコンサートでは、休憩を入れていなかったそうだが、
今回から15分の(トイレ)休憩を入れることにしたそうだ。
(観客の年齢層を考えてのことかな?)
その分、閉演時間が遅くなっているので、
東京でのコンサートに地方から日帰りしようと思っていらっしゃる方は、
時間に余裕のある計画を立てられた方がいいでしょう。

どの曲を歌ったか……も、
これから東京のコンサートに行く人の楽しみを奪うことになるので、ここには書かないが、
過去のヒット曲から、最新の曲まで、
素晴らしい選曲がなされていたと思う。


もうすでにネットでは情報が流れているが、
薬師丸ひろ子の20年ぶりのオリジナルアルバムリリースが決定している。
コンサート会場内で予約すると、特典として、
2月16日の東京・Bunkamuraオーチャードホール公演のライブ音源5曲を収めた非売品のCDがプレゼントされることになっている。
コンサートでは、このアルバムの中からも一曲歌っているので、
いつ歌ってくれるかも含めて、お楽しみに……


薬師丸ひろ子の素晴らしいところは、
過去のヒット曲を歌うときには、
今でも原曲のキーで歌い、
原曲のイメージを変えないように、
オリジナルに忠実に歌唱していること。
作曲家が書いた音符の一つ一つに、こだわりがあることを知っているので、
自分流にアレンジして歌うことはせず、楽譜に忠実でいたいというのもあるが、
それぞれの歌は、薬師丸ひろ子の手を離れて、
それぞれの聴き手のものになっているので、
それぞれの想い出に寄り添えるような歌い方にしているそうだ。


「懐かしのメロディー」というようなTV番組を観ると、
昔の面影がまったくない歌手が、
声が出ないからか、勝手に編曲して、
オリジナルとはかけ離れた歌い方をしていたりする。
「そこまでして出演しなくていいから、昔の映像を流してくれよ」
と言いたくなるような惨状で、(笑)
そういうシーンを多く観ているので、
薬師丸ひろ子の歌う姿勢には感心させられた。
高音を保つために声楽家のレッスンを受けているが、
訓練して歌が上手くなることも大事だが、
自分らしさを失わないようにも気をつけているそうだ。


大ヒットした「セーラー服と機関銃」を歌っているときは、
会場から手拍子が沸き、
薬師丸ひろ子の目に光るものが見えたような……

極私的にいちばん好きな曲は、「メイン・テーマ」。
この曲のイントロを聴くだけで、胸がキュンとなる。
もちろん、歌ってくれました。


アンコールのときは、
なかなか再登場しないので、
粘り強く手を叩き続けてね。(笑)
たぶん、衣装替えに時間がかかっていると思うのだが……
アッと思うような衣装で出てくるので、お楽しみに。

ちなみに、
「薬師丸」という姓は、
全国でも20人くらいしかいない珍しい姓だが、
佐賀と縁があり、
彼女自身は東京出身だが、
「薬師丸」姓は肥前国佐賀郡薬師丸邑にルーツがあると言われている。
現在も、佐賀県佐賀市金立町に、薬師丸という地名があるので、


いつか薬師丸ひろ子にも来てもらいたい……と思うが、
今のところ、東京と大阪でしかコンサートをやっていないので、
せめて、福岡あたりでライブをやって欲しいな。(願望)


とにもかくにも、
本当に薬師丸ひろ子という女優が存在していたという歓び、
(もしかしたら想像上の人物で、実際にはいないのではないかと思うときもあった)
憧れの女優・薬師丸ひろ子と同じ空間にいることができた喜び、
薬師丸ひろ子の美しい歌声を聴くことができた悦び……
を堪能した2時間40分であった。
感謝。

映画『今夜、ロマンス劇場で』 ……綾瀬はるかが美しく、映画愛に溢れた感動作……

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映画監督を夢見る青年・健司(坂口健太郎)が、
密かに想いを寄せるのは、


通い慣れた映画館・ロマンス劇場の映写室で見つけた、
古いモノクロ映画のお姫様・美雪(綾瀬はるか)。


今は誰も見なくなったその映画を、
毎日のように繰り返し見ていた健司の前に、ある日奇跡が起きる。
美雪が健司の目の前に突然現れたのだ。


その日から二人の不思議な同居生活が始まった。


モノクロの世界しか知らない美雪に、
カラフルな現実世界を案内する健司。


同じ時間を過ごす中で、二人は次第に惹かれ合っていく。


しかし、美雪にはある秘密があった。
現実の世界に来るための代償で、人のぬくもりに触れたら美雪は消えてしまうのだ。


そんな中、美雪は、
映画会社の社長令嬢・塔子(本田翼)が健司に想いを寄せていることを知る。


好きだから触れたい、
でも触れられない……
この切ない真実に、二人はどう向き合い、そんな答えを出すのか……



映画を見た感想はと言うと、
面白かったし、
感動もさせられた。
綾瀬はるかが、とびっきり美しかったし、
もうそれだけで“見る価値あり”だと思った。
もし、この映画を「見ようか」「見まいか」と迷っている方がおられたら、
「見る」ことをお薦めする。
予備知識なしで見た方が、感動が大きいと思うからだ。
映画愛に溢れた映画なので、
映画ファンなら、きっと楽しんでもらえると思う。



ここからは、ちょっとネタバレ気味になります。


だが、不幸にして、
ある程度の予備知識なくしては見ることができないという、
用心深く、疑い深い方がおられましたら、
以下の文章を読んで、判断してもらいたい。

映画館や映画会社、あるいは映画そのもの題材にした作品は案外多い。
洋画の名作には、
『サンセット大通り』(1950年)
『雨に唄えば』(1952年)
『フェリーニの8 1/2』(1963年)
『軽蔑』(1963年)
『映画に愛をこめて アメリカの夜』(1973年)
『カイロの紫のバラ』(1985年)
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989年)
などがあるし、
邦画でも、
『蒲田行進曲』(1982年)
『キネマの天地』(1986年)
『虹をつかむ男』(1996年)
『オリヲン座からの招待状』(2007年)
『シグナル〜月曜日のルカ〜』(2012年)
など、思いつくままに挙げても、かなりの数になる。

だから、この手の作品は、アイデアがほぼ出尽くしていて、
過去の作品にどうしても似てしまう。
本作『今夜、ロマンス劇場で』も、
「スクリーンからキャラクターが飛び出すのは『カイロの紫のバラ』の真似ではないか?」
「白黒の世界からカラーの世界へ変化は『カラー・オブ・ハート』のアイデアを盗んでいるのではないか?」
とか、すでにそういう批判をしている映画評論家もいる。
綾瀬はるかの本作での衣裳など見ていると、
(クラシカル&カラフルなドレス姿を25変化している)
『ローマの休日』など、一連のオードリー・ヘプバーンの作品を思い浮かべる人も多いのではないかと思われる。
言い出したらキリがないほど。


では、実際、制作側の意図はどうなのか?
これが、そういった批判はすべて“織り込み済み”というほどに、
あらゆる作品を調べ、参考にしていたのだ。
健司と映画館主との関係は、『ニュー・シネマ・パラダイス』




映画の世界と現実世界を繋ぐファンタジックな設定は、『キートンの探偵学入門』や『カイロの紫のバラ』




王女と身分の違う青年が恋におちるのは、『ローマの休日』




落雷によって変化が生じるのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』




劇中劇「お転婆姫と三獣士」のモデルは、『オズの魔法使い』や『狸御殿』シリーズ




北村一輝が演じるスター俳優・俊藤龍之介の愛称ハンサムガイは、日活のガイシリーズ




そして、美雪と健司のガラス越しのキスシーンは、『また逢う日まで』というように、




むしろ、ありとあらゆる作品の良い所を抽出し、昇華し、
絞り出したような作品になっているのだ。
この脚本を書いた宇山佳佑も素晴らしいし、
演出した武内英樹も優れている。


あらゆる名作を参考にし、
いろいろな要素を詰め込んではいるが、
構造はシンプルで、一言で表現するならば「映画愛」である。
それは、美雪が、映画の中から飛び出して、こちらの世界に来た理由を語る場面に集約されている。
美雪が語った言葉を並べてみる。

「……逢いたかったんだ」

「お前に逢いたかったから……」

「昔はたくさんの人がわたしのことを観てくれた。でも一人いなくなり、二人いなくなり、結局そのうち誰もいなくなってしまった。仕方のないことだと分っていた。それがわたしの宿命だということも。でも――」

「でも怖かったんだ。このまま皆の記憶から消えていくことが……」

「そんなとき、お前はわたしを見つけてくれた」

「こんなわたしでも、まだ誰かを喜ばせることができる。そう思うと、嬉しくてたまらなかった……」

「ずっとあの日が続いてほしかった。でも、もうすぐお前に逢えなくなると知って一日逢いたくなってしまったんだ。逢って、最後に言いたかった。見つけてくれてありがとうって……」

この他にも、本作には名言がちりばめられていて、
映画館主の本多がつぶやいた言葉で、こういうのがある。

「人の記憶に残れる映画なんてほんのわずかだ。あとのほとんどは忘れられて捨てられちまう。誰かを幸せにしたくて生まれてきたはずなのに」

美雪が出演した映画も廃棄されていたのだが、
健司が見つけてくれた。
何度も何度も自分を見てくれた。
「見つけてくれてありがとう」
という言葉は、美雪の言葉であり、
映画自身の言葉でもある。
美雪は謂わば“映画の化身”と言えるのだ。


序盤、健司がつぶやいた、

「どんな映画にもいいところは必ずあるんですよ」

という言葉も忘れがたい。
私も、映画を見るとき、
なるべく“いいところ”を見ようと思っている。
それは、このレビューを書く際の心構えにもなっている。

映画愛に溢れ、
名言がちりばめられ、
綾瀬はるか史上、一番美しい綾瀬はるかを見ることができる映画『今夜、ロマンス劇場で』。
映画館で、ぜひぜひ。

天山 ……美しい雪景色と、雄大な展望と、咲き始めたマンサクの花を楽しむ……

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久しぶりに天山に登ることにした。
とは言っても、2週間ぶりだけどね。
TV「ボクらの時代」を観て、
7:30頃に車で家を出る。
天川登山口に向かうが、
途中から道はアイスバーンになっていた。
この辺りから歩いて行くことにする。


多分、雪山だろうと思って、登山靴も雪山仕様。


滑らないように気をつけて登って行く。


道の脇には、氷の芸術品が……


左の氷筍は、長さが1mくらいあった。
剱のよう。


大きな器みたいなものもあった。


ゆっくり登って行く。


もうすぐ登山口。


天川登山口に到着。
さあ、もう一息。


登山道には、雪がたっぷりある。


太陽が雪面を輝かせる。


プチ氷瀑と、


氷が創り出す芸術的な模様。


まだこれほど雪が残っているとは……


雪と格闘しながら登って行く。


だが、山頂に近づくと、雪がなくなった。


天山山頂に到着。


今日は、遠望が効き、
くじゅうや、


阿蘇山も見ることができた。


山頂に雪はなかったが、
山頂直下の南側には、まだたっぷり雪が残っていた。
雪原越しに。佐賀平野をパチリ。


佐賀平野の上空に、バルーンがぽっかり浮かんでいた。


雲仙や、多良山系の山々も見える。


こんな風景が大好きだ。


あめ山も美しい。


さあ、稜線散歩。
この辺りは雪がないが、


少し歩くと、縦走路には雪がたくさん残っている。


雪山である。


こんな風景を見ると、
夏の北アルプスを思い出す。


いいね~


雪も深くて、


膝くらいまで埋まったりする。


家から近い山で、こんな風景を見ることができるなんて、
なんて幸せなんだろう。


いつもはこの辺りで引き返すのだが、
今日はもう少し先まで行ってみよう。


楽しくて仕方がない。


たっぷりの雪と彦岳を激写。
今日はここで引き返す。


いつもの場所でランチ。


本日の「天山北壁」。


帰りに、秘密の散歩道へ寄ってみる。
寒い日が続いていたので、
オオキツネノカミソリの葉は少しだけ顔を出していた。


夏が楽しみ。


天山のマンサクも開花が遅れるのではないかと心配していたのだが、
咲き始めていたので、一安心。


ズーム。
いいね~


まだ蕾が多い。


カワイイ。


木々の枝の間からパチリ。


暖かい日が続けば、きっと、一気に開花するだろう。


今日も「一日の王」になれました~

映画『ミッドナイト・バス』 ……竹下昌男監督によって丁寧に丁寧に創られた傑作……

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昔、『ジャンプ』(2004年)という映画を見たことがある。
佐藤正午の小説を映画化したもので、
ネプチューンの原田泰造が主演し、
牧瀬里穂や笛木優子などが共演していた。
佐藤正午の友人でもある竹下昌男の監督デビュー作であった。
佐藤正午の『ジャンプ』は好きな小説だったし、
ロケが佐賀県内でも行われたという興味も手伝って、
かなり期待して鑑賞した記憶がある。
地味だが、丁寧に創られた作品で、
愛すべき小品とも言うべき佳作であった。


それから10数年の歳月が流れたが、
この『ジャンプ』を監督した竹下昌男の、2作目がようやく完成した。
それが、本日紹介する映画『ミッドナイト・バス』である。

【竹下昌男】
1960年生まれ、大分県出身。
CF制作会社のプロダクション・マネージャーを経て、
東陽一監督『ジェラシー・ゲーム』(1982年)でフリーの助監督となる。
その後、
藤田敏八監督『リボルバー』(1988年)、
大林宣彦監督『青春デンデケデケデケ』(1992年、『はるか、ノスタルジィ』(1993年)、
原田眞人監督『バウンス ko GALS』(1997年)、
エドワード・ヤン監督がカンヌ国際映画祭監督賞を受賞した『ヤンヤン 夏の想い出』(2000年)など多数の作品に参加、助監督としてキャリアを積む。
1993年以降、
『乳房』(1993年)、『絆-きずな-』(1998年)ほか、主に根岸吉太郎監督に師事する。
2004年、長編映画『ジャンプ』で監督デビュー。
新藤兼人賞銀賞、第8回みちのく国際ミステリー映画祭・新人監督奨励賞グランプリを受賞。
2011年、大林宣彦監督の監督補佐として『この空の花 -長岡花火物語』(2012年)の制作に参加、
AKB48のミュージック・ビデオ「So long !」(2013年)のセカンドユニット・ディレクターも務める。

キャリアは長いのに、監督2作目とは、あまりに寡作過ぎないか?
とはいえ、『ジャンプ』の監督なら、「さもありなん」とも思った。
竹下昌男監督は語る。

「新潟って面白いな……」
そう思ったのは、大林宣彦監督の映画『この空の花 -長岡花火物語』の撮影をしていたときでした。
日差し、空の色、流れる雲……
目の前に広がる一見何気ないロケーションが、
ワンカットの中でいろいろな表情を魅せる。
もし機会があったら、ここで映画を撮りたいと思いました。
それも、どうせなら冬の新潟を。
その後、プロデューサーから持ちこまれた伊吹有喜さんの小説は、
そんな新潟を舞台にした希有な作品でした。


最初はなぜか高倉健をイメージしながら、
映画に出来るかどうか、何度も読み返したのを覚えています。
主演の原田泰造くんとは『ジャンプ』に続いて二度目の顔合せです。
彼の出演したものはだいたい観てますが、実は好いと思ったことが一度もない。
監督として「泰造ならもっとやれるはず」という確信はあったのですが、
今回起用して、改めて俳優としての可能性を感じました。
こんなものじゃない、もっといろいろやれるぞ、と。
そして何より、僕自身がまだまだ満足出来ていない。
泰造には、いっその事トリュフォー作品のジャン=ピエール・レオのようになってもらおうかと思ってるんです。
監督デビューから十三年、
『ミッドナイト・バス』のように長い夜を走り続けてきましたが、
ようやく「撮れない」呪縛から解放されそうな気がします。

なんだか、“誠実”を絵に描いたような人柄である。
今回は、自らプロデュースを兼ねての企画だそうで、
『ミッドナイト・バス』も大いに期待できると思った。
この手の地味な映画は、普通は佐賀県での上映はなく、
福岡あたりまで行かないと見ることのできないのだが、
今回は、イオンシネマ佐賀大和でも上映されるという。
期待に胸を膨らませて映画館へ向かったのだった。



主人公の高宮利一(原田泰造)は、
東京での過酷な仕事を辞め、
故郷の新潟で長距離深夜バスの運転士として働く中年の男だ。


ある夜、利一がいつもの「東京発・新潟行」のバスを発車させようとしたその時、
滑り込むように乗車してきたのが、
16年前に離婚した妻・美雪(山本未來)だった。
突然の、思いがけない再会。
美雪は東京で新しい家庭を持ち、
新潟に独り暮らしている病床の父親(長塚京三)を見舞うところだった。


利一には、東京で定食屋を営む恋人・志穂(小西真奈美)がいる。


その志穂との再婚を考えていた矢先、
長男の怜司(七瀬公)が、東京での仕事を辞めて帰ってくる。


娘の彩菜(葵わかな)は、友人とルームシェアしながら、
インターネットでマンガやグッズのウェブショップを立ち上げていたが、
実現しそうな夢と、結婚の間で揺れていた。


そして、利一は、
元妻の美雪が、夫の浮気と身体の不調に悩み、
幸せとはいえない結婚生活を送っていると知る。


利一と美雪の離婚で、一度ばらばらになった家族が、
今、それぞれの問題を抱えて、故郷「新潟」に集まってくる……
16年という長い時を経て、やるせない現実と人生への不安が、
再び、利一と美雪の心を近づけていく。
利一とは違う場所で、美雪もまた、同じ分の歳月を生きていた。
だけど、どんなに惹かれ合っても、
一度分かれてしまった道は、もう二度と交わらないこともわかっている。
この数ヶ月、
志穂といた利一は美雪を思い、
美雪といた利一は志穂を思った。
利一には恋人の志穂が、
美雪には夫とまだ幼い息子がいる……
奇跡のような再会から数ヶ月が過ぎ、小雪が舞う中を、
美雪は利一に見送られ、東京行きの深夜バスに乗る。
ひとりになった利一は、
これから自分が進むべき道を考えるのだった……



上映時間が2時間37分となっていたので、
いろんな意味で心配していた。
やっとこぎつけた2作目ということで、
「たくさんのものを詰め込み過ぎていないか?」
「冗長になっていないか?」
等々。
その心配は杞憂であった。
丁寧に、丁寧に創られてはいるが、
冗長さはまったくなく、
上映時間の長さはまったく気にならなかった。
むしろ、「もっと見ていたい」と思ったほど。
映画の中にどっぷりと浸かることができた。



息子や娘との関係に苦悩する新潟の方では、“父性”を、
定食屋を営む志穂の待つ東京の方では、“男性”を、
バスが関越トンネルを抜ける度に切り替えざるを得ない利一なのだが、
その利一を原田泰造が実に巧く演じている。
この長距離深夜バスの運転手を演ずるにあたり、撮影に先立って、
原田泰造は大型自動車免許を取得したそうだ。


新潟でのシーンと、東京でのシーンを繋ぐのは、
原田泰造が演じる利一が、バスを運転する姿だ。


このバスが走っているときのシーンで流れるのが、


ヴァイオリニスト・川井郁子が演奏する「ミッドナイト・ロード」。
この音楽が実に好い。



利一の恋人で、東京で定食屋を営む志穂を演じた小西真奈美。


昔から小西真奈美のファンなので、
本作『ミッドナイト・バス』の存在も、
彼女のブログで知った。
小西真奈美が出演しているなら見たいと思ったし、
調べてみると、『ジャンプ』の監督の2作目ということで、
さらに興味も増した。
志穂を演ずる小西真奈美は、
利一をひたすら待っている“待つ女”を演じているのだが、
観客の心まで切なくなるほどに繊細に演じていて、素晴らしかった。
『のんちゃんのり弁』(2009年)のときのような元気娘の役もイイが、
『阿弥陀堂だより』(2002年)や『行きずりの街』(2010年)のときのような、
切なさを感じさせる役の方が、一層彼女の持ち味が発揮されるような気がした。


地味な作品の中にあって、
透明感のある美しさ華やかさを持っている小西真奈美の存在は、
一際価値あるものに思えた。



利一の元妻・美雪を演じた山本未來。
なんだか、映画では久しぶりに見た気がするのだが、
調べてみると、『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』(2009年)以来であった。
山本未來に関しては、(失礼ながら)それほど期待していなかったのだが、
これが、びっくりするほど素晴らしい演技をしていたのだ。
利一との、利一の母親との過去や、
現在の夫とのことなど、
何も言わずとも解るような繊細な演技で、
とても惹かれたし、魅せられた。
「一日の王」映画賞の最優秀助演女優賞の候補になるであろう名演であった。



利一の娘・彩菜を演じた葵わかな。
極私的に、
フジテレビ系のバラエティ番組『痛快TV スカッとジャパン』や、
映画『くちびるに歌を』(2015年)、『サバイバルファミリー』(2017年)などで注目していた彼女だが、
連続テレビ小説『わろてんか』(2017年10月7日~2018年3月31日)に主演が決まり、
アッと言う間に国民的女優になってしまった。
本作『ミッドナイト・バス』の撮影時は、
これほど注目される前であったと思われるが、
現在の人気が「さもありなん」と思わせるほどの好い演技をしている。
朝ドラに主演すると、メジャーな作品からのオファーが多くなると思うが、
これからも、こういった地味な作品にも出演してほしい……と思った。



新潟~東京間を走る長距離深夜バスの運転手を主人公にした、
その家族や、恋人を描いた、小さな小さな物語である。
その小さな物語を、竹下昌男監督は、
丁寧に丁寧に演出している。
私はこんな作品を愛する。
映画館で、ぜひぜひ。

近くの里山 ……(遅ればせながら)バイカイカリソウが咲き始めたよ……

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今日は公休日であったが、
何かと忙しい一日で、
寸暇を縫って近くの里山を歩いてきた。
まず向かったのは、セリバオウレンの群生地。
もうたくさん咲いていて、早くもピークを迎えていた。


でも開き始めのものもあって、


もうしばらくは楽しめそう。


近くの里山でセリバオウレンを見ることのできる“幸せ”をかみしめる。


ずっと見ていても飽きることがない。


本日のベストショット。


次に、バイカイカリソウの早咲きが見られる場所へ移動する。
今年の冬は寒い日が続いていたので、
〈まだ咲いていないかもしれない……〉
と思ったが、1株だけ咲いて私を待っていてくれた。


極端に早く(1月に)咲く年もあるが、
今年は平年並み(2月に開花)かな。
それでもバイカイカリソウの一般的な開花時期(4~5月)よりはかなり早い。


以前は、この早咲きのバイカイカリソウを紹介するとき、
“登吾留山”ということで、
花の写真だけでは味気ないと思って、
ダミーの“風景の写真”を掲載していたのだが、
珍花ハンターたちが、このダミーの風景の場所を特定し、
訪れているという情報を友人から知らされた。
このダミーの風景の場所は、A神社の周辺なのだが、
はっきり言って、早咲きのバイカイカリソウが咲く場所は、A神社の周辺ではない。
(まあ、A神社周辺も、他の場所よりは早く咲くには咲くが……)


珍花ハンターたちを惑わせないように、
今回からは、花の写真のみにする。


誰でも、
バイカイカリソウが咲く山に、1月、2月に何度も登れば、
どこかの山でいつかは早咲きの花に逢えるのではないか……と思うのだが、
如何。

映画『サニー/32』 ……『凶悪』の白石和彌が撮った北原里英のアイドル映画……

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NGT48でキャプテンを務める北原里英の映画初主演作である。
初主演作に、白石和彌監督作品を選んだのは、北原里英本人だという。
私から言わせると、
「スゴイ!」
としか言いようがない。
白石和彌監督といえば、
『凶悪』(2013年)
『日本で一番悪い奴ら』(2016年)
『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)
など、ある意味ヤバイ作品ばかりものしている監督なのである。
(タイトルをクリックするとレビューが読めます)


なぜ白石和彌監督作品だったのか?
北原里英は語る。

(映画のスーパーバイザーを務める)秋元(康)先生から、
「北原はどんな映画に出たいの?」
と訊かれたとき、『凶悪』を見た後だったんです。
すごく面白くて、心に残っていたので、
「凶悪のような映画に出たいです」
と言いました。

「いやはや」である。(笑)
白石和彌監督の方も、

秋元(康)先生から、
「北原さんで撮ってください」
とお話をいただいて。
僕はどこかでアイドル映画をやりたい思いがあったので、
せっかくのチャンスですし、やろうと。
だから、うれしかったです。
まして、オリジナルでやれるのも、昨今なかなかないですし、
「日本のトップアイドルを好きなようにしていいよ」
みたいな話ですから。(笑)

と、快諾。
脚本は、オリジナルということで、
白石和彌と高橋泉の『凶悪』コンビが再タッグを組み、
ネット上で神格化された殺人犯の少女「サニー」を信奉する男たちに誘拐・監禁された女性教師の壮絶な運命を描いたサスペンスドラマに仕上げたのだという。
この話を聞いただけで、
私はもうワクワク感が止まらなかった。(笑)
佐賀県には上映館がなかったので、
博多駅のビルの9階にあるTジョイ博多まで出掛けたのだった。



冬の新潟のある町で、
仕事も私生活も振るわない中学校教師・藤井赤理(北原里英)は、
24歳の誕生日を迎えたその日、何者かに拉致された。


やったのは、
柏原(ピエール瀧)と、小田(リリー・フランキー)の二人組で、
雪深い山麓の廃屋へと連れ去り、彼女を監禁する。


小田は嬉々としてビデオカメラを回し、


柏原の方は、
「ずっと会いたかったよ、サニー……」
と、赤理のことを何故か“サニー”と呼ぶのだった。


“サニー”とは、2003年に世間を騒がせた、
「小学生による同級生殺害事件」の犯人の通称だった。
当時11歳だった小学生女児が同級生を殺害したというもので、
突然、工作用のカッターナイフで首を切りつけたのだ。
事件発覚後、
マスコミが使用した被害者のクラス写真から、加害者の女児の顔も割りだされ、
いたいけで目を引くルックスゆえに、
「犯罪史上、最も可愛い殺人犯」
とたちまちネットなどで神格化され、
狂信的な信者を生み出すことになった。
出回った写真では、
独特の決めポーズ(右手が3本指、左手は2本指でピースサインをつくる)も話題を集め、
それは信者たちの間で「32(サニー)ポーズ」と名付けられ、
加害女児自体も“サニー”と呼ばれるようになった。


奇しくも、この“サニー”の起こした事件から14年目の夜に、
二人の男によって拉致監禁された赤理。
柏原も小田もカルトな信者で、
二人は好みのドレスに着替えさせ、
赤理の写真や動画をネット上の「サニーたんを愛する専門板www」にアップ。


赤理は正気を失っていきながらも、
必死に陸の孤島と化した豪雪地帯の監禁部屋から脱出を試みる。
が、それは驚愕の物語の始まりにすぎなかった……



映倫区分は「PG12」ということで、
アイドル映画でありながら、
子供は見てはいけないのである。(笑)
大人の私は、とても面白く見たが、
衝撃的なシーンも多く、


北原里英のファンにとっては、
辛く、試練の映画だったかもしれない。(笑)


事実、ファンらしき人々が多く書き込んでいるように見える「Yahoo!映画」のユーザーレビューなどでは、酷評している人が多く、評点も低い。
だから、
極私的感情が入ったこの手のユーザーレビューなどには惑わされずに見た方がイイ。
『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』ほどではないにしろ、
ちゃんと白石和彌監督作品になっているし、
これまで白石和彌監督作品を楽しんできた人なら、
この『サニー/32』も間違いなく楽しめることだろう。



拉致された中学校教師・藤井赤理を演じた北原里英。


まずは、白石和彌を自らの初主演映画の監督に選んだことを褒めたい。
そして、事前に『凶悪』という作品を見ていたということも褒めたい。
2012年だったか、
映画『悪の教典』の「AKB48特別上映会」で、大島優子が、
「私はこの映画が嫌いです」
と、涙を浮かべて退場したが、
普通、アイドルは、この手の映画は嫌うものである。
それが、自ら望んで『凶悪』の世界に入って行くとは、見上げた“心意気”いや“志”だ。
映画は2017年2月2日、北原が所属する「NGT48」の拠点でもある新潟でクランクインし、
厳寒のロケは想像以上に過酷だったという。


横殴りで吹き付ける雪、風、霙。
おまけに、サニー信者たちから祀り立てられるヒロイン役の北原は、
アイドルの舞台衣装のような薄着で、しかも、素足同然。
インタビューで、
「寒くて泣いたのは、生まれて初めてでした」
と語っていたが、それほど過酷だったのであろう。


正直、演技は「まだまだ」であるが、
頑張りは見る者にも伝わってきたし、
女優としての“覚悟”も感じられ、
今後の活躍にも大いに期待できる熱演だったと思う。


ことに、それまでオドオドしていた赤理が、
「サニー」としてのスイッチが入った途端、
「サニー」になりきって小田や柏原などをいたぶるシーンは秀逸であった。


(このシーンを見るだけでも本作を見る価値はあると思う)
私としては、「一日の王」映画賞の新人賞候補にリストアップしておくつもりでいる。



柏原を演じたピエール瀧と、


小田を演じたリリー・フランキー。


言わずと知れた傑作『凶悪』コンビで、
『凶悪』の世界を望んで挑んできた北原里英を迎え撃つ側でありながら、
北原里英の強力な“助っ人”でもあった。
赤理を拉致した凶悪犯なのだが、
なんだか北原里英と共演していることが嬉しそうで、
これまでの作品とは違った雰囲気を醸し出していた。
「サニー」としてのスイッチが入った赤理(北原里英)からいたぶられるシーンでは、
特に、小田を演じたリリー・フランキーが嬉しそうで、(爆)
彼が奇声を発する度に、私は笑いをこらえるのに必死だった。



もう一人の「サニー」を演じた門脇麦。


出演シーンは短いものの、
見る者に鮮烈な印象を残す。
さすが、門脇麦。
好きな女優なので、本作でも見ることができて嬉しかった。
彼女を見ていたら、
〈北原里英が目指すべき女優は、門脇麦なのかもしれない……〉
と思わされた。
二人共、“唇”が印象的だし、共通項も多いような気がするからだ。
ただし、門脇麦の高みへ到達するには、まだまだ試練が必要だ。
門脇麦はすでにそれほどのレベルに達している。



北原里英は、殺人犯という役を演じてみて、

監督に「アイドル映画にしたい」と言われたんですけど、
脚本を読んだとき「アイドル映画じゃない!」と思いました。(笑)
でも完成してみて、
赤理がネットを通じて崇拝されていくという意味で、アイドル映画だなと思いました。

と語っている。
現代はネットによって人との付き合い方が変わってきており、
社会のゆがみを曝け出した本作『サニー/32』は、
紛うことなきアイドル映画なのかもしれない。


北原里英のファンも、
そういうアイドル映画を選択した彼女を誇りに思うべきだし、
それが真のファンの姿なのではないかと私は考える。

舞台『アンチゴーヌ』(北九州芸術劇場) ……蒼井優に魅せられて……

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私が購読している新聞には、
「きょうの言葉」というコラムがあって、
毎日、楽しみに読んでいるのだが、
2月25日(日)の言葉には、
格別の共感を抱いた。


「それでは、またね」と言って二度と会わないことの方が圧倒的に多いんだよ。(小池一夫)

突然、友の訃報を聞く。
何年も年賀状の交換しかしていなかった。学生時代には毎日のように一緒にいて、若気の至りで苦い体験も一緒にした。悪友だった。
就職を機会に、住むところも離ればなれになり、何年かに一度、クラス会や共通の友人の冠婚葬祭でしか会うことがなくなっていた。
それでも、そんな集まりがあれば、会ったとたん、風貌こそ白髪が増えて、変わったとしても、一瞬で何十年前にタイムスリップして、思い出話や昔ながらの馬鹿話をすることができた。
いつだってそうだった。
あのときの別れ際にも「じゃあ、またね」と軽く手を振って別れたのだった。
また会える。それを信じて疑わなかった。
しかし、いつか別れがやって来る。そのことは知識としては知っていたはずだった。けれど、自分たちにそんな時が訪れると考えることはなかった。
別れは「さよなら」と宣言することの方がまれなのだと、漫画原作者の小池一夫さんもいう。
会いたい人、好きな人には、会いたいと思ったときに会っておこう。(小説家・阿川大樹)


「会いたい人、好きな人には、会いたいと思ったときに会っておこう」
いつも私が言っていることと同じだ。
そうなのだ。
短い人生、
逢いたい人には逢っておいた方がイイ……
ということで、
今年(2018年)から始めた「逢いたい人に逢いに行く」という企画。
第1弾は、E-girlsのパフォーマーであり女優の石井杏奈、
第2弾は、女優でボーカリストの薬師丸ひろ子であった。
そして、第3弾の今回は、女優の蒼井優。
死ぬまでに一度は彼女の生(ナマ)の芝居(演技)を観てみたいと思っていた。
そのチャンスが訪れたのだ。
昨年秋、
彼女が主演する舞台『アンチゴーヌ』が、
九州でも観ることができるという情報を入手したからだ。


TOKYO 2018年1月9日(火)~27日(土)
新国立劇場 小劇場〈特設ステージ〉

MATSUMOTO 2018年2月3日(土)~4日(日)
まつもと市民芸術館〈特設会場〉

KYOTO 2018年2月9日(金)~12日(祝・月)
ロームシアター京都 サウスホール〈舞台上特設ステージ〉

TOYOHASHI 2018年2月16日(金)~18日(日)
穂の国とよはし芸術劇場PLAT〈舞台上特設ステージ〉

KITAKYUSHU 2018年2月24日(土)~26日(月)
北九州芸術劇場 大ホール〈舞台上特設ステージ〉

北九州芸術劇場での公演は、
2月24日(土) 18:30
2月25日(日) 12:30 17:30
2月26日(月) 12:30
の4回のみ。

北九州芸術劇場での公演がラストであるし、
ラストのラストである2月26日(月)の12:30からの回のチケットをゲット。
楽しみに2月26日(月)を待っていたのだった。

2月26日(月)
平日であったが、
あらかじめ私の公休日をこの日に変更し、休みを確保。
ワクワクしながら北九州へ向かったのだった。
着いたのは、リバーウォーク北九州。
なんだか、キャナルシティ博多と同じような雰囲気の商業施設だ。


このリバーウォーク北九州の6階に北九州芸術劇場がある。
すぐそばに小倉城があり、


よく見えた。


違う角度からもパチリ。


さあ、いよいよだ。


開場前には、たくさんの人が並んでいた。


今回の舞台『アンチゴーヌ』は、
客席中央に十字(クロス)の舞台があり、
観客が俳優を取り囲む形式での上演。


私は、Aブロックの2列目の1番という、
好位置をゲット。


12:30になり、舞台に俳優が現れた。


古代ギリシャ・テーバイの王オイディプスは、
長男ポリニス、
次男エテオークル、
長女イスメーヌ、
次女アンチゴーヌという、
4人の子を残した。
ポリニスとエテオークルは、交替でテーバイの王位に就くはずであったが、
王位争いを仕組まれて刺し違え、この世を去る。
その後、王位に就いたオイディプスの弟クレオン(生瀬勝久)は、
亡くなった兄弟のうち、エテオークルを厚く弔い、
国家への反逆者であるとして、ポリニスの遺体を野に曝して埋葬を禁じ、
背く者があれば死刑にするよう命じた。
しかし、オイディプスの末娘アンチゴーヌ(蒼井優)は、


乳母の目を盗んで夜中に城を抜け出し、
ポリニスの遺体に弔いの土をかけて、捕えられてしまう。


クレオンの前に引き出されるアンチゴーヌ。
クレオンは一人息子エモン(渋谷謙人)の婚約者で、姪である彼女の命を助けるため、


土をかけた事実をもみ消す代わりにポリニスを弔うことを止めさせようとする。


だが、アンチゴーヌは、
「誰のためでもない。わたしのため」
と言い、兄を弔うことを止めようとしない。
そして自分を死刑にするようクレオンに迫る。


懊悩の末、クレオンは国の秩序を守るために苦渋の決断を下す。
姉イスメーヌ(伊勢佳世)に今生の別れを告げたアンチゴーヌに、
生き埋め刑執行の刻が近づく。


穴に入れられ土をかけられていくアンチゴーヌ。
そして入口をふさぐ最後の石が置かれようとしたとき、
墓の中からアンチゴーヌではない声が聞こえてくる。
エモンがいつの間にか穴に入っていたのだ。
一度は助け出されたエモンだったが、
自ら命を絶ちアンチゴーヌと永遠の眠りに就く。
そして、エモンの死を知った王妃ユリディスも自害し、この世を去る。
そして、1人になったクレオンは、
早く大人になりたいという小姓に言う。
「ばかだな。大人になんかなっちゃいけないんだ……」


舞台と客席が近く、
俳優がすぐそばまで来て演技をする。
いきなり、蒼井優が、私から2mほどの場所で演技を始める。


歩き、走り、寝そべり、転がり、
舞台を縦横無尽に動き回る。
発せられる言葉にはよどみがなく、
表情は、刻々と変化する。
素晴らし過ぎて、彼女からもう目が離せない。
蒼井優という肉体が躍動し、
その彼女の生命力が舞台を覆う。


2時間10分ほどの上演時間で、
後半の約45分間は、
アンチゴーヌ(蒼井優)とクレオン(生瀬勝久)の二人だけの対話劇だ。
これが本当に素晴らしかった。
蒼井優と生瀬勝久の演技合戦。
まさに「口角泡を飛ばす」状態で、
口からつばきが飛び出すのが本当に見えるのだ。
すぐ近くで、それが行われているという衝撃。
緊張し、興奮し、
これほどまでに感動する舞台は久しぶりに観たような気がする。


蒼井優は素晴らしい女優だとは思っていたが、
生で演技を観ると、想像以上であった。
本当に彼女の舞台を観てよかったと思った。


昨年(2017年)は、
『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年10月28日公開)で、
各映画賞の主演女優賞を総なめにし、私を喜ばせてくれた。
今年(2018年)は12月に、
舞台『スカイライト』という主演作が控えているようだ。
もし近くでも上演されるようであれば、ぜひ観に行きたいと思っている。

蒼井優という素晴らしい女優と同時代に生きているという幸運、
この幸運に感謝したい。
今日も「一日の王」になれました~

映画『リバーズ・エッジ』 ……二階堂ふみを丸裸にした行定勲監督の傑作……

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1993年に雑誌「CUTiE」で連載されていた岡崎京子の同名漫画を、
行定勲監督が実写映画化したものである。
岡崎京子と言えば、
沢尻エリカ主演の傑作映画『ヘルタースケルター』(2012年)の原作者でもある。
蜷川実花が監督したこの『ヘルタースケルター』を、私は、
……沢尻エリカと寺島しのぶの覚悟が傑作を生んだ……
とのタイトルでレビューを書いた。(レビューはコチラから)
岡崎京子の世界観が好きで、
彼女の漫画を原作にした映画を見たいと、かねてより思っていた。
そこに、岡崎京子の最高傑作の呼び声も高い『リバーズ・エッジ』である。
主演は、二階堂ふみ、吉沢亮。
共演に、上杉柊平、SUMIRE、土居志央梨、森川葵。
見たいと思った。
で、福岡へ行ったときに、
福岡の映画館で鑑賞したのだった。
(佐賀のシアター・シエマでも上映中・3月9日迄)


女子高生の若草ハルナ(二階堂ふみ)は、


彼氏の観音崎(上杉柊平)が苛める同級生の山田(吉沢亮)を助けたことをきっかけに、
夜の河原へ誘われ、放置された“死体”を目にする。


「これを見ると勇気が出るんだ」
と言う山田に絶句するハルナ。
さらに、
宝物として死体の存在を共有しているという後輩でモデルのこずえ(SUMIRE)が現れ、


3人は決して恋愛には発展しない特異な友情で結ばれていく。


ゲイであることを隠し、街では売春をする山田(吉沢亮)。


そんな山田に過激な愛情を募らせるカンナ(森川葵)。


暴力の衝動を押さえられない観音崎(上杉柊平)。


大量の食糧を口にしては吐くこずえ(SUMIRE)。


観音崎と体の関係を重ねるハルナの友人ルミ(土居志央梨)。


閉ざされた学校の淀んだ日常の中で、
それぞれが爆発寸前の何かを膨らませていた。
そうした彼らの愛憎や孤独に巻き込まれ、
強くあろうとするハルナもまた、
何物にも執着が持てない空虚さを抱えていた。
そんなある日、ハルナは新しい死体を見つけたという報せを、山田から受ける……



行定勲は、よく分らない監督である。

『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年5月8日公開)
『北の零年』(2005年1月15日公開)
『春の雪』(2005年10月29日公開)
『クローズド・ノート』(2007年9月29日公開)
『今度は愛妻家』(2010年1月16日公開)
『パレード』(2010年2月20日公開)
『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』(2013年1月26日公開)
『真夜中の五分前』(2014年12月27日公開)
『ピンクとグレー』(2016年1月9日公開)
『ナラタージュ』(2017年10月7日公開)

など、これまでの監督作をこうして眺めても、そこに一貫したものがない。
だからといって、特色がないかといえば、
行定勲らしさに溢れているのだから、ますます分らなくなる。
『世界の中心で、愛をさけぶ』のようなヒット作もあるし、
『今度は愛妻家』のような感動作もある。(この作品は本当に泣けた)
『春の雪』のような文芸作品をものしたかと思えば、
熊本を舞台にした中編『うつくしいひと』(2016年3月4日公開)では、
2016年4月14日に発生した平成28年熊本地震を受け、
各地でチャリティー上映会を催したりもする。
素晴らしい監督である。
だが、監督としての評価となると、
(極私的には)それほど高いものではなかった。
そこへ、本作『リバーズ・エッジ』である。
行定勲監督と岡崎京子のミスマッチ的な組み合わせがうまくハマると、
意外な化学反応が起きるのではないかと期待していた。
そして、それは、予想を大きく上回るものであった。
原作の力もあろうが、
登場人物の一人ひとりのキャラが立っており、
面白く、興味深く鑑賞することができた。
「傑作」と言ってイイでしょう。



若草ハルナを演じた二階堂ふみ。


本作がベルリン国際映画祭でパノラマ部門のオープニング作品としてお披露目された際、
行定監督が、

僕らの青春時代に本当に神格化されるくらい影響を与えた漫画なので、映画化することには非常に勇気が要りました。しかし、隣にいる二階堂ふみから、その漫画を今の時代にあえて映画化しないか、今、日本ではどちらかというとわかりやすい映画がたくさんの若い人たちに観られることが多いのですが、もっとショックを与えるような映画になるのではないかという話があって、背中を押される形で映画化することにしました。

と語っていたが、
二階堂ふみが切望した本作の映画化であり、
彼女が切望したハルナの役であったらしい。
さらに、

二階堂ふみと出会って、彼女の「自分がハルナを演じるにはもう時間がない」という思いに僕らが火をつけられて、挑戦状を突きつけられたような気持ちになった。

とコメントしていたが、
1994年9月21日生まれの23歳(2018年2月現在)の二階堂ふみが、
女子高生のハルナを不自然なく演じるにはギリギリの年齢であると感じていたのであろう、
彼女が行定監督をせかす形で急ピッチで映像化されたことが窺える。
それだけに、二階堂ふみの想いが詰まった作品に仕上がっている。
私は、このレビューのタイトルを、
……二階堂ふみを丸裸にした行定勲監督の傑作……
としたが、
行定監督が二階堂ふみのすべてを本作で表現しているという意味もあるが、
二階堂ふみが、その言葉通り、全裸を晒しているという意味もある。
その(見事な)裸体は、
行定監督が望んだというよりも、
二階堂ふみの覚悟と見るべきなのかもしれない。
これほどの作品に出逢い、
それほどの覚悟で挑んだ作品だったのである。
今となっては、
TVの『ぐるぐるナインティナイン』の「ゴチになります」を卒業したのは、
当然のなりゆきだったと思わされる。
美味いものを喰って、笑っている場合ではなかったのである。



ハルナの同級生の山田一郎を演じた吉沢亮。


本作が傑作に成り得ているのは、吉沢亮がいたからこそである。
もっとも重要な役なので、彼以外では成功しなかったのではないか……
そう思わせるほどの演技をしていた。
時々、高良健吾ではないか……と思わせるほど似ているシーンがあり、
高良健吾のような素晴らしい男優に成長していくのではないかと期待を抱かせる。
これまでは仮面ライダーや学園ものに出演しているイメージであったが、
これからは、『リバーズ・エッジ』の吉沢亮と記憶されるだろう。



その他、
山田に過激な愛情を募らせるカンナを演じた森川葵、


大量の食糧を口にしては吐くこずえを演じたSUMIRE。


観音崎と体の関係を重ねるハルナの友人ルミを演じた土居志央梨の演技が素晴らしいし、
鮮烈な印象を残す。


まだいろいろ書きたいことはあるが、
出勤前なので、この辺で終えよう。

昨年(2017年)は、前半は不作であったが、
今年(2018年)は、のっけから傑作が続出している。
見たい映画が目白押し状態。
皆さんも映画館で、ぜひぜひ。

初めてお越し下さった方へ

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詩人で山のエッセイを多く書いた尾崎喜八(1892~1974)の著書に『山の絵本』(岩波文庫)というのがあります。
この本の巻末に、私の好きな「一日の王」という文章が収められていて、このタイトルを借りました。
「一日の王」という言葉は、元々はフランスの詩人ジョルジュ・シェーヌヴィエールの詩集の「一日の王の物語」からきているようです。

山に登るだけで、誰もが「一日の王」になれる……
山が好きな人には、実感として理解して頂けるのではないかと思います。
「一日の王」が手にするのは、お金や物ではない。
私有化できるものでもない。
だが、それら物質よりも、豪華で贅沢なものです。

美しい風景を眺め、可愛い花を見る。(視覚)
美味しい空気を吸い、岩清水を飲む。(味覚)
心地よい鳥のさえずりや、小川のせせらぎの音。(聴覚)
香しい花の匂いや森の匂い。(嗅覚)
土を踏む感触、木や岩の手触り。(触覚)

五感すべてで感じる幸福。
黄金のような時間。
これこそが、「一日の王」が得る宝であり、富だと思います。

「かくて貧しい彼といえども、価なき思い出の無数の宝に富まされながら、また今日も、一日の王たることができたあろう。」
尾崎喜八の「一日の王」はこの文章で締めくくられています。
機会があったら、ぜひ原文も読んでみて下さい。

と、難しいことを申しましたが、要するに、「山登りは楽しい」ということです。
登山と同様、映画を見ている時や、読書をしている時も至福の時間。
「一日の王」になれる貴重なひととき。
このブログは、いわば、至福の時間の記録です。
シンプルで、地味ぃ~なブログですが、時々でイイですから、遊びにきて下さいね。

映画『15時17分、パリ行き』 ……テロリストに立ち向かった3人の当事者が主演……

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クリント・イーストウッド監督作品である。
2015年8月に高速鉄道で実際に起きた無差別テロ事件を映画化したもので、
列車に乗り合わせていた3人のアメリカ人青年が、
テロリストに立ち向かう姿を描いたものである。
この映画の驚くべき点は、
列車に乗り合わせていた3人のアメリカ人青年、
アンソニー・サドラー、
レク・スカラトス、
スペンサー・ストーンの役を、
事件の当事者が演じていることにある。


しかも、
当時、列車に居合わせた乗客も出演させ、
撮影も実際に事件が起きた場所で行われたという。


そんな映画にはあまり出会ったことがないので、
単純に、
〈見たい!〉
と思った。
『15時17分、パリ行き』
というタイトルにも、興味をそそられた。
で、公開初日に、会社の帰りに、映画館へ駆けつけたのだった。


2015年8月21日、
オランダのアムステルダムからフランスのパリへ向かう高速列車タリスの中で、
銃で武装したイスラム過激派の男が無差別殺傷を試みる。




しかし、その列車にたまたま乗り合わせていた、
米空軍兵のスペンサー・ストーンと、
オレゴン州兵のアレク・スカラトス、
そして2人の友人である青年アンソニー・サドラーが、


男を取り押さえ、
未曾有の惨事を防ぐことに成功する。



あらすじを、こう紹介すると、
緊迫感溢れるテロ事件を、最初から最後まで活写したような、
単なるヒーロー譚のように思われるかもしれないが、
実際は、ちょっと違う。
上映時間は1時間34分と短いのだが、
このうちの大半(1時間以上)は、
スペンサー、アレク、アンソニーの3人が出会った少年時代や、






事件に遭遇することになるヨーロッパ旅行の過程を描いているのだ。


彼らが遭遇したテロ事件のシーンは、ほんの僅かしかなく、
その後、
フランス政府から彼らに勲章が贈られるシーンや、
郷里での祝賀パレードのシーンが続き、終わる。


さすがにこれでは観客が退屈するだろう……と思ったのか、
フラッシュバックのような感じで、テロ事件の模様を所々に挟んではいるが、
大半は青春ロードムービーのような感じで、
人によっては、
「期待したものと全然違う!」
と不満をぶちまけるかもしれない。
私はというと……
私もやや退屈であった。(笑)
イタリアで女の子と出逢って、
一緒に食事したり、名所巡りをしたり、




夜はクラブに行って踊り狂ったり、
あげくに二日酔いでへたり込んだり。(笑)


この映画はごく普通の人々に捧げた物語である。

と、イーストウッドは語っているが、

ごく普通の若者たちが、いかにしてテロリストに立ち向かうことができたのか……

を明らかにすることが、この作品のテーマなのだと思う。

『15時17分、パリ行き』というノンフィクションが出版されたとき、
クリスチャン・サイエンス・モニター紙が、

本書の著者たちがあまりに普通なので、読者は驚くだろう……
だが、古い格言によれば、
英雄とは、大きな困難に並外れた反応を示す普通の人々なのだ。

と評していたが、

英雄とは、大きな困難に並外れた反応を示す普通の人々なのだ。

という格言こそが、
『15時17分、パリ行き』の本質を言い当てており、
イーストウッドがこの映画に込めた想いであったと思われる。

では、そもそも、イーストウッドは、
なぜこの『15時17分、パリ行き』を映画化しようと思ったのか?
それは、2016年に、
米スパイクTV主催のイベントで、
自身が3人に“英雄賞”を贈るプレゼンターを務めたことに由る。


その後、スペンサーから送ってもらった本(この事件のノンフィクション)を読み、
映画化を決意したそうだ。

スペンサー・ストーンに送ってもらった本を読んだ時、この物語語は興味深いことだと思った。彼らの物語は。僕がかなり前からやっていること(実話の映画化)で、とても興味深く思えたんだ。それから、映画にすることに取りかかった。
3人にはテクニカル・アドバイザーを依頼した。彼らはサクラメントから何度かスタジオにやってきた。同時にこのプロジェクトを進めていて、オーディションで俳優が演じ、事件を演じることが出来た何人かとても良い役者たちを見ていた。でもある時、テクニカルな面の話し合いの中で、僕は彼ら3人に「自分たち自身を演じることについて、あなたたちはどう思う?」と言った。僕は何かを見逃していた。その可能性をね。僕はもっと小さい状況で、役者じゃない人を使ったことはある。多分、見た目がとてもよかったんだ。今回の場合、僕は彼らの顔を見た。彼らの顔はみんなとてもユニークで、とても好感がもてるから、この挑戦はとても面白いものになると思った。もし自分たちがこれをうまくやり遂げられたらね。そしてまた、もし僕らがそれを正しくやらなかったら、ひどいものにもなりえると感じた(笑)。そこから僕らはスタートした。僕はそれについて少しの間考え、そしてやっと「僕らはそれをやる」と決め、トライし、今ここにいるんだ。

当事者である3人が自分自身を演ずることになったいきさつをこう語っているが、
イーストウッドが企てたこの試みは、概ね成功している。
3人の演技はお世辞にも上手いとは言えないが、
本人たちが演じているというリアリティーには比類がなく、
これほど贅沢な再現VTRもないであろう。


正直に告白すると、
私は、あまり、クリント・イーストウッド監督作品は好きではない。(コラコラ)
相性が良くないと言うべきか。
このブログでもイーストウッド監督作品のレビューはほとんど書いていない。
彼が映画にする題材の「あざとさ」や、
作品全体に漂う「大味さ」についていけないからだ。
早撮りのイーストウッド監督作品には「細部」へのこだわりがない。
私はどちらかというと、
「神は細部に宿る」と思っており、
細部を大事にして丁寧に撮った作品を好む。
だから、
イーストウッド監督作品が優れていることは認めながらも、
レビューを書かずにいた。

では、なぜ、今回書いているかというと、
87歳を迎えても尚、
新たな挑戦を続けるイーストウッド監督に敬意を表してのことである。


「好き」「嫌い」は別にして、
高齢になっても、
テロリストに立ち向かった3人の当事者を主演に抜擢するという、
(究極のリアリティーの追求ともいうべき)前代未聞のトライアルに挑んだその姿勢は、
称賛に値するものである。




皆さんも、映画館で、ぜひぜひ。

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