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映画『白ゆき姫殺人事件』 ……オーラを消した井上真央の演技がスゴイ!……

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毎年、春から初夏にかけては、
春休みやゴールデンウィークなどがあるため、
アニメや戦隊モノなどのお子様向けの映画多く、
正直、見たいと思う映画は少ない……
……なのであるが、
時折、ビックリするような傑作に出逢えるのも、またこの時期なのだ。
ここ数年では、
『八日目の蝉』(2011年4月29日公開)
『舟を編む』(2013年4月13日公開)
との出逢いが記憶に新しい。
どちらも数々の映画賞を受賞した作品なので、
憶えておられる方も多いと思う。
だから、お子様向けの映画が氾濫するこの時期だからといって、
油断してはならない。(笑)
常に目を光らせていなければならないのだ。

昨日、仕事の帰りに、レイトショーで、
この日(2014年3月29日)が公開初日の映画『白ゆき姫殺人事件』を見た。
井上真央、綾野剛、蓮佛美沙子、貫地谷しほり、染谷将太、谷村美月など、
私の好きな俳優が多数出演していたし、




原作が湊かなえだったからだ。
湊かなえ原作の映画といえば、かの傑作『告白』(2010年)がある。
(他には『北のカナリアたち』もあるが、こちらはイマイチの出来だった)
『告白』級の傑作を期待して、映画館に足を運んだのだった。


日の出化粧品に勤める美人OL・三木典子(菜々緒)が、
国定公園・しぐれ谷で、焼死体としてみつかる。
全身をめった刺しにされた上に火をつけられるという残忍な手口の殺人事件は、
やがて、一人の女に疑惑の目が向けられ始められる。
それは、典子と同期入社の城野美姫(井上真央)という地味で目立たないOLだった。


テレビ局でワイドショーを制作するディレクター・赤星雄治は、
典子や美姫と同じ会社に勤める狩野里沙子(蓮佛美沙子)から連絡をもらい、


「城野美姫が犯人だと思う。彼女は事件後失踪している」
との証言を得て、彼女についての独自調査を開始する。


美姫の同僚・同級生・家族・故郷の人々などにインタビューし、
それを、Twitterでつぶやき、拡散させながら、
テレビの報道番組でも城野美姫を重要な容疑者として放送する。
テレビ報道は過熱し、ネットは炎上する。
そして、噂が噂を呼び、口コミの恐怖は広がっていく……


今回は、ミステリー色が強そうな作品だったので、
原作は読まずに見に行ったのだが、
なかなか面白い映画であった。
関係者の証言、
匿名の人々によるTwitterの投稿、
ワイドショーの報道、
そこに、妄想、ねつ造、嫉妬、悪意などが加わり、
現代社会ならではの問題が浮き彫りにされ、
これまであまり見たことのない重層的なサスペンスが繰り広げられる。
だが、残虐シーンは少なく、
『告白』ほどのエグさもなかったので、
比較的ゆったりとした気持ちで最後まで楽しむことができた。
それはある意味、長所でもあり、短所でもあったのだが……


監督は、
『アヒルと鴨のコインロッカー』(2006年)
『ゴールデンスランバー』(2010年)
『奇跡のリンゴ』(2013年)など、
原作ものを得意とし、
込み入った内容のものをより明快に描く名手・中村義洋。
Twitter の文字が現れては消えていく映像や、
繰り返し登場する証言者たちのボカシの入った映像など、
監督独自の斬新な表現方法で、
グイグイと見る者を引っ張っていく。
中村義洋監督ファンにはタマラナイ作品になっている。


事件の鍵を握る重要人物として疑いのまなざしを向けられる主人公、
城野美姫を演じた井上真央。


2011年、連続テレビ小説『おひさま』でヒロインを演じ、
年末には「第62回NHK紅白歌合戦」で紅組司会を務め、
同年公開の映画『八日目の蝉』で第35回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。
2015年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』の主演を務めることも決まっている。
もはや国民的女優と言っても過言ではないほどの活躍の井上真央だが、
本作では、この輝かしく華やかな女優としてのオーラを見事に消し去って、
地味で目立たない城野美姫というOLを見事に演じていた。


バッグを抱えて駅の階段を駆け上がるシーンがあるが、
その後ろ姿の無様さに、女優としての覚悟が見て取れた。
井上真央は、どんどんスゴイ女優になっていく。


ワイドショーのディレクター・赤星雄治を演じた綾野剛。
映画『夏の終り』(2013年)が記憶に新しいが、
ここ数年、映画・テレビの話題作への出演が相次いでいて、
あらゆる媒体で、彼を見ない日はないほどの活躍。
取材で入手した情報をTwitterでつぶやき、
ネット空間を炎上させる軽薄で愚かな男を見事に演じ切っている。
普段、クールな役が多い綾野剛だからこそ、
井上真央と同様、意外性で魅せる。


美姫の後輩で、旧知の赤星に大事な情報をリークする狩野里沙子役の蓮佛美沙子。
映画『君に届け』(2010)や『この空の花-長岡花火物語』(2012年)などでの演技が印象に残っているが、
つい先日終了したテレビドラマ『夜のせんせい』(2014年1月17日〜3月21日)での演技も良かった。
本作では、三木典子とパートナーを組まされて仕事をするうち、
社内の様々なしがらみにからめとられていくOLを好演している。


謎の死を遂げる美人OL・三木典子役の菜々緒。
井上真央や蓮佛美沙子が女優オーラを消し去って地味な役を演じているのに対し、
菜々緒だけが輝くばかりの美を纏い、
オーラ出しまくりで、
映画初出演とは思えないほど落ち着いた好い演技をしていた。
これからも映画に多く出演してもらいたいと思った。


美姫の故郷に住む小学校時代の親友・谷村夕子役の貫地谷しほり。
このブログで、私は、
彼女の初主演作『くちづけ』(2013年)での演技を絶賛したが、
この映画『くちづけ』で、貫地谷しほりは、
第56回ブルーリボン賞・主演女優賞受賞を受賞。
そんな彼女が、本作では地味な脇役を演じていたので、
「もったいないな〜」と思って見ていたら、
ラストシーンまで見て、なぜこの役が貫地谷しほりでなければならなかったのが解った気がした。


その他、
美姫が勤める会社の上司で、殺された典子の元恋人・篠山聡史役の金子ノブアキ、


美姫の大学時代の友人・前谷みのり役の谷村美月、


日の出化粧品の社員で、美姫のパートナーだった満島栄美役の小野恵令奈、


美姫の両親を演じた秋野暢子とダンカン、


報道番組の司会者を演じた生瀬勝久、


美姫の小学校時代の友人の母親を演じた山下容莉枝などが、
素晴らしい演技で作品を支えていた。


本作には、クラシック系男性ユニット“芹沢ブラザーズ”が出演していて、
劇中曲を演奏して、ストーリーにも絡んでいるのだが、
この“芹沢ブラザーズ”を演じているのは、
クラシック系男性ユニットのTSUKEMEN。
TSUKEMENは、2010年3月にメジャーデビューしたヴァイオリン2本とピアノからなるアコースティック・インストゥルメンタル・ユニット。
原作者の湊かなえが彼らのファンだということから出演が実現したとか。
この“芹沢ブラザーズ”が演奏する曲がなかなかイイ。


難しい題材ながら、
脚本の良さと、演出の良さが際立ち、
個性的な出演者たちが実に好い演技をしている佳作『白ゆき姫殺人事件』。
映画館で、ぜひぜひ……


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