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Channel: 一日の王
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映画『ブレス あの波の向こうへ』 ……オーストラリア版『おもいでの夏』……

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10代で見た映画で、最も好きな映画は、『おもいでの夏』(1971年公開)である。


思春期の少年のひと夏の経験を描いたアメリカ映画で、
少年の初体験の相手となるドロシーを演じたジェニファー・オニールは、
今でも私の憧れの女性である。


『おもいでの夏』を見てから半世紀近くが経ち、
映画を見た当時は少年だった私も、すっかりジジイとなってしまった。(笑)
それでも毎年夏が来ると、『おもいでの夏』を思い出す。


似たような内容の新作映画が公開されると、見ないではいられない。
今夏公開された『ブレス あの波の向こうへ』も、少し内容を調べただけで、
『おもいでの夏』と同じ匂いがした。
7月27日に公開された作品であるが、
佐賀では、シアターシエマで、約1ヶ月遅れて、
8月23日から(9月5日まで)上映された。
で、先日、
10代の頃の夏を思い出すべく『ブレス あの波の向こうへ』を鑑賞したのだった。



70年代、
オーストラリア西南部の小さな街。
内向的な性格のパイクレット(サムソン・コールター)は、


怖いもの知らずな友人ルーニー(ベン・スペンス)の影響を受けながら、


彼の後を追うように刺激的で冒険的な毎日を過ごしていた。


ある日彼らは、
サンドー(サイモン・ベイカー)という不思議な魅力を持つ男と出会い、


サーフィンの手ほどきを受けたのがきっかけで、
サンドーと、彼の妻イーヴァ(エリザベス・デビッキ)の住む家を訪ねるようになる。
サンドーはかつて名を馳せた伝説のサーファーで、
連日のように少年たちを海にいざなう。
そのスリルや魅力にのめり込んでいき、
少年たちはいつしかサンドーを人生の師と仰ぐようになる。


彼らは次々に大きな波に挑戦していくが、
友人だったパイクレットとルーニーは、
成長するとともに強いライバル心を燃やすようになっていく。


そんな折、
パイクレットはある出来事によって、
サンドーと対峙し、
自分の生き方を見つめるようになる……



まさに、オーストラリア版『おもいでの夏』であった。
『おもいでの夏』の主人公ハーミー(ゲーリー・グライムス)は、


『ブレス あの波の向こうへ』の内向的な性格の主人公パイクレット(サムソン・コールター)であり、


ハーミーの友人・オシー(ジェリー・ハウザー)は、


パイクレットの友人・ルーニー(ベン・スペンス)であり、


ハーミーの初体験の相手・ドロシー(ジェニファー・オニール)は、


パイクレットの初体験の相手・イーヴァ(エリザベス・デビッキ)とイメージが重なる。



主人公の少年は、内向的。


主人公の少年の友人の方は、能動的で積極的。


主人公の少年が憧れる初体験の相手は、心に傷を負ったスレンダー美人の人妻。


ここまで共通点があると、映画『おもいでの夏』の影響を考えてしまうが、
『ブレス あの波の向こうへ』の原作は、
オーストラリアで最も栄誉あるマイルズ・フランクリン文学賞を受賞したティム・ウィントンの小説『ブレス』で、自伝的小説とのことなので、
『おもいでの夏』の影響は(私が考えるほどには)ないのかもしれない。
むしろ、“美しい夏の思い出”には、ある種の共通点があるということなのだろう。











監督は、サイモン・ベイカー。


1969年、オーストラリア生まれ。
TV俳優として活躍後、
米アカデミー賞受賞作『L.A.コンフィデンシャル』(1997年)に出演し注目を集める。
代表作は、主演を務めたTVシリーズ「メンタリスト」(2008~2015年)シリーズで国際的に大ヒットし人気を博した。
主な出演作には、『楽園をください』(1999年)、TVドラマ「堕ちた弁護士~ニック・フォーリン~」(2001~2004年)、『ランド・オブ・ザ・デッド』(2005年)、『プラダを着た悪魔』(2006年)、『キラー・インサイド・ミー』(2010年)、『マージン・コール』(2011年)などがある。
『ブレス あの波の向こうへ』(2018年)で監督デビューを果たした。

初監督の本作で、
監督のみならず、製作、共同脚本、そしてサンドーという重要な役も演じ、
同年のオーストラリア・アカデミー賞で9部門ノミネートされ、
サイモン・ベイカー自身が最優秀助演男優賞を、
オーストラリア映画監督協会では最優秀長編監督賞を受賞している。
サーフィンは、ニューサウスウェールズ州の大会で優勝するほどの腕前とのことで、
映画でも見事な波乗りを見せてくれる。


映画の中で、
サイモン・ベイカーが演じるサンドーが、少年二人に語る言葉が、
「体と心を信じろ」、
「やろうと決めた瞬間に半分達成している」
など、名言だらけで、
サンドーとサーフィン、
そして、サンドーの妻・イーヴァに導かれるように、
大人へと成長していく二人の姿が、
年老いた私には眩しく感じられた。


とにかく、海の映像が、


そして、波の映像が美しい。
いつまでも見ていたいような気分にさせられる。


同じ自然でも、山と海はまったく違うものだと思った。
山は、いつまでもそこにあり続けるが、
海の波は、出来ては消える。
サーファーには、
日本百名山完登を(ノルマ達成に追われるビジネスマンのように)目指す人種はおらず、
その日その日に出来る、日ごと違う波と対峙し、
一瞬、一瞬に命がけで挑む。
それが実にカッコイイ。

私もできればサーファーのように山と対峙できればと思う。
山はいつもそこにあるが、
山の雰囲気は毎日違う。
春、夏、秋、冬、季節によっても違うし、
朝、昼、夜と、時間帯によってもまったく違う。
新緑や紅葉に彩られたり、
雪に覆われたりしたならば、
それまでとはまったく異なった山容となる。
そうやって、同じ山で、毎日異なった山歩きをたのしめればと思う。

10代の頃の“美しき夏”を思い出させてくれる映画『ブレス あの波の向こうへ』。
まだ上映している映画館もあるようなので、(コチラを参照)
機会がありましたら、ぜひぜひ。

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